観測ロケットS-520-33号機の機体公開と記者説明会

 2023年11月29日に観測ロケットS-520-33号機の機体公開と記者説明会が内之浦宇宙空間観測所で行われました。当初は11月24日に打ち上げ予定でしたが準備が整わないとして12月1日に変更されていました。しかし12月1日も気象条件が適さないとして、12月2日に変更したことがここで発表されています。
 (※一部敬称を省略させていただきます)

・登壇者
 JAXA宇宙科学研究所 宇宙機応用工学研究系 准教授 三田 信
 JAXA宇宙科学研究所 宇宙飛翔工学研究系 特任助教 永田 靖典
 JAXA宇宙科学研究所 宇宙機応用工学研究系 助教 福島 洋介
 JAXA研究開発部門 第四研究ユニット 研究領域上席 砂見 幸之
 JAXA宇宙科学研究所 学際科学研究系 教授 観測ロケット実験グループ グループ長 羽生 宏人

・観測ロケットS-520-33号機の打上げ延期について・その2(羽生)
 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)は、内之浦宇宙空間観測所からの観測ロケットS-520-33号機の打上げを2023年12月1日(金)に予定しておりましたが、打上げ当日の気象条件が適さないため、2023年12月2日(土)に延期することとしましたので、お知らせします。
 打上げ予定時刻は16:00(打上げ時間帯16:00~16:30(日本標準時))を予定しております。
 天候その他の理由で上記日時に打上げができないと見込まれる場合は速やかにお知らせします。

 観測ロケットは風の状況の影響を非常に受けますので、慎重に気象判断をしております。また今回、実験装置の一部は海の上に落としたあと回収する作業を予定していまして、そのオペレーションに必要な条件を勘案したところ12月2日の方がより適した条件であるとの気象予測等を踏まえまして判断をさせていただいた。12月1日の打上げということでご案内させていただいておりましたけども、大変申し訳ありません12月2日ということで予定をさせていただきたいと思いますのでどうぞよろしくお願い致します。

・観測ロケットS-520-33号機について(三田)

 今回、内之浦宇宙空間観測所から打ち上げられる観測ロケットS-520-33号機は、将来ロケットや衛星とか探査機に応用を目指した先進的な宇宙工学技術の実証実験を目的としまして、4つの実験機器を搭載して打ち上げます。一つ目が将来の大気圏の再突入技術の実証を行うインフレータブル型回収システムであるRATS-L、二つ目が展開型の構造を実証するインフレータブル伸展プラットフォームIEP、三つ目が実験機器のデータを効率よく収集して地上に下ろすPIデータ収集装置PDC、四つ目が小型で高性能な観測ロケット用航法センサNANA-Kaとなっています。

 1.インフレータブル型データ回収システム・RATS-L
  超小型の火星探査機や小型衛星の地球低軌道からの帰還機への適用に向けた大型のインフレータブル展開型エアロシェルの実証実験。

 2.インフレータブル伸展プラットフォーム実証実験・IEP
  気体の圧力で膨張し、長さ、表面積、体積が変化するインフレータブルな構造部材を使って、観測ロケット用の伸展プラットフォームを構築する実証実験。

 3.PIデータ収集装置・PDC
  機上のデータの取扱いを簡便にし、効率よくデータを送るためのシステム(PDC)を構築し、各種センサからのデータ収集/伝送実験を行う。

 4.観測ロケット用航法センサ・NANA-ka
 ロケットの飛行中の位置や速度を計測する航法センサと、自律飛行安全管制の計算ソフトの機能性能を実証確認する。
 ※ただし今回は機能の検証のみで、NANA-kaが飛行中断(指令破壊等)を作動させることは無い。

 (※搭載された機器の詳細についてはJAXAの資料を参照してください)

・質疑応答
NHK・何分後に高度何キロまで行くのか。
羽生・その日の気象条件にもよるが、概ね高度300kmを目指して飛行させます。到達までにはおおよそ5~6分と考えています。

南日本新聞・JAXAのネットワークへの不正アクセスが報じられたが、今回の延期との関係があるか。
羽生・特に実験を実施するにあたって影響は無いと考えておりまして、準備は順調に進んでいます。

南日本新聞・今回の観測ロケットには何も関係無いという事か。
羽生・(頷いて肯定)。

読売新聞・打上げから5~6分後に最高高度300kmを目指すとのことだが、何分後にどの辺りに着水するのか。
羽生・着水点は安全計画で立っているが、東南方向に打ち出す。正確な位置は風の影響で多少動くことがあるが、南東海上の陸地から300km離れたところに着水すると考えています。着水までは10分くらいでロケットの機体が着水する計画で、RATS-Lは遅れて40分くらいかかって降りてくる。実験全体が終わるまではRATS-Lが着水するまでの時間を読んで実行させていただく計画です。

フリーランス鳥嶋・IEPについて、これが実用化された後、観測ロケットからこういう物を展開させて使う需要と展望はどうか。
福島・実験には「プラットフォーム」という言葉が入っており、これはいろんな物を乗せる土台になるという意思の表れになっています。現時点ではこれのためというものは確定していない。私自身もこういったものがあれば次の提案をしたいものがあるくらいで、まだ皆さんぼんやりしたものだと思います。過去にこういったインフレータブルなプラットフォームで何かをした事例は殆ど無いと思います。観測ロケットは頻度も低く準備期間も短いので新しい需要が出てくるのではないかという期待も持っています。メインは2次元的に棒を広げますが、それを3次元的に展開させるとか、ドーム型にしてみるとかという事が出来ますので、アンテナのようなものとか、反射膜を広げるとなると似たものになります。数分もかからず展開して10分間の宇宙空間で何が出来るかというものを、これから手を上げるのを待ってみたいと思います。皆さん使い方が判らない場合は私がこういうものとか、PDCの三田先生がカメラでデータをとるとか、そういったものを見せるといろんな提案がいろんな所から来ますので、そういうのを待ってみたい。
羽生・観測ロケットは宇宙空間を観測するニーズもございますので、高い高度でのプラズマ領域の観測とか、そういった研究者達のニーズに対して、例えばロケットから離れた位置で観測したいといったニーズに応えられる技術でもあると考えています。そういった隠れたニーズは十分あると思っています。

鹿児島テレビ・4つの機器で4つの実験という言い方で良いか。
羽生・(頷いて肯定)。

鹿児島テレビ・土曜日なので、子供達などにこういう風に見えるといった呼びかけができるか。
羽生・我々のロケットは海の方に飛んでいってしまうことと速い。ぜひ近いところに来ていただいて、近いところで見ていただけるといいのかなと思います。意図して土曜になった訳ではないが、気象条件によりそうなったのであればぜひ楽しんでいただけたらと思います。

機体公開時の質問より。
柴田.展開物が2つあるが、同時に展開するのか、それとも順序があるか。
A.先にインフレータブルエアロシェルを機体のスピン(~1Hz)を利用して展開し分離、そのあと機体のスピンを止めてからインフレータブル伸展プラットフォームをガス圧で展開する。

観測ロケットS-520-33号機

インフレータブルエアロシェル模型

頭胴部模型(上の方の写真は担当した箇所を指してもらっています)

実際の頭胴部。

以上です。