H-IIAロケット48号機打ち上げ後記者会見

 情報収集衛星光学8号機を搭載したH-IIAロケット48号機は2024年1月12日13時44分26秒に種子島宇宙センターから打ち上げられ、衛星を所定の軌道に投入しました。この打ち上げの約2時間後に記者会見が開催されています。
 (※一部敬称を省略させていただきます。また個人的な理由で掲載が遅れました)

・登壇者
内閣官房 内閣情報調査室 内閣衛星情報センター 次長 安田 浩己
三菱重工業株式会社 執行役員 防衛・宇宙セグメント長 江口 雅之

・登壇者挨拶(安田)
 まず始めに今般の能登半島地震でお亡くなりになられました方々のご冥福をお祈り致しますとともに、被災された全ての方々に心よりお見舞いを申し上げたいと思います。さて、本日、種子島宇宙センターからH-IIAロケット48号機が打ち上げられ、搭載していた情報収集衛星光学8号機を所定の軌道に投入することが出来ました。今回の打上げに際しましてご支援ご協力をいただきました地元の皆様、そして関係者の皆様方にこの場をお借りして厚く御礼を申し上げます。ありがとうございました。
 衛星による情報収集体制を確実なものとし、より一層強化するためにも、今回打上げました光学8号機は非常に重要な衛星であると考えております。今後、内閣衛星情報センターと致しましては光学8号機の早期の運用開始に向けた所要の作業をしっかりと進め、我が国の情報収集能力がより一層強固な物となるよう全力を尽くして参ります。本日はありがとうございました。

・打上げ結果の報告(江口)
 三菱重工業株式会社は種子島宇宙センターから本日1月12日13時44分26秒に、情報収集衛星光学8号機を搭載したH-IIAロケット48号機の打上げを無事執行致しました。
 ロケットは計画通り飛行し、情報収集衛星光学8号機を正常に分離した事を確認致しました。今回の打上げ実施にご協力頂きました関係各方面に深く謝意を表します。どうもありがとうございました。

・質疑応答
NHK・来月打ち上げられるH3と共通の設備がある中で、今回の打上げが来月にも影響する部分があると思うが、そのことにおいてのプレッシャーや重みをどのように受け止めていたか。また来月のH3に向けてのコメントをお願いします。
江口・H3ロケットは残念ながら昨年3月の打上げで失敗しております。その後開発の取りまとめをされているJAXAさんと関係パートナーと一緒にいろんな調査を続けて参りました。その中で判った色々なトラブルの種となる所は対策を施しまして、現在打上げの最終準備をしているところです。同じ対策は昨年の秋に打ち上げましたH-IIA47号機と、それから今回の48号機に搭載されておりまして、2段のエンジンの着火のところですが、ちゃんと作動致しました。これはH3の来月の打上げに向けて、より信頼度が高まってきているということで、非常に大きなステップを本日の打ち上げ成功ですることが出来たと考えております。関係者一同、H-IIAロケット、H3ロケットの現場作業者エンジニア、非常に意識高く前向きにやっておりますので、是非来月の打ち上げ成功という所に向けて邁進していきたいと思っています。

NVS・昨日、情報収集衛星の映像が公開されていたが、映像を自治体に提供したことにリアクションなどが来ていれば教えてください。(※令和6年能登半島地震に関するもの)
安田・私共の情報収集衛星の目的でございますけども、外交防衛等の外交安全保障だけではなくて、大規模災害等の危機管理に必要な情報収集を行う事を目的としているところでございます。先般の能登半島大地震の最にも私共の情報収集が被災者の救助、あるいは早期の現場の状況把握に役立てるのではないかという観点からその部分の撮像等を行いまして、分析等も行ったところでございます。そういったプロダクトにつきましては関係省庁に速やかに配付しております。また併せて国民一般の方にもご覧いただくことが適切であろうということで、昨日公開をさせていただいたところでございます。公開のやり方と致しましては、加工処理画像という形で、識別能力につきましては特定秘密にあたりますのでそこを判らないようにする加工処理をした画像という形で展開をさせていただいたところでございます。私共としてはこの加工処理画像の情報が今後の様々な自治体等での被災者への対策ですとか救助等に結びつく事を期待しているところでございますけども、昨日上げたばかりでございますので、今の段階でこういう事に役立ったという情報については私はまだ承知をしていないところでございます。

NVS・プレスリリースに出ていた映像と自治体等に提供した映像は同じものか。その中から抜粋した物を国民に向けて公開したのか
安田・関係省庁等には、あれだけではない物も配付しています。自治体の何処というところまでは承知していませんけども、関係省庁にはそもそも衛星画像を見れる方に対しては加工していない生の画像を提供しておりますし、加工処理したものについても必要な方々に提供しているところでありまして、その中で国民にもお知らせした方が良いという画像について公開させていただいたという事でございます。

KYT・今回打ち上げた光学8号機について、今後システムのチェックなどを行って運用にどれくらいかかるのか。他の情報収集衛星と併せてどういう働きを期待しているのか。
安田・今回打ち上げた光学8号機につきましては、高い画質、また俊敏性、即時性を有するものでございます。こういった光学8号機を今回打ち上げる事が出来た訳ですけども、今後衛星がしっかりと機能するかについての初期機能の確認をしていくというところで、これは一定の期間を要すると考えています。最近の例でいきますと数ヶ月から半年くらいかかる気がしておりますけども、なるべく早く運用が出来るように努力をしていきたいと思っています。その上でこの光学8号機を含めて今保有しております情報収集衛星全てを最大限活用しまして我が国の安全保障あるいは今回の大地震等の危機管理、こういったものにより一層貢献出来るように全力を尽くして参りたいと考えております。

読売新聞・情報収集衛星については今後、光学4機、レーダー4機といった形での計10機体制の運用を目指されているため、それに向けて宇宙基本計画等での打ち上げ計画を立てられていると認識しています。今回の光学8号機も6号機の後継機でありまして、6号機も既に設計寿命を超える形での運用をしているとのことでした。あらためて予定されている光学4レーダー4の10機体制の構築を早期に実現する必要性についてのご認識を伺えればと思います。
安田・情報収集衛星というのは外交防衛等の安全保障及び大規模災害等の対応等の危機管理に必要な情報収集を行う事を目的としているものでございます。特に昨今の我が国を取り巻く安全保障環境は非常に厳しさと不確実性を増していると思いますし、また先日の能登半島地震に見られますように大規模な災害等も頻発している。こういう状況の中で我々が必要な情報収集体制、これをきっちりと固めていく必要があると認識しているところでございます。そのためにも10機体制が目指す情報収集能力の向上、これを目標に我々としては全力を挙げて取り組んでいるところでございます。

読売新聞・H3の打上げ失敗などを踏まえて工程表の見直しが行われた。その中で情報収集衛星も計画に沿う形で改めて早期の打上げを順調に進める必要があるということで良いか。衛星の寿命等を踏まえた上でという意味でお伺いしました。
安田・H3の失敗は大変大きいと思っていますが、そういった事も含めて私共としては着実に10基体制を確立をする、その歩を一歩一歩進めていかなければいけないと考えておりまして、関係省庁とも相談をさせていただきながら宇宙基本計画の工程表に書かせていただいているような形で機数増を着実に進めていきたいと考えているところです。

南日本新聞・H-IIAが残り2機となったが、これまでH-IIAが果たしてきてた役割はどういったものだったか。残り2機になった事への想い。
江口・H-IIAは今回48号機ということで、途中失敗もございましたけども、今のところ7号から数えて42機連続で成功しています。それをあと2機というとこてろである意味淋しいところではあるが、50号機まで是非成功させて最後に綺麗に終わりたいと関係者も思っていまして、恐らく来年度に2機打上げがあると思いますけども、準備万端に整えていきたいと思っています。これまでいろいろなミッション、政府系のミッションとか科学系のミッション、あるいは海外の衛星もいろいろ打ち上げてきましたので、その42回の成功の中でいろんな用途に衛星を運用していただいているということで、ロケット打上げ事業会社としてはその点非常に誇りに思って続けています。それを次のH3に繋げていけるようにと考えています。

朝日新聞・昨日発表された能登半島地震の被災地の画像は発災から10日経ってから公開となりまして、大きな災害のデータはいち早く迅速にというのが重要と思うが、加工などで時間を要するのか。今後例えばデータ中継衛星が増えるなどで画像提供にかかる加工処理の時間も短くなるのか。
安田・発災直後から地域の撮像を行いまして、それについて画像データを見て関係機関等には特定秘密にあたる画像については提供しているところであります。一方で天候も不順でありまして、光学衛星ですと雲があるとなかなか写らない部分が多くて、そういう中で被災しているところを見つける作業というのはかなり難しいものもございます。そういう手探りの時間のかかる作業を行った上で、被災状況がかなりはっきり判る物をピックアップしていく、それに多少時間を要したこともございますし、ご指摘の通り加工処理に一定の時間がかかるという事もございます。そういう事で、今回国民の皆様にも提供できるような形でお示しするのに少し時間がかかってしまったというのは正直私共も思っている所でありまして、今後はできる限り早く国民に情報提供できるようにいろんな意味で速やかな作業を進めていきたいと思います。もうひとつのデータ中継衛星の話ですけども、データ中継衛星があれば速く画像を下ろせるという所はもちろんありますが、今回の場合はデータ中継衛星がもう1機あればなんとかなったかというと、そういうレベルの話では無いのかなと思っています。

・第2部登壇者
内閣官房 内閣情報調査室 内閣衛星情報センター 管理部付調査官 三野 元靖
三菱重工業株式会社 防衛・宇宙セグメント 宇宙事業部 技師長 H-IIA打上執行責任者 徳永 建

・質疑応答
読売新聞・10機体制を目指すとのことだが、8号機が運用される段階で10機体制になるといったスケジュール感なのか。また、8号機の開発費用と打ち上げ費用をお願いします。
三野・私達が目指す10機体制の構築は令和11年度を目指しています。今回打ち上げましたのは光学6号機の後継である光学8号機でございまして、光学8号機の打上げによって機数が増えるという事ではなくて、光学6号機と交代をする形になります。ですので目指している10機体制の中で今何機構築出来ているかと言われれば5基という形になります。今後、時間軸多様化衛星というものを導入することによって10基体制を目指して参りたいと考えています。それから費用の面でございますけども、衛星の開発費につきましては約400億円、ロケットの打上げ費用として約100億円、合計約500億円であるとご理解いただければと考えています。
 補足しますとロケットの打ち上げ費用につきましては、内閣衛星情報センターが予算化している費用でございまして、実際にいくらかかったかについては三菱重工さんの契約にかかってきますので恐らく公開はされないと思いますけども、私共として予算化している費用として約100億円であるとご理解いただければと思います。

MBC・地震であったり昨今の島嶼の問題であるとか安全保障環境がどんどん変わっていく中で、この情報収集衛星の打上げることのメリットと意義が大きくなっていると思うが、そういった衛星の載せて打ち上げる事への想いというか、残り2機となる想いをお聞かせ願えればと思います。
徳永・今話がありましたように今回は大きな災害があって、現地の方々にはお見舞い申し上げたいと思うところでございます。今回の情報収集衛星、さきほどございましたように安全保障の観点のみならず災害、危機管理ということもあるということをお伺いしました。従来から位置付けとしては非常に大事なミッションである中、今回このような災害が発生している中で、この危機管理にも対応出来るというような形の衛星を打ち上げられた事につきましては私としては達成感、非常に喜ばしいといった感じで考えております。お役に立てたということで良かったと考えております。残り2機になりますけども、そのうち1機は今回と同様に内閣衛星情報センターさんの情報収集衛星でございますので、ここもしっかり対応して参りたいと考えているところです。

NVS・衛星の状況はどうなっているか、公開出来る範囲で教えて欲しい。
三野・衛星の状況については現在詳細を確認中でございますが、現時点において特段の不具合は生じていないと報告を受けています。

フリーランス鳥嶋・今回のミッションパッチについて、以前は号機にかかわらず共通のものを使用されていたが、前回の7号機から衛星ごとに異なる、各衛星を表したデザインのものにされていたと思うが、その意図と想いについて。関連して今回の光学8号機の絵についてはイラストが何を表しているのか、込められた意図とか想いなどを伺えればと思います。
三野・ミッションマークについての質問と思いますが、ご指摘の通り前回のレーダ7号機からこういったものを作成しています。これは衛星センター全体で打上げの機運を盛り上げるという事もございまして、衛星センターの職員にミッションマークのロゴを公募して、その中から優れた作品を選定しているものでございます。光学8号機のミッションマークにつきましても同様のやり方をとっていまして、作品の中から優れたものを選定したというものでございます。よく聞かれるのが、こういった形をしているのですかということですが、そこについては、あくまでミッションマークであるという事でご理解をいただければという風に考えております。

JSTサイエンスポータル・昨日公開された能登半島地震被災地の加工画像を報道機関が記事で使って良いかという念のためのお伺いと、その場合のクレジット表記は内閣衛星情報センターとするか、内閣情報調査室とするか、あるいはその他か。
三野・昨日公開した能登半島地震被災地の加工画像につきましては報道機関の皆様にお使いいただいて結構でございます。その際、内閣情報調査室または内閣衛星情報センターというクレジットを付していただければ幸いでございます。

JSTサイエンスポータル・どちらでも良いのか。
三野・こちらとしては拘りはありません。内閣衛星情報センターと付していただいている報道機関の皆様の方が多いかなと考えております。

NHK・H3の失敗から共通部分への対策が講じられて、手を加える事の怖さも指摘されているが、47号機で成功しているものの今回あらためてどういった緊張感があったか。
徳永・H-IIAにつきましては47号機にエキサイタとニューマティックパッケージという所に対策を施しました。今回48号機につきましても対策としては同じ物をとりました。前回47号機の時に成功しまして、無事に技術的な課題といったところは実証する事ができたという事がありましたので、今回それが間違いではなかったという所をあらためて確認出来たということと、その確認を経る上で我々は他の意味でこの48号機が問題を起こしてはならないという想いも余計強くなってこの打上げに臨んで、しっかり成功に繋げることが出来たと思っています。

NHK・対策として事前の検査を強化することで見つける事が出来たもの、打上げに向けた準備や点検で気付いた知見はあったか。
徳永・前号機の47号機から同じ検査ならびに点検項目という事をやってまいりましたが、そこで新たな事が判った、やって良かったという事は無くて、自信を高める、確信を持つというという意味での点検、また検査ということを増やすことが出来たので、あらためて新しい事が判ったという事はございませんけども、この点検と確認は重要・有意義だったと考えています。

朝日新聞・さきほど情報収集衛星は現在5機体制とおっしゃいました。これは設計寿命を迎えてないものが5機という意味か。また配付された資料ではレーダ3号や4号などかなり前に打ち上げて設計寿命の5年を迎えているものも運用中としてカウントされているが、これは動く事が可能な場合は設計寿命を超えても動かすというスタンスという事で良いか。
三野・ご指摘のように10機体制に向けて取り組んでいる中の5機というものは、設計寿命とか運用見込み期間、これを超えていないもので今5機が構築されているという事でございます。目指している10機体制は当然設計寿命とか運用見込み期間以内で目指す事でございます。現在何機運用出来ているのか、設計寿命等を超えて運用出来ている機数という意味においては、今回の光学8号機を除いて10機運用できてございます。ご指摘のようにレーダ3号機などについては10年を超えて運用出来てございます。またそういった設計寿命等を超えて運用する衛星についても引き続き運用を行っていきたいと考えております。これは多額の予算をいただいて開発した衛星でございますし、また機数を沢山運用することについては我が国の安全保障上の情報収集体制、また危機管理の情報収集強化にも役立つものと考えています。

以上です。