H3ロケット5号機の打上経過記者会見

 「みちびき6号機」を搭載したH3ロケット5号機は2025年2月2日17時30分00秒に種子島宇宙センターから打ち上げられました。
 同日に打上経過記者会見が種子島宇宙センター竹崎展望台の記者会見室で開催されています。

・登壇者(第1部)
 文部科学副大臣 野中 厚
 内閣府 宇宙開発戦略推進事務局 審議官 渡邉 淳
 三菱重工業株式会社 防衛・宇宙セグメント 宇宙事業部長 五十嵐 巖
 JAXA 理事長 山川 宏

・打上げ結果について(山川)
 本日(2025年2月2日)17時30分00秒に「みちびき6号機」を搭載したH3ロケット5号機を打上げました。ロケットは計画どおり飛行し、打上げから約29分3秒後に「みちびき6号機」を分離したことを確認いたしました。「みちびき6号機」及び準天頂衛星システムの整備運用を行う内閣府様、関係者の皆様には打上げまでの間多大なるご理解とご協力を賜り、深く御礼申し上げます。また本日、こうして打上げ結果をご報告出来ました事に安堵するとともに、大変嬉しく思います。H3ロケット打上げに際しましては、毎号機種子島や地元地域の皆様をはじめ、国内外の多くの方々より多大なるご協力と激励の言葉をいただいております。皆様から寄せられたご支援を励みにJAXAは三菱重工業株式会社様をはじめ関係企業の皆様と共にH3ロケットの開発運用を着実に進め、日本の宇宙輸送システムとして打上げ実績を積み重ねる事で自立性の維持、日本の強みを活かした技術力の強化、産業振興への貢献、そして国際競争力の確保を果たすべく、引き続き真摯に取り組んでまいります。

・登壇者挨拶(渡邊)
 本日、本来であれば宇宙政策担当大臣である城内大臣がこの場を視察する予定でございましたけども、明日の朝からの国会の対応がありましたために、残念ながらどうしても参加出来ないという事で、現場で成功に向けてご尽力いただいた皆様方、関係者の方々に直接御礼を申し上げることが出来ないことについて大変失礼申し上げるというような事を大臣から伺っているところでございます。その代わりとして私がこの場に居るところでございます。今、理事長からもお話がありましたけれども、H3ロケット5号機によって準天頂衛星システムの「みちびき6号機」が打ち上げられまして、現在所定の軌道に向けて順調に飛行中と伺っております。まだ衛星の方はいろいろなシステムの確認がありますので予断は許しませんが、今回の打上げ成功によりまして他国の衛星に頼らずに「みちびき」のみで測位が可能となる7機体制の実現に向けた確実な一歩に繋がるものという風に認識をしています。それから城内大臣から談話が出されておりますのでその内容について読み上げさせていただきます。
 『本日、H3ロケット5号機により、「みちびき6号機」が打ち上げられました。H3ロケットは、我が国の宇宙活動の自立性確保と国際競争力強化のために極めて重要な基幹ロケットです。今回、打上げが成功し、我が国のロケット技術の信頼性の高さを示すことができました。
 今回の「みちびき6号機」は、我が国の準天頂衛星システムの一部として、現在運用中の4機と合わせ、国内外に正しい位置・時刻の情報を提供していきます。今後、所定の軌道に移動し、数か月程度かけて試験等を行い、速やかに運用を開始する予定です。また、来年度には、別の2機(みちびき5号機、7号機)を打ち上げる予定であり、これによって、他国の測位衛星に頼らず、みちびきのみで測位が可能となる「7機体制」が実現します。さらに、将来は7機のうち、どの1機が故障しても測位機能を維持できる「11 機体制」の実現も目指してまいります。
 内閣府特命担当大臣(宇宙政策)として、今後とも、我が国の宇宙開発利用を精力的に進めてまいります。 令和7年2月2日 内閣府特命担当大臣(宇宙政策) 城内実』
 以上でございます。

・登壇者挨拶(野中)
 文部科学省でございます。あべ大臣の談話にもあります通り、本日、H3ロケット5号機の打上げに成功し、搭載していた準天頂衛星「みちびき6号」が所定の軌道に投入されたことを確認いたしました。昨年2月の試験機2号機以降、これで4機連続のH3ロケットの打上げ成功でありまして、着実に打上げ実績を積み重ねていることを私共も喜ばしく思っております。また多くの皆様に応援をいただいている事にこの場をお借りして感謝を申し上げたいという風に思っております。
 文部科学省といたしましても、H3ロケットの継続的な運用に向け、技術の蓄積・成熟を図り、実績を着実に積み重ねることで、我が国の宇宙活動の自立性を確保するとともに、我が国の技術力向上や産業振興、国際競争力強化等につながるよう、今後とも引き続き宇宙開発利用の推進にしっかりと努めてまいりたいという風に思っております。尚、私が本日着用しているネクタイでありますが、これは先月のデザインコンペで高等専門学校の学生が「星からの便り」というテーマでデザインをしていただき、文部科学大臣賞を受賞されたものであります。このように宇宙に関心を持ってもらう若者が増えている事を大変嬉しく思っております。私共文部科学省といたしましては次世代を担う人材育成、これに努めてまいりたいという風に思っております。

・登壇者挨拶(五十嵐)
 今日、準天頂衛星7機体制というものに向かって三つの衛星をこれから打ち上げていくと、その最初の一つを今年初めての打上げでH3ロケットを使って無事に打上げに成功して、所定の軌道に投入するという事が出来ました。非常に安堵しておりますし、色々な方々のご協力とご理解に感謝をいたしております。このH3ロケットで準天頂衛星を打ち上げるのは初めてという事でございまして、このH3ロケットは開発で苦労をかけて、それから準天頂に携わる皆様にはいろいろとご心配をかけたところもあります。ですが今日この日まできちんと一緒に取り組んでいただきまして、信頼というものを継続していただけました。それで今日この日を迎えるという事ができました。天気にも恵まれて大変良い打上げになったと思います。これでH3ロケットですけども、4機成功という事になりました。これは関係する全ての方々のご尽力、パートナー企業の皆さん、地元で応援していただける方々、そういった所のご声援、それから色々な努力の賜物でございまして、本日この場を借りまして本当に御礼を申し上げたいと思います。引き続き三菱重工業といたしましては、H3ロケット、これからきちんと打ち上げていく必要がございます。一つ一つの打上げに最大限の努力を払いまして、打ち上げ成功というものを継続していきたいと思っております。

・質疑応答
NHK・沢山の方が島内外から公園などに見学に来ていたと思うが、その期待を背負っての今日の打上げ成功という事で、今回の打上げ成功が今後H3の開発についてどういう位置付けになったのか。年末に宇宙基本計画が新しく発表されたと思うが、それについてのJAXAとしての意気込み。
山川・種子島の中で多くの方が打上げをご覧になっているのは、今回だけでなく毎回ひしひしと感じておりまして、非常に強いご声援をいただいているという事で非常に嬉しく思います。それだけではなくて全国あるいは世界中でオンラインでも視聴されていると認識しておりまして、我々携わる者としては非常に励みとなっているものでございます。それから今回の打上げですが、もちろん連続成功の意義は非常に大事であるものの、更にこれから引き続き着実に打上げを積み重ねていく、それによって信頼をどんどん積み重ねていく事、そして国際競争力を確保した上で、日本の産業界あるいは技術力を強化するのはもちろんですが、日本として宇宙にアクセスする自立性を維持あるいは確保していく事が最も大事な点ではないかという風に思っております。それから宇宙基本計画の工程表の事だと思いますが、ますます宇宙の、我々の生活における身近な有用性というか貢献ですとか、経済に対する貢献ですとか、国際協力における重要性ですとか、様々な観点で宇宙の重要性というのはどんどん増しているという中で工程表が改訂されておりまして、我々JAXAに対する期待もどんどん高まっていることを強く認識しておりますので、一つ一つ着実に進めていきたいという風に考えております。

NHK・みちびき6号機が所定の軌道に投入されたことが確認されたという事で、今後7機体制、更には11機体制という今後の運用の目標で目指しているものがあると思いますが、政府として国内国外にどういった影響があると考えているか。
渡邊・正に今回6号機を打ち上げて、来年度は5号機、7号機を予定していますが、これによって「みちびき」だけのシステムで測位が出来るようになる。他国のGPSなどそういう物に頼らずに測位が出来るようになるという事は、我が国の安全保障の観点から重要だと思っておりまして、そのような体制が進んだという事は非常に意義のある事だと思っています。ただ7機体制ですと何らかの故障が起こった時には自立性が保てないという事になりますので、更に冗長性の確保を図っていくためにはやはり11機体制を将来的に目指していくということが非常に重要だと思いますので、それに向けて我々政府としても頑張っていきたいと考えているところでございます。

産経新聞・H3ロケットの開発を進めていく上で、今回の5号機というのはどういう位置付けのものであって、今回成功した事はどういう意義があり意味を持つのか。
山川・今回のH3ロケット5号機は基本的に過去に打上げられたものと同じ形態でありまして、第1段のメインエンジン2基、それから横についている固体ブースターが2基という事で、基本的には同じ形態でありまして、一つそれの成功事例を重ねたという事で、信頼性をさらに増していくという事が一つあります。更に得られたデータを、各号機もそうですが、詳細に解析をした上で得られた知見をどんどん積み重ねていく、そういった事でありまして、何か大きく変わったという事ではないですが、これまでのデータを更に蓄積していくことが出来ている。そして信頼性を今一歩高めることができた。そういう位置付けのH3ロケットの5号機だという風に考えております。

日経新聞・今回の打上げ成功で22形態の打上げ実績がある程度高まった。今後運用を三菱重工業さんに移管されるという事で、その辺りの検討状況であるとか、今回の打上げが移管に与える影響はどうか。
山川・影響というか、移管するのに三菱重工業さんに一歩近づいたとは言えると思います。まだお互いの、何をもって移管するかの条件というか環境をどのように判断していくかというのを今まだ検討中ですが、一つだけ言える事はどんどん成功を積み重ねることによって移管の時期に近づいていくという事だけは言えると思います。詳細はまだ結論で出ていませんので、これからという事になると思います。
五十嵐・最終的にH3ロケットは民間事業者で運用していくという事で、多大なる責任を持っているという風に思っておりますし、一つ一つの打上げ成功を積み重ねることがお客様にとっての信頼のエビデンスになってくるという事で大変重要なステップでございます。それからまだ最初の成功から1年経っていないという状況でございますし、5機目というのは色々と新しいことが判ったりします。理事長がおっしゃいましたように色々なデータを積み重ねるというのは、色々な反映事項があるという事がありまして、そういう物を開発であるとか、それから量産のプロセスの方に反映してまいります。一番大切に思うのは、お客様にとってベストなサービスを提供することができるのかというところです。そういった観点を踏まえまして、JAXA様と一緒にどういったタイミングが適切なのかというのを相談していきたいという風に思っています。

・登壇者(第2部)
 内閣府 宇宙開発戦略推進事務局 準天頂衛星システム戦略室 室長・参事官 三上 建治
 内閣府 宇宙開発戦略推進事務局 準天頂衛星システム戦略室 企画官 岸本 統久
 JAXA 第一宇宙技術部門高精度測位システム プロジェクトチーム プロジェクトマネージャ 松本 暁洋
 三菱電機株式会社 準天頂衛星プロジェクト統括 柳生 伸二
 JAXA 宇宙輸送技術部門 H3プロジェクトチーム プロジェクトマネージャ 有田 誠
 三菱重工業株式会社 防衛・宇宙セグメント 宇宙事業部 H3プロジェクトマネージャ 志村 康治

・登壇者挨拶(三上)
 今日は大変素晴らしい打上げ、望む事ができました。第1部での報告でありましたように、現時点みちびき6号は正常にフライトしていると聞いています。今回の打上げに携われた方々、まずはロケットチームの方でございますが、JAXA様、MHI様、そしてパートナー企業の皆様、そしてみちびき6号機の方につきましては、三菱電機様、NEC様、それからパートナー企業の方、多くの企業の方々のご協力をいただいて今日の成功成功に至りました。また、打上げに向けての機会、気運を地元の方、それから全国の多くの方々からいただいておりました。まことに今回の成功を多くの方々の力を用いて成功したのだと思っています。改めて御礼申し上げるところでございます。

・打上げの経過について(有田)
 本日の打ち上げは試験機2号機から1年足らずの間に4機の連続成功ということで、それを収める事が出来ました。ここまで辛抱強くお待ちいただいた内閣府の皆様、メルコの皆様、御礼を申し上げます。それからこの打上げを支えてくださいました、いつもの事でございますけども、地元をはじめ関係企業の皆様、それから応援してくださる沢山の方々、皆様に御礼申し上げたいと思います。この4回の連続成功という事でございますけども、この4回の打上げではいずれもひとたび打上げのオペレーションに入ることが出来れば、遅れる事なくその日のうちにオンタイムで打ち上げるという事が出来ておりました。その中でも今回の5号機の打上げというのが、変な言い方ですがバタバタすることが一切無く非常にスムーズな形で打上げオペレーションが出来たという風な印象を持っております。これは打上げの作業に習熟してきたというところもございますけども、1号機や2号機の経験を踏まえて、3号機の打上げの前に実施しました極低温点検、こういった機会を活かしてH3ロケットをこれまで三菱重工さんと共に磨いてきた、その成果があったのではないかと思います。これらの事で大事なお客様の信頼を少しでも高めるという事に役立っているのではないかという風に感じております。そしてこれらの連続成功を来年度の新しい30形態の試験機、それから24形態の初打上げ、それからType2エンジン、こういった物の開発や打上げに活かして、ぜひこれらに弾みをつけてまいりたいと考えております。またサンチャゴ局でのロングコーストGTO打上げのためのデータ取得につきましては、みちびき6号機の衛星分離後に無事にサンチャゴ局でデータ取得を開始することが出来て、今正にそのデータを取得している最中でございます。良好にデータを取得出来ております。以上、ご報告いたします。

・質疑応答
産経新聞・本日5号機の成功を受けての率直な心境を教えて下さい。
有田・前回の4号機に引き続きまして、今回も非常に重要なミッション、特に今回は日本国内のみならずアジア・オセアニア地域でも使われる非常に重要なインフラの衛星という事で、非常に責任を感じておりました。その打上げをしっかり成功して衛星を宇宙の軌道に届ける事が出来てまずはほっとしているというところでございます。

産経新聞・前回4号機が成功した時は、いよいよH3の22形態が順調な運用段階に入ったとおっしゃった。今日のオペレーションも非常にスムーズだと先程おっしゃいまして、という事はいよいよ順調な運用段階から成熟段階というか完成に近いような段階に近づいているのではないかと思うが、その辺りをどう捉えているか。
有田・22形態につきましては大分完成度が高まってきたという印象は持っております。ただまだH3全体としては開発道半ばという所もございますので、引き続き手も気も緩めること無く、しっかり磨いていきたいという風に考えております。

NVS・みちびき6号機の今のクリティカルフェーズを判る範囲で教えて下さい。
岸本・みちびき6号機につきましては、その後無事に初期捕捉が完了しておりまして、順調に太陽電池パドルの展開、それから捕捉まで行ったという事で、衛星としては一段落できる状態になったということで、衛星は健全正常であるという事になっています。

NVS・この後静止トランスファ軌道から徐々に静止化に向けていくが、大体どれくらいの日数をかけていくのか。
岸本・大きな推力を使うようなAFについては大体1週間くらいかけて実施していきまして、そのあと化学推進などを使いながら準天頂軌道に到達するのはおおよそ2週間後くらいだろうと考えています。

NHK・年末に宇宙基本計画の工程表が改定され、来年度にはH3の30形態の試験機やHTV-Xの打上げが計画されているが、それの打上げの準備状況はどうか。
有田・私共としては工程表に則り、30形態試験機それからHTV-X1、そしてその後準天頂衛星5号機と7号機、こちらの打上げが予定されていますので、これをしっかり着実に打ち上げてまいりたいと考えています。そのための準備も着々と進めております。

NHK・今回の22形態から30形態、もしくはHTV-Xを打ち上げる際は24形態になるという事ですが、それも含めて来年度にやるという事で良いか。
有田・そのつもりで着々と準備を進めております。

フリーランス林・衛星だが、今後7機体制、11機体制で自立性の確保という重要性は認識したが、国民にとって今後利用という観点から沢山の使用例を資料に書いてあるが、今後こういった利用が期待されるとか非常に重要になってくるという分野があったら教えていただきたい。あと15年間の寿命というのは技術的に非常に難しいのではないかと思うが、例えば最近は太陽活動が活発化していて、測位衛星の利用にとって難しい状況があると思うが、そういった時にどのような対応を今現在とられていて、今後の対策も含めてお聞かせ願います。
三上・7機11機の体制整備でございますけども、まずそもそも測位サービスにつきましては、我々は国民にとって最も身近な宇宙利用サービスとして気付かないうちに使っているサービスのひとつだと思っています。もうひとつは気象衛星ひまわりによる衛星画像を宇宙から撮っていますが、他方衛星測位というのは皆さんがスマホでマップを見る度に宇宙からの信号を得ているという事で、こうした皆様がなかなか宇宙を使っていると認識できない分野において今回の「みちびき6号機」を打ち上げる事によって皆さんに少しでも知っていただければなということで、今回の成功は我々としても嬉しく思っているところでございます。ただ6号機が上がれば終わりという事ではなくて、続く5号機7号機で合わせてまず7機セットになるという事が、日本から少なくとも毎回4機が見えるという状態を作るには7機が必要でございますので、それが大事だと思っています。他方7機が出来た時に1機が壊れてしまい重要な機能が失われないようにするためにはバックアップの機能の衛星を入れていく必要がある、という事で考えると将来的には11機の方がいいのではないかと考えております。他方そこまで整備をして一体何が国民にとって大事かといいますと、やはり今後、今政府ではスマートシティあるいはデジタル田園都市構想等、デジタルを中心とした国の成り立ちというか運営が求められているところでございます。衛星測位というデジタルで、どこに誰が居るか、何があるかというデジタルの情報を電子地図の上にきちんと置くということは、今後の経済活動の上では非常に必要な事になります。例えば車の自動運転をアシストするのは測位サービスのアシスト機能であったり、あるいはドローンですね、将来宅配をドローンがする時代が来るかもしれないという時に正しい場所にきっちり物を運ぶというサービスがあります。あるいは今、小人化、人が居なくなっているというのは多くの分野で言われていますが、例えば農業の分野、トラクターを無人化して生産性を上げる、あるいは物流において無人運転のひとつでございますけども、トラックを無人運転で運ぶとかございますので、全てにおいて実は今我々が使ってるGPSというサービスでは誤差が5メートルから10メートルありまして、便利ではありますが実はそういう用途では足りないという事がございますので、今回JAXA様が研究開発するASNAV(高精度測位システム)という機能でまずGPSの機能を上げる、それから我々が異なる補強信号という形でセンチメートル級の精度も上げていくというようなサービスを提供しまして、これからの日本をしっかりデジタルの面で支えていくという事が、我々の準天頂衛星のインフラのインフラだと思っているところでございます。
岸本・15年というのは、まさしく本日打ち上がりまして、これから15年かと思うと、まさしくその重さを噛みしめているところでございます。15年寿命というのは今回の号機から始まったのではなく、2017年に打ち上げられました2、3、4号機の時から設計寿命を15年という事で、三菱電機さんのDS2000のシリーズもしっかりとしたものがありますし、準天頂軌道特有のところにつきましてはきちんと試験評価を積み重ねてきたという事になっています。ミッション系のところも特に可動物とかもありませんし、原子時計とか固有のものは3台搭載とか工夫をして15年寿命を乗り越えるという設計にしております。他方、宇宙はそれだけ難しいチャレンジングな領域といったところで、我々はしっかりそこは緩めずに試験検証を積み上げて今回宇宙に持っていったと思っておりますので、必ずや15年耐えてくれると考えております。
柳生・我々としては6号機が無事に打ち上がったという事で、続きます5号機、7号機、来年度に打上げ予定でございますけども、どちらも今システム試験のフェーズに入っておりまして、しっかりと今抱えている課題といいますか計画を遂行して、あと2機を無事に打ち上げて、あと2機を無事に打ち上げて7機体制の整備に貢献したいと思っています。

フリーランス林・ロケットについて、(第1部にて)5号機というのは色々な問題が洗い出されてきて、それを今後の量産化に向けてフィードバックしていく位置づけとおっしゃられていたが、5号機で実際に何か課題であったり量産化に向けてこうしたらいいなということがあったりしたら教えていただきたい。あと先程から出ている30形態とか24形態、そしてType2エンジン、これらに対して今課題と感じられて、これを乗り越えれば実現できるような事が具体的にあれば教えて下さい。
志村・(第1部で)五十嵐から申し上げました5号機で具体的にフィードバックする話は、例で申し上げさせていただくと、5号機は機体の形態とするとこれまでやってきた22形態で同じですし、4号機と軌道も同じ静止軌道です。という事で同じ物を打ち上げているが、ロケットの物作りですと毎回使い捨てですから、毎回新しいハードウェアを作り上げます。そうすると同じ仕様でも、物には必ずバラツキというものがありまして、我々はそれを個体差と言うが、そういったバラツキをいかにシステムとしてロケットに上手に組み上げていくかといったような所が課題になりまして、これから長くロケットを使っていく上では、そういった所の物作りの手順といったところをブラッシュアップしていくことが非常に重要になります。そういった事例が中にいくつかございまして、そういった意味五十嵐が申し上げた通り、こういった中からフィードバックしてより良い物作り、洗練したロケットに仕上げていくといった事が今号機の中でもございました。若干一般的な例で説明して申し訳ないですが、そういった内容がございます。
有田・新たなH3のチャレンジという意味での3つの例を言っていただきましたが、まず30形態につきましては、エンジンがしっかり立ち上がるまでは発射台にしっかり固定しておいて、エンジンがしっかり立ち上がったらそれを検知して一気に離すというホールドダウンシステムという物を、そういう使い方をするのが30形態の要といいますか妙というか、そういう事になります。これが少しでもばらついた動きをすると、不測の事態が起こりかねないという所もありますので、この辺りがしっかり作動するかどうかを確認するための試験を5号機が無事に終わりましたので近々始めたいと思っています。それから24形態につきましては、何と言ってもH3として今まで上げた中でいちばん重い衛星という事になります。そのために固体ロケットブースタを4本と、H3としては最強バージョンとなりますので、例えば発射の時に発生する音ですとか、それから熱、固体ロケットから強烈な熱が発生する訳ですけども、そういったところを機体が受け止められるか。こういった所をしっかり見ていかないといけないという事、いろいろ24形態ならではという所がありますけども、基本的にコアの部分は実績がだいぶ出て来た22形態ですので、オペレーション自体は安定した物の延長線上にあるのではないかと思っていますが、やはり形態の違いという所で落とし穴が無いかというのを最後の最後までしっかり見極めて打上げに臨みたいというところです。それからLE-9のType2エンジンにつきましてはこれは今正に開発をやっているところで、性能を上げるという事と、心臓部であるターボポンプのタービンの翼に発生する疲労をいかに両立させるかというところが技術的なチャレンジです。そのために今、それを満たしうる形態というのがどういうものがあるか、どういうものだったら課題を克服できるかというところを見出す努力を正にしているところです。という事で、Type2の投入自体はもう少し時間がかかるかもしれませんが、エンジン自体の開発は着々と行っている、そういう段階でございます。

日経ビジネス・SRB-3はイプシロンSと同じ固体ロケットだが、イプシロンSの2段目で起こったのと同じ事(地上燃焼試験での異常燃焼)が起きるのではないかというの懸念があったのではないか。もちろんロケットの設計は異なるが、今回の打上げ成功によってSRB-3への信頼やイプシロンSへの影響についてどのように考えているか。
有田・イプシロンSの件につきましては、昨年の12月25日にイプシロンSの地燃の原因調査に関する記者説明会というところでご説明させていただいておりました。その時から多少内容が進んでいるが、やはりイプシロンSの中で考えられている原因究明のためにやっている故障の木解析(FTA)をやっていまして、イプシロンSの2段目の現象の原因になった可能性があるというところを、挙げられている項目全てについて、H3のSRB-3がどうなっているかという所を一つ一つ確認をして、それがSRB-3の開発の中でどのように検証されてきたかという事を全部しらみつぶしに当たりました。その結果、SRB-3についてはしっかり検証が出来ているという事を確認して今回の打上げに臨んだというところでございます。SRB-3の設計、それから検証のやり方というのが十分信頼に足る物だというのはこれまでの飛行の実績、あるいは開発試験の実績である意味証明されてきたというところですので、その考え方をイプシロンSの方にもあらためて考えるという形で活かしていただけるのではないかなと考えますけども、いかんせん設計がだいぶ違うという所もございますので、イプシロンSなりの難しさという所がやはりあるのではないかと考える所もありますので、この辺りはイプシロンの方の原因究明と対策の検討の方の推移をまた見守っていただければと思います。

日経ビジネス・今回の打上げ成功で、直近でH3が4機、H-IIAの49号機と合わせて年間5機の大型ロケットの打上げに成功したことになる。有田プロマネから打上げ準備が成熟してきたとのコメントがあったと思うが、今後年間6機に向けて、この1年間でどの部分が成熟してきたのか、また今後向上の余地がある点について可能な範囲で教えて下さい。
志村・成熟してきた点は全ての面において見られますけども、例えば工場で組み立てて試験をしますが、そういった時のスピードがもちろん機数が上がってきていますので速くなってきているというのはございます。相変わらず物作りですので、いろんな評価をしなければいけない点がございますけども、そういった所に我々の担当クルー自体が慣れてきたこともございまして、そういったスピード感が増しているのが工場と射場共に見受けられて、そういった所はやはり打上げ機数を積み重ねる毎に力をつけてきているところかなと感じます。これから6機と増やしていくことはその延長線上ではあるのですが、更にここのスピードアップをしたり、物作り自体も数が増えますので、我が社だけではない物作りですので、パートナーの皆さんも含めて機数を増やすような工夫ですとか努力を積み重ねていくという風に感じています。

フリーランス喜多・最近はGNSSのマニアというかファンの皆様がちょっとづつ増えてきているようで、私も受信機を持って6号機の信号がいつ出るか待ちたいと思いますが、PRN198という信号が立ったら来たと思って良いのか。(※注:みちびき6号機のPRNは198ではない可能性あり)
岸本・そのように思っていただいて結構です。所定のPRN番号は所定の文書にまとめていまして、そこで6号機との紐付けを書いておりますのでまさしくそのように思っていたければと思います。今日無事に打ち上がりましたが、約半年後くらいのサービスインを目指してこれから初期機能確認を致しますし実初動(?)というところを進めて参りますので、サービスインした以上は安定して使っていただけるようにしっかり確認とチューニングを進めてまいりたいと思います。

フリーランス喜多・先の話だが11機体制に向けて、異なる軌道面へのマルチローンチに関しての工夫をいろいろやっているとお伺いしています。今の段階でお話しいだたけることがあれば。
岸本・まさしく11機体制にするにあたっては、コスト的にも効率的に進めていかなければいけないと理解しておりますので、一つの手段といたしましてはデュアルローンチを考えているのはご質問の通りでございます。質問の中で異なる軌道とありましたが、工夫してありまして、準天頂軌道の軌跡といたしましては日本の上に現れる8の字と、やや西にも東にも現れる8の字があるのですが、一見すると違うように見えるが少し位相が違うだけで、同一の軌道面に打ち上げてあたかも違うように見えると考えておりますので、軌道面が違うというものではなくて同一軌道面にすることでより多くの衛星の(?)に配分するという事が出来ますので、そういう形にすると、静止衛星やその静止衛星に近いところは既にあります3号機、それから今日打ち上がりました6号機、それから7号機、それ以外の8機というのが真ん中の準天頂軌道に4機ありまして、そことペアを成すのが西側に2機、それから東側に2機という形で出来るという事で言うと、そういった形のシステム構成が我々としては非常にリーズナブルではないかと考えておりまして、まさしくそういった所の概念設計といったところを目下進めているところでございます。

南日本新聞・6号機が30形態で7号機が24形態という理解で良いか。
有田・工程表を見るとそのように見えるが、まだ時期については差し控えさせていただきたいと思います。

南日本新聞・時期ではなく6号機が30形態とも言えないのか。
有田・時期と絡んでくる話ですのですみません。

南日本新聞・H3はいろいろな形態で打ち上げられるのが目玉のひとつだったが、30形態が登場する事に対する思いと、30形態と24形態を打ち上げる事によって、あらためてH3をどんなロケットにしていきたいか。
有田・まず30形態につきましては、日本の大型ロケットとしては初めて固体ロケットブースター無しで液体ロケットエンジンだけでリフトオフするという初めてのチャレンジという事になります。これは一番シンプルで安い形態で、当然打上げ能力は少し下がってしまうが安い形態ということ、それからシンプルなことと言う事で、普通はハイエンド版というのが大体フラッグシップモデルになるが、H3では30形態がある意味特徴的なバージョンとして皆さん認識していただいているかなと思いますので、そういう意味では一つのH3の象徴的な形態がお目見えする、皆さんにお披露目出来ると言う事で、私自身もワクワクしています。ひとつの例で言うと、飛び上がっていく時のロケットの見えている炎の殆どはSRBの炎なんです。コアのLE-9からの排気はただの水蒸気ですので殆ど見えない。ですので30形態で殆ど火が見えない中で飛んで行くロケットという風に見えるのではないか、一体どういう風に見えるのかというのは私自身大変楽しみにしています。24形態につきましては、一番強いバージョンという事で、この3つのバージョンを取りそろえることによって、お客様のいろんなニーズに、多種多様なニーズに応えていくという意味で、しかもH-IIA時代にH-IIA202と204、それからH-IIBとありましたけれども、それよりもより広い範囲の打ち上げ能力をより安い価格でご提供できるという事で、まさに国際競争力の強化を狙っているH3にとってこのフルラインナップを揃えてデビューさせるというのが、ある意味悲願ですので、これが世の中のいろんなお客様にもH3を使っていただける大きな一歩になるのではないかと考えているところです。

・会見後に有田プロマネへの囲み取材が行われました。
Q.30形態と24形態のどちらを先にやるか。
A.それはちょっと。工程表では30が先と書いてますが、関係先との調整が終わっていないのでご勘弁ください。

Q.H3になってから当初設定した打上げ予定日の天候に恵まれないが、どう思われるか。
A.確かにそれはそうかもしれません。私ももう16年も前にH-IIBの開発を担当していたが、(初号機・2009年)9月11日を打上げ日に決めて、しかもHTVですから宇宙ステーションに届かないといけないので何時何分何秒に打たなくてはいけない、ウインドウゼロという打上げ、本当にその日に初号機を打ち上げて成功したというので、NASAから大絶賛されたくらいです。それ以来私自身もあまりやっていないジャストオンタイム打上げ、これを早くH3でやりたいですね。私が一番思っていると思います。皆さんもそうでしょうけど、これ(天候)ばかりは申し訳ないです。

Q.24形態を上げる上での技術的な課題は。
A.SRB-3自体はSRB-Aとあまり大きさも変わらないので、H-IIAの204やH-IIBの延長線上にあると思いますので、正直技術的なハードルは30形態ほど高いとは思っていない、あまり心配していないというのが正直なところですが、ただそう言うときっとしっぺ返しがあるので、やはり最後の最後まで本当に見落としが無いかこれをしっかり見ていきたいと思います。射点設備、特にML(移動発射台)も24形態で音が酷くならない形で設計していますので、最初の打上げが試金石になります。楽しみでもあり、やはりやってみないと判らないところも正直あり、わくわくしている所でもあります。

Q.HTV-Xは24形態でなければ打ち上げられないと思って良いか。
A.はい。22形態では無理です。HTV-X1は必ず24形態で上げます。しかもフェアリングもちょっと大きいサイズが必要なので、24Wというワイドフェアリングを最初に使うという事になります。

Q.ロングではなくてワイドか。
A.そうです。3つ目(3種類目)のフェアリングです。

Q.30形態でLE-9を3基使うことによる影響はあるか。
A.3基を束ねるクラスターをやった事がない。世界的にもエンジンを3つ束ねているロケットはあまり多くない。スペースシャトルのエンジンは3基だったのですが、あれとはある意味全く違うやり方をとっていて、LOXのフィードラインというのですが、液体酸素をタンクから出してエンジンまで運ぶのですが、こいつがH3の場合、22形態だと(機体の外側に)2本付いています。30形態だともう1本付きます。スペースシャトルは1本の大きな管を通して、それをエンジンの直近で分けている。いろんなやり方があるが、どちらが難しいかというとシャトルの方が難しい。最初から分けていた方がエンジンのアンバランスみたいなものがタンクの所や推薬が分かれるところに戻ってこないという事もあって、最初から分けていた方が設計としては安全です。初めてなのでちょっと恐る恐るやっているのと、2本形態と3本形態で出来るだけ同じ機体を使って、フィードラインを1本外すだけにして共通性を持たせている、という事も考えて設計をしている。2基と3基を束ねるのはそんなに違わないのではないかとは思っているのですが、実際秋田県の田代試験場で2.5メートルくらいの細長いタンクで試験して、そんなに違わないかもしれないと感触は持っています。それでも実際のものでやってみないと判らないところがあるので、20形態で射点で燃焼試験をやりましたが、30形態でも同じようにやります。そこで初めて実機大サイズの供試体を使っての燃焼試験をやることになる。3つ束ねると450トンの推力を出すものをホールドダウンシステムで押さえつけながら試験をする、これが一番緊張するだろうと思っている試験です。そこで推進系の最終的な確認をすることになります。それが大きなチャレンジだし、飛ばす時にはそのホールドダウンシステムが良いタイミングで離れてくれないといけない。そのセーフティプラスアルファの動きが必要になるという事で、いろいろなチャレンジがある。

Q.試験はいつ頃か。
A.近々発表できるのではないかなと思います。

Q.ホールドダウンシステムはどういう試験を行うのか。
A.どうしても最後の最後は実際のロケットが飛んで行くのを見守るしかないということがある。実際のロケットを模擬した形での試験は現実には出来ない。ですのでいろんな事を考えて、出来るだけ実際に飛ぶところを模擬した試験をいろいろ考えたのですが、例えばVABにある100トンクレーンでエンジン部を吊り上げるようにして引っ張り上げる試験も考えたのですが、450トンの推力を100トンクレーンでは模擬出来ない。という事もあって実際の模擬にならない。ではどうするかとなると、結局は皆さん頼りなく感じるかもしれませんが解析で保証するしかない。ロケットは地上で何でもかんでも試験して保証できる訳ではない。例えば宇宙空間を地上で再現するのはとても難しいので、実際には解析保証をしている事がとても多いです。それのひとつとしてホールドダウンシステムの解析保証をしなくてはいけないのではないか、解析保証をする上でいちばん大事なのは解析モデルがいかに正しいか、モデルがちゃんと出来ていなかったら保証にならない。ですのでこれからMLのホールドダウンシステムに実際に加重をかけてみて、きちんと数学モデルに合ったモデルが出来ているかという事を検証する。それからある加重条件で、地上の試験では十分出来ていない事があると判ったので、そこを補う試験をやる。この2種類の試験をこれからやろうと考えています。

Q.それ以外で30形態を打ち上げるためにやらなければならない試験はあるか。また4号機のときに把持装置を改善するとおっしゃっていたが今はどんな感じか。
A.把持装置の改良は今進めています。把持の持ち方が難しい。あまり硬い物で支えてしまうとロケットに思わぬ加重がかかる、ロケットに無理が行って損傷しかねない。この把持装置の剛性をいかに適切に設計するか、それがとても難しいところです。それを改良する工事は一応終わりました。後は機体と接する部分、3号機の時に黄色いチューブみたいなものがついていたが、あれをもう一度付け直す。形を若干変えたりしたので、そのチューブも作り直した。その工事をこれからやります。30形態の試験機を使って把持装置の試験をやろうと思っています。30形態試験機のCFT(燃焼試験)のタイミングで把持装置を実際に付けてみて、極低温で非常に冷たくなった状態で把持装置がちゃんと動くかどうかというのを確認するというのを、30形態試験機の組み合わせの中で検証したいと思っています。

以上です。

竹崎展望台のプレススタンドから撮影。