H3ロケット5号機の打上げ前プレスブリーフィング

 2025年1月30日14時にH3ロケット5号機の打上げ前プレスブリーフィングが種子島宇宙センターの竹崎展望台記者会見室で行われました。
 (※一部敬称を省略させていただきます。また、各説明については配付資料に記載されている項目と説明を併せて要約しています。また一部で聞き取れないところがあり省略させていただきました)

・登壇者
 内閣府 宇宙開発戦略推進事務局 準天頂衛星システム戦略室 室長・参事官 三上 建治
 内閣府 宇宙開発戦略推進事務局 準天頂衛星システム戦略室 企画官 岸本 統久
 JAXA 第一宇宙技術部門高精度測位システム プロジェクトチーム プロジェクトマネージャ 松本 暁洋
 三菱電機株式会社 準天頂衛星プロジェクト統括 柳生 伸二
 JAXA 宇宙輸送技術部門 H3 プロジェクトチーム プロジェクトマネージャ 有田 誠
 三菱重工業株式会社 防衛・宇宙セグメント 宇宙事業部 H3 プロジェクトマネージャ 志村 康治

・打上げ日の再設定について(有田)
 宇宙航空研究開発機構(JAXA)は、H3ロケット5号機による「みちびき6号機」(準天頂衛星)の打上げを2025年2月1日に予定しておりましたが、打上げ当日の天候の悪化が予想されるため、下記のとおり変更いたします。
 打上げ日: 2025年2月2日(日)
 打上げ時間帯: 17時30分00秒~19時30分00秒(日本標準時)
 打上げ予備期間: 2025年2月3日(月)~2025年3月31日(月)
 打上げ場所: 種子島宇宙センター 大型ロケット発射場
 なお、2月2日の打上げの可否については、天候状況等を踏まえ、明日以降引き続き確認いたします。

・H3ロケット5号機の準備状況について(有田) 
 ・ロケット: H3ロケット5号機(H3-22S)
 ※LE-9エンジン2基、固体ロケットブースタ(SRB-3)2本、ショートフェアリングの機体形態。LE-9はType1Aが2基。
 ※機体については3号機と4号機と基本的に同じ。2号機はエンジンがType1とType1A。
 ・ペイロード: 「みちびき6号機」(準天頂衛星)
 ・衛星投入軌道: 静止トランスファ軌道(GTO)

 ・打上げ前日の23時頃に第1回のGO/NOGO判断。
 ・打ち上げ当日の0時から準備を開始し、3時頃からVABからLP2へ機体移動。
 ・打上げ当日の9時頃に第2回のGO/NOGO判断。3kmの総員退避開始。
 ・打上げ1時間前(16時30分)に第3回のGO/NOGO判断。
 ・打上げ10分前に最終GO/NOGO判断。
 ・17時30分に打上げ予定。
 ・打ち上げ可能なウインドウは17時30分~19時30分。
 ・第1段エンジン燃焼フェーズにおいて、100%から約60%に絞るスロットリングを行って、加速度を緩やかにする。(F3、F4と同様)
 ・衛星分離後に、将来のロングコーストGTOミッションを見据えたデータ取得を行う。(F4と同様)
 ・衛星分離は1741秒後。

 ・当初予定していた2月1日は、打上げ時刻辺りに雷や強風や雨の予報が出ている。また詳しい気象状況の確認の結果、氷結層の予報が出ており、また雲底高度も低く制約条件を満たさない。このため延期の判断となった。
 ・2月2日については、0時頃に前線が通過することが予想されている。もしその時刻が後ろにずれ込むと機体移動に若干差し障りがある可能性があるが、その後の天候としては概ね良好であり、なんとか打ち上げる機会を持てるのではないかと考えている。

・みちびき6号の準備状況について(三上)
 ・準天頂衛星システム「みちびき」は、日本とアジア・オセアニア地域に特化した、政府(内閣府)が保有・運用する地域版の衛星測位システム(Regional NSS)。
 ・みちびき初号機は2010年に打上げ。2018年から、準天頂軌道(3機) と静止軌道(1機)の4機体制で、測位・時刻の情報(PNT) と災害警報等のメッセージの配信サービスを開始。
 ・他国システム(GPS等)では測位精度が5~10mのところ、世界に先駆けて「cm級」の高精度な測位を実現(CLAS)。
 ・2025年度(令和7年度)までに5~7号機の3機を打上げ、他国のシステムに頼らず、みちびきのみで測位を可能とする「7機体制」を構築。2026年度(令和8年度)から、7機体制での運用を開始する予定。
 さらに将来、7機のうち、どの1機が故障しても測位を可能とする「11機体制」の実現に向けて、開発にも着手。

 ・みちびき6号機は名前に準天頂衛星とついているが東経90.5度の静止衛星である。これによりサービスエリアの拡大と利用の安定化を図る。
 ・これから1年間で5、6、7号機の3機を打上げ予定。
 ・6号機が5号機より先なのは、この3機は一体として開発しておりほぼ出来上がっている。ロケットの開発遅延等の影響を受け、当初の準天頂衛星システムの配置計画が遅れた。7機体制を早期に確立するため、静止軌道衛星というのは世界各国で獲得競争が激しく、非常に希少であることから、まず静止軌道に打ち上げる6号機を一刻も早く打ち上げて、我が国として静止軌道の場所を確保するという事が重要だという事で、今回6号機を先に打上げることにしました。順番を変えるといっても残る5号機7号機も1年以内に打ち上げることとしていますので、我々政府として立てている2025年度に予定している7機体制の構築という目標自体には影響は無いと考えています。
 ・みちびき6号機と7号機には、米国の宇宙状況把握のセンサも搭載。

 ・今後の予定
  2月2日打上げ
  ~約0.5ヶ月 静止衛星軌道到達
  ~約2ヶ月 衛星搭載機器機能確認完了
  ~約2ヶ月 QZSS End to End確認
  ~約4ヶ月 測位チューニング
  約6ヶ月後~ 測位サービス開始

  ・準天頂衛星システム「みちびき」は、位置・時刻情報を提供する我が国の社会インフラ。
  ・現在4機で運行中、2025年度までに7機体制を構築。7機になると日本から必ず4機が見えるようになり、他国のシステムなしでも測位可能な持続測位を実現。今後1年以内に5号機7号機を打ち上げて2025年度に7機体制を確立し、2026年度に7機によるサービス開始を狙っている。
  ※7機体制の場合、1機でも壊れると重要な機能が失われる。
  ・将来、バックアップ強化等のため、11機へ拡張し、社会インフラの信頼性を確保し、経済成長を支える基盤となる。

・みちびきについて(柳生)
 ・5、6、7号機で質量はあまり変わらない。ドライ(推進薬無し)で2トン程度、推進薬を搭載して5トン程度。
 ・大体4年おきにまとまった打上げをしている。衛星の開発製造には、基本設計から打上げまで5年間くらいかかる。そういう意味では2号機から途切れなくずっと開発製造をやっております。
 ・衛星バスは標準プラットフォーム(DS2000)。衛星開発では、電源系、衛星制御系、姿勢軌道制御系、推進系などのバス機器および主構体を標準化したプラットフォームとし、ペイロード固有の要求と機器に適用させていく手法により、新規設計範囲を絞り込み、品質・信頼度を高め、開発期間とコストを低減することができる。
 ・DS2000を使った衛星は18機で、軌道上で累積160年以上の動作実績がある。

・高精度測位システムについて(松本)
 ・新しく打ち上げられる衛星3機については、測位システムの部分が刷新されており、これを高精度測位システムと呼んでいる。
 ・高精度測位システムは、従来の準天頂衛星のシステムに、衛星間測距機能および衛星/地上間測距機能(高精度測距システムと呼ぶ)を加え、より正確に準天頂衛星の位置と時刻を特定することにより、ユーザがより正確に測位できる仕組みを実現するもの。
 ・将来、すべての準天頂衛星に衛星間測距機能および衛星/地上間測距機能が搭載されれば、スマートフォンのような一般的な受信機でのユーザ測位精度は飛躍的に向上する。
 (※現状:5~10m → 将来:1m)

 ・ユーザ測位精度の向上⇒測位衛星の軌道・時刻をより正確に推定することが必要
 ・衛星の軌道時刻の精度を向上させるためには…
  →衛星-地上(監視局)間の距離に加えて、衛星-衛星間の距離を計測することにより、衛星の位置誤差を低減する(衛星間測距機能)
  →双方向で衛星-地上間の距離を計測することにより、時刻誤差に起因する衛星-地上間の位置誤差を除去する(衛星/地上間測距機能)

・質疑応答
産経新聞・1日の天候が悪いため2日という事だが、週間気象情報では2日になってから6時までに雷のマークがついているが、機体移動は大丈夫なのか。
有田・予報としては若干割れているところがあり、2種類のモデルがあるが、そのうちのひとつが当たるともしかすると雷がかかるかもしれない。前線の通過が遅れると機体移動にかかってくる恐れがある。もう一方のモデルではもう少し早く前線が通過するという予報になっていまして、私達としてはそちらの方に期待をかけている。この辺の天候を注視しながら機体移動のタイミングを見計らいたいと考えています。

産経新聞・(前線が)早く通過すれば雷のマークも消えるということか。
有田・はい、ご理解の通りです。

産経新聞・2日に(前線が)早くならなかったら問題があるが、ならば3日は行けそうなのか。
有田・3日は、もし機体に不具合があって機体を戻さなければならないという時に若干天気が悪くなっていくという傾向がある。特に風が強くなるという傾向が予想されていて、その辺りがちょっと心配なところはありますけども、現時点で3日も可能性はあるかなと思っています。

産経新聞・言わずもがなですが機体は準備万端か。
有田・ロケットと衛星系ともに順調に整備が完了している状況です。

読売新聞・今後(衛星)3機を打上げて、政府として悲願の7機体制を目指すとのことだが、最初の6号機という事で、延期にはなってしまったがあらためて最初の6号機が打ち上がることの意義と意気込みをお聞かせ下さい。
三上・今回みちびき6号機として高精度化をする技術開発、研究開発といった6号機個々としての意義は重要でございます。その上で我々としては、システム7機体制をいかに早くという事を考えております。我々としては6号機を皮切りに5号機7号機を今後滞りなく進めて打ち上げていきたいと思っています。その成果としましては、みちびきは今現在でも我が国の社会的課題の解決、産業経済の活性化、防災減災国土強靱化等、様々なところに時刻と位置の情報が使われているので、我々としてはそういったシステムの強靱化、我が国のそういった活動を支える貴重なインフラになるべくシステムを早く立ち上げていきたいと考えています。

読売新聞・将来、誤差が1mというのは、すべての準天頂衛星に今回のような高精度のシステムが搭載されたらとのことだが、みちびきに限らず全世界のという意味か、みちびきの話か。
松本・これはみちびきの信号のみが向上しますので、みちびきの信号を使って測位をすればという意味になります。

読売新聞・今の4機は積んでいないということか。
松本・現在の4機には積んでおりません。まずは新しい3機に積まれますので、その分の性能が向上します。将来、今打ち上がっている衛星も寿命が来たときに新しい機能をもって変わっていきますので、その時に性能が向上していくという事になります。

読売新聞・11機体制になればこれくらいの誤差になると見て良いか。
松本。はい、その頃には新しい号機に入れ替わると思いますので、その頃には達成されていると考えます。

日経新聞・今回の(H3)5号機の打上げで22形態の飛行実証が終わると思うが、重工さんへの移管が視野に入るのか。今後30形態とエンジンのType2の実証が控えているが、そこらも終えてから移管を検討するのか。
有田・22形態は試験機2号機以来運用してきまして、飛行実証という意味では試験機2号機で終えて、3号機以降は実運用段階に入っているという事で、今回も重要な衛星であるみちびき6号機をしっかり軌道に届けて、H3としても実績を重ねていきたいという風に考えています。来年度には30形態の試験機や、SRB-3を4本取り付けた24形態でのHTV-X1の打上げ、こういったものが工程表上定められておりますので、こちらをしっかり仕上げて打ち上げてまいりたいと考えています。民間移管の点に関しましては、まさに今、これまでの実績、それから5号機の結果、こういったものを踏まえて三菱重工さんと協議を続けているという状況です。30形態やType2エンジン、こういった物をどう考えるかという事についても、その中で併せて相談させていただいているという状況で、現時点はオンゴーイングという風にご理解いただければと思います。
志村・全般有田さんからあった通りでございますけども、我々としてはまずは目の前の5号機をぜひ成功させるという事に注力して進めております。併せて開発が残っている。30(形態)24(形態)、それとエンジンのType2と、それらの開発も並行して前進させていくことに力をかけております。並行してそれらの状況を見ながらJAXAさん及び関係の皆さんと相談しながら移管の時期については決めていきたいと考えています。

朝日新聞・みちびき6号機の総開発費はいくらか。
三上・今回は5、6、7号機をまとめて開発しているので1機あたりの額は正確には出ないのですが、3機あわせて6年間かけて約一千億円の予算を投じているところでございます。

朝日新聞・6年間の一千億円に運用は含めているか。
三上・開発費のみでございます。運用はまた別でございます。

朝日新聞・個別には出していないとのことだが、5、6、7号機でそれぞれ同じくらいなのか。
三上・先程メルコ様から説明がありましたが、3機は類似の兄弟で作っておりますので、しっかり分けることはできませんけども相当程度だと思っております。参考でございますけども、米国のGPSの衛星開発でも大体同様の相場だと我々は聞いているところでございます。

朝日新聞・H3としては5号機というところで、H3としての今回の打上げの位置付けと意気込み。
有田・今回の5号機は22形態として続けてきた連続成功を、これを続けてその実績を確かな物にしていく、というところがいちばん大きなポイントかなと思っています。その結果を踏まえて次の新しい30形態、24形態、こちらの開発に弾みをつけたいと考えているところです。

JSTサイエンスポータル・みちびき初号機後継機では打ち上げ費用を教えていただいていたので、今回の打上げ費用も差し支えがなければ教えて下さい。
岸本・打ち上げ費用については三菱重工さんとの契約内容にもありますし、これからの受注にも関わるとのことで内閣府としてはご説明は控えさせていただきます。
志村・その通りでございます。ご配慮ありがとうございます。契約額については申し上げられませんこども差し控えさせていただきます。

JSTサイエンスポータル・宇宙状況監視センサを搭載するという事で、日米の取り決めであるとか連携の話があった中での取り組みかと思うが、どのようなセンサなのか解説をお願いしたい。
三上・準天頂衛星6号機と7号機。6号機は静止衛星でございます。7号機は殆ど静止衛星軌道に止まっているが若干動く準静止軌道衛星になりますけども、これらには米国政府の宇宙状況監視SSA(Space Situational Awareness)といいまして、このセンサが搭載されています。このセンサは米国政府によって運用されるものでございまして、スペック等運用等につきましては完全に米国に任されるものでございます。米国から聞き取るところでは、目的としてはスペースデブリの増加をはじめとする宇宙空間の混雑化による衛星への衝突等のリスクに対応して、宇宙空間の安定利用を確保する観点から、こうしたスペースデブリ等の宇宙物体を宇宙空間から観測するためのものと我々は聞いているところでございます。

JSTサイエンスポータル・測距の精度が上がる取り組みが高精度測位システムとのことだが、6号機が衛星間測距の機能を初めて搭載したのか。
松本・はい、その通りでございます。

JSTサイエンスポータル・前回の初号機後継機までは対応していないが、今後のものは対応するという事で良いか。
松本・はい、その通りでございます。

JSTサイエンスポータル・こういった取り組みは諸外国の測位システムも同様な事を考えているのではないかと思うが、世界的な技術動向としてもこういった事はあるのか。
松本・世界でも長い時間をかけて、それぞれの測位システムでは精度向上に関する取り組みを継続的に行っていると、そのように承知しております。正確な実施状況やそれによる効果、そこまでは我々は承知しておりませんが、例えば中国の衛星間測距のような技術に取り組んでいると聞いていますし、ヨーロッパのGalileoも今後そういう取り組みをやろうとしている、そういう事も承知しております。それから衛星・地上間測距の方も、こちらについては諸外国の状況は承知していないのですが、技術的には実は、準天頂衛星初号機、これはJAXAが衛星を開発し運用しまして、その後内閣府に移管したのですが、この中で双方向の信号を使って、時刻誤差を縮めるような実験をやっております。これはNICTが中心になって行った実験ですが、この技術を今回我々は測距誤差を縮めるような使い方をしている。

フリーランス鳥嶋・今回のロングコーストのデータ取得に関して2点質問します。前回の4号機のデータ取得に関して、データを取得して分析した結果、どういう成果が得られているか。関連して今回の5号機でのデータ取得は前回4号機と違いがあるか、あるいは全く同じ内容なのか。
有田・4号機のデータ取得につきましてはHPでもご連絡しましたが、データ取得そのものは非常にうまくいきました。これをロングコーストのミッションに対してどのように役立てるかについては、もう少し時間をいただいて、今正に解析を進めているというところで、まだ現時点で目に見える形での成果という形ではとれておりません。ただ、機体内のいろいろな温度や圧力の状態量をきちんと把握できているという事までは確認出来ている。今回の5号機でも基本的には同じようなデータをとっていく事になりますが、その確度を上げるといいますか、このような機会は非常に貴重な機会ですので、これを有効に活用させていただいて、データをより多くとる。我々はn数を増やすと言いますが、こういった形で貴重なデータをとって、ロングコーストの飛行実証に活かしていきたいと考えています。

NVS・同じ静止軌道のみちびき3号機はH-IIAの204型で打ち上がっている。今回はH3の22形態で打ち上がるという事は能力が上がっているというところがあるが、SRBが2個削減できるなどトータル的なコストメリットと性能向上について教えて欲しい。
有田・H3の22形態はSRBが2本ですが、コアのロケットがH-IIAに比べて、H-IIAが4mに対してH3は5.2mという事で直径が3割増しになっています。それだけ沢山の推進薬を積めるという事で、全体として能力が上がっている。22形態でH-IIA204の能力がほぼ出せる、そういったところを元々狙っておりました。なおかつH3の22形態は同じ土俵で比べると約半額になるという事で、コストパフォーマンス的にも非常に良いものになっていると私達は評価しています。

読売新聞・高精度の測距ができるようになったとのことで、6号機単独で運用に加わった時に、測距の安定化、システムとしての安定化とか、エリアの広がりとか、6号機が加わる事のメリットの数字があれば教えて欲しい。
岸本・なかなか数字が難しいが、6号機が打ち上がると、衛星間測距は衛星との間を繋ぎますので5号機まで待つ必要があるが、もう一つの衛星地上間測距の機能がありますので、そちらの検証の方はJAXAさんに進めていただきたいと思っています。当面検証が進みますので、我々といたしましては通常のL帯を使った軌道時刻推定をして、一刻も早くユーザーにサービスを開始するという事を考えていまして、打上げ後半年を目処にサービスをしたいと思っていますが、サービスエリアとしましては地球の1/3くらいをカバーしますが、やや仰角が低いですが日本から見えます。一方で測位衛星はいろいろな方向に見えることが大事になります。なかなか定量的には言いにくいですが、そういう形で。真上に準天頂がいますし、別々な方向から受けるのも大事になりますので、そういった観点で幾何学的な配置を良くして誤差の改善といったところを考えています。
三上・今回東経90度のインドとの真ん中くらいに置かれるが、既に4機態勢で東南アジア等のみちびきの電波が受信できるエリアの地域には、みちびきが使えますよという宣伝を行っています。今回この6号機がこの位置に置かれる事によりまして、同地域ではより安定的に、彼等にとってはより真上に置かれることになりますので、同地域におけるみちびきの存在感を増して、日本がみちびきを用いて国際貢献、あるいは現地における社会の安定化や経済の発展といったところに日本も貢献しているというところをみちびきを通じてアピールしていければと思っています。
岸本・(内閣府資料6ページより)高精度測位システムとの関連で1の衛星測位サービスについて説明させていただきましたが、2の測位補強サービスという意味では6号機に乗っているものがあります。ここで言いますと航空管制のSBASの信号というものが6号機と7号機に搭載されるという事がありますので、今の3号機に加えまして6号機からもSBASの信号が出るため、完全にバックアップの体制が出来るのは大きな意義と思っています。それからデシメータ級のMADOCAと呼んでいますが、これは海外でセンチメートルからデシメータのサービスをするというものがありますが、これの初期捕捉時間を改善する取り組みの信号を6号機から出すという事も考えていますので、そういった観点では6号機があることでユーザーの(?)に繋がることがあるのではないかと思って期待しているところです。

時事通信・衛星間測距のシステムで、5号機が地上との測距信号を受けて6号機と7号機に分配する形で、5号機がハブのような形になっている。このあと4号機までの後継機が打ち上がってこのシステムを載せた場合、衛星間の測距はいくつかの衛星がハブというか地上との関係でピン止めされてそこから他の衛星を決めるような形になるのか。
松本・もともとは双方向に衛星間測距信号をやりとりする計画で技術開発がスタートしているのですが、片方向になった制約は、周波数干渉を避けるためという理由で、静止軌道上には多くの人工衛星がおりますので、S帯を発信することで他の衛星に干渉を及ばさないというために片方向にしているものですので、絵としてはハブのような形に見えますがそういう意図ではございません。
時事通信・今回の6号機はハード的には受信機だけでなく送受信機があるのか。
松本・6号機については受信専用機になります。今回の3機では5号機が信号を出す側、6号機と7号機は5号機の信号を受ける側になっております。

時事通信・後継機が打ち上がって拡張される場合は、相互の測距によって位置を確定させることを考えているのか。
松本・5号機には受信機能もついています。よって他の準天頂軌道に衛星が投入されて11機体制になった暁には、他の準天頂軌道の衛星間測距機能の送信機能を持つ衛星からの信号も5号機は受けられるようになります。一方で、どのように11機の中で運用していくかも含めて、今後効果のある運用方法、効率的な運用方法を検証しながら作っていくことになります。

時事通信・静止軌道に行った3号機には、災害危機管理のメッセージのサービスがあったと思うが、6号機にはその機能はついているのか。
岸本・災害危機という意味ではL1Sという信号を使っていまして、サブメーター級のSLAS信号がありますが、6号機にはSLAS用のL1Sは載せていません。その意味では災害危機管理の信号は6号機からは送信されないという事になっています。考え方と致しましては、災害危機の情報はユーザーはどれか1機から受信できれば良いという事になりますので、そこは準天頂軌道の真上からの一つがとれればいいだろうという事で、6号機がこういった場所にあるのは衛星測位サービスをいろんな方向からしっかり届けるという観点のサービスという事で、L1Sの信号を載せていない。

時事通信・今それを載せている3号機と4号機が退役になれば後継機にそれを載せてサービスを維持するのか。
岸本・3号機の後継機や4号機の後継機にはL1S信号を載せまして災害危機管理の情報を配信したいと考えております。

岸本・衛星間測距の周波数の制約について補足させていただくと、静止衛星の周波数が混み合っているという事で、7号機はほぼ静止、6号機は静止という事もありまして、静止からは信号を出さないという事はありますが、準天頂軌道は十分離れていますので出せる。(静止近辺では停波します)準天頂衛星5号機やそれ以降の準天頂軌道からは搭載しようということで、後続号機についての仕様調整を進めています。

南日本新聞・精度が1mになる時期について、宇宙基本計画の工程表では11機体制が2032年度以降になっているが、この1mが達成できるのは2032年度以降を予定しているという理解で良いか。
松本・工程表での11機体制というのは、もう少し先になると思われますので2032年度以降という意味ではそのようになります。新しい機能が搭載された衛星から精度の高い信号が出せますので、それが揃い次第、揃うと共に精度が上がっていって、全て整えば非常に精度の高いサービスが提供出来るという状況になります。

南日本新聞・来年度の30形態に向けて、今回の5号機であらためて確認する予定はあるか。
有田・5号機につきましては、30形態の試験機に向けた試験的なものは考えておりません。5号機を無事に打上げた後に、30形態の開発の仕上げとしてホールドダウンシステムの試験をしっかり行って、30試験機の打上げに備えてまいりたいと考えています。

南日本新聞・ホールドダウンシステムはまだ完成していないという事か。
有田・ホールドダウンシステムは完成して1号機からずっと使っているが、30形態では使い方が若干変わって打上げの時の重要性が増すという事で追加のデータを取得することを考えています。

三上・先程の補足として内閣府側の思想をお伝えします。準天頂衛星の2号機以降は大体寿命15年で作られております。2、3、4号機は2017年に打ち上げられましたので予定では2032年から2033年くらいに寿命が来ると予想されています。我々としては7機体制を作ると共に将来は11機体制にという事でございますが、こうした寿命が来る衛星が落ちてくるのをを補強しながら更に増やしていくという事をやっています。他方、そこに配備する衛星につきましては、やはりそれを作る時点での(価格と共に)最高水準の測位性能を持った衛星を入れていきたいという事がございますので、今後もそういった事で開発時の技術水準もJAXA様と相談しつつ組み込んでいくべきだろうなと思います。これは政府側としての決意でございます。

JSTサイエンスポータル・前回の静止衛星が2017年のみちびき3号機だった。今回、アメリカのセンサを載せるとか高精度測距の話があったが、前回より重くなっているので、衛星として何かブラッシュアップがあるか。
柳生・(三菱電機・配付資料6頁より)5、6、7号機は搭載ミッションが拡大、重量も増えています。それに対応して衛星として太陽電池パドルの強化を図っています。実際には使っている材料を変えて発電効率を上げるといった事で、ミッションの拡大に対応することをやっております。

フリーランス鳥嶋・H3の民間移管についての質疑で、H3は3号機から運用段階に入ったとの回答があった。一方で内閣府が出している宇宙基本計画工程表の最新版では、H3について開発から運用段階への移行時期については今後調整するという文言があり、運用段階ではないという認識となっている。現時点ではH3はどういう位置付けにあるのか。
有田・工程表には開発から運用段階への移行時期及び民間への移管時期について今後調整と書いてございます。こちらの方は従来から書かれている内容と同じと認識しております。まだその意味で運用段階については移行していると文科省さんと同様の認識をしていると考えておりますけども、この民間移管につきましてはまた完了していないというところで今後調整という文言が残っているのではないかと拝察致します。この辺り、必要があれば裏を取ってまたご説明できればと思います。私共としては3号機から実運用に入り、実用衛星を打ち上げさせていただいているという認識でおります。

毎日新聞・2025年度までにみちびきの3機を打ち上げて、他国のシステムを頼らずみちびきのみで測位を可能にするというところで、それが悲願であったという事だが、他国のシステム(GPS等)に頼るのはどういったリスクがあって、軍事的であったり経済的であったり、自国のシステムで運用できるのはどういうメリットがあるのか。
三上・衛星測位の仕組みとしましては、位置のXYZと時刻を合わせて4つの変数を決める必要があり、4つの衛星から信号を得ることが必要になります。他方、みちびきは常に見えているのが2機かきりぎり3機で4機に足りません。4機だけでは自分の信号だけではできない状況でございます。7機になりますと常に日本から4機見える事になって独立して測位が出来るという事でございます。他国の状況で申しますと欧州のガリレオの仕組みでシステム障害があって使えなくなって社会に大きな影響があったと聞いております。また日本の上にはみちびきの他にGPSガリレオ中国の北斗ロシアも含めて沢山飛んでいるが、それらが今後どうなるか状況になるか判りません。他国の衛星とシステムを当局がどう考えているかも、協力はしていますが、今後何かあったときに、機能停止をする、あるいは電波の調子が悪くなるといった事も考えられます。その時にやはりその国独自のシステムを持っているということがその国の強さになると思っています。衛星測位の情報というのは経済社会に広くベースとなっているものですから、社会への混乱、あるいは普通の社会活動をする上で絶やしてはいけないサービスだと思っております。

宇宙作家クラブ・(内閣府資料8頁)7機体制と11機体制で、今回の6号機が静止軌道から準静止軌道に変わっているように見える。
岸本・11機体制の時にはより低コストで整備していかなければならないという事がありますので、6号機のさらに後継機にする時には、準静止にすると推薬が少なくて済むという特徴があります。デュアルロンチが出来たら良いなと視野に入れて検討していることもありこういう絵があります。実際、最後に静止にするか準静止にするかといった所は、デュアルロンチの費用などにも関わってきますので、引き続き検討精査を進めた上で軌道が決まってくると考えています。

宇宙作家クラブ・コストの他に何かメリットやデメリットがあるか。
岸本・静止軌道だと止まっているので、ユーザーから完全に同じ場所に見えるメリットがあります。一方で静止はなかなか周波数のスロットが取りづらい、諸外国との調整が大変になってくる。7号機は準静止にしているが、周波数の関係もあるが、ある程度自由に右左に行ける形になりますと、軌道制御を頻繁にやらなくてはいけないという制約が無くなります。6号機は静止ですので3週間1回くらい軌道を制御して、どうしてもスラスタを吹いてしまうと軌道が乱れてしまいますので、その間その衛星は暫く使わないで下さいという形でアラートフラグを立てる。7号機の時は半年に1回くらいだけ軌道制御をすれば良いというメリットがある。それぞれの良さがありますので、その辺りは使い分けて軌道を決定してきているという事になります。

宇宙作家クラブ・準天頂の時には衛星間測位のときに準天頂の軌道からは送信できるとあったが、準静止も制約を受けないのか。
岸本・準静止も受けます。静止軌道からプラスマイナス何度かというところは受けますので、準静止も軌道傾斜角を沢山持っている訳ではないのでどうしてもそれを受けてしまって、準静止からも衛星間測距は受けるのみになる。

NVS・当日のスケジュールで機体移動の可否判断をするが、そこで前線通過のタイミングを見てとあり、仮に30分から1時間くらい後ろ倒しになった場合、その後のターミナルカウントダウンに4時間のマージンがあるが、そこで吸収されて打上げ時刻に変更は無いという判断で良いか。
有田・天候を見ながら機体移動を場合によっては遅らせる可能性もある。それを約4時間の予備時間の中で吸収できればX時刻を17時30分から変える事無く打てる可能性があると思っています。仮に駄目だった場合でも19時30分までのウインドウの中で打ち上げるという事でやり切りたいと考えています。

産経新聞・6号機は30形態なのか。
有田・正式に公表できる段階ではないというところでございます。工程表の順番ではそのように見えますけども、そこらについてはまだ正式に決まったものではない。私共としては30形態の試験機を来年度に打てるように準備を進めているという所です。

産経新聞・開発を急いでいるという事か。
有田・着々と進めているところでございます。

以上です。