H3ロケット試験機2号機打上げ前プレスブリーフィング

 2024年2月13日午後に種子島宇宙センターの竹崎観望台で行われたH3ロケット試験機2号機の打上げ前プレスブリーフィングです。なお当初は2月15日の打ち上げ予定でしたが、悪天候が予想されるため延期され、このブリーフィングの翌日に2月17日打ち上げ予定と新たに発表されています。また時間についても翌々日に2024年2月17日の午前9時22分55秒(JST)と発表されました。
 (※一部敬称を省略させていただきます)

・登壇者
宇宙輸送技術部門 H3 プロジェクトチーム プロジェクトマネージャ 岡田 匡史
三菱重工業株式会社 防衛・宇宙セグメント 宇宙事業部 H3 プロジェクトマネージャー 新津 真

・延期について(岡田)
 ちょうど1年前にこの場で皆さんに同じようにブリーフィングをさせていただいた事を思い出しながらお話をしております。本日は私の方からは2点ご説明したいと思っていまして、まず1点目はプレスリリースです。その後に準備状況についてご説明したいと思います。

 JAXAは種子島宇宙センターからH3ロケット試験機2号機の打上げを2月15日に予定しておりましたが、打上げ当日の天候の悪化が予想されるために、打上げを延期することといたしました。新たな打上げ日につきましては、決定し次第皆様にお知らせしたいと思います。

 出だしがこういう状況でありますけども、ロケットの準備は計画通りここまで進めてこれまして、あとは天気の良いところを狙って打上げたいという思いで、11時から会議を行いましてそこで判断をした結果を本日2時に皆様にお知らせしました。

・準備状況について(岡田)(※主な物を抜粋。正確にはJAXAの配付資料を参照下さい)
 そういう訳で打ち上げ日ははっきり決まっている訳ではありませんが、その前提で2号機の準備状況について資料でご説明したいと思います。

 ・1号機につきましては先進光学衛星(ALOS-3)を搭載して打ち上げましたが、その失敗を受けまして、衛星喪失リスクに伴う影響を考慮することが1点。それから早期のフライト実証により、できるだけ今後の打上げ計画への影響を最小化することをポイントとしまして、1号機1のミッション解析の結果を最大限活用できることをポイントにいたしました。そのため機体形態は1号機と同じH3-22Sとし、LE-9エンジン2基、固体ロケットブースタ2本、ショートフェアリングの基本形態で1号機と同じとしまして、ペイロードにはALOS-3と同等の質量特性をもつ性能確認用ペイロードVEP-4を搭載し、軌道投入、我々はSECO1と良く呼んでおりますが、までの飛行経路は1号機と同様としました。これによりまして、ミッション解析にかかる時間を最短にして今回の打上げに臨みたいと考えておりました。
 ・メインミッションはまずH3ロケットの軌道投入の実現です。飛行実証することによりましてH3ロケット開発の妥当性を検証する。また、この機会に小型副衛星2基に乗っていただける事になりましたので、この小型副衛星に軌道投入の機会を提供することも一つの目的であります。小型副衛星につきましてはCE-SAT-IEとTIRSATです。
 ・1号機の失敗の原因と考えました2段エンジンの点火器(エキサイタ)の再搭載、もう一つ失敗の原因と考えている2段の推進系コントローラの改修を行ったものへの交換、こういった事を行った。

 ・発射台への追加装置(機体把持装置)について (※注:今回は使用しない)
 ロケットに燃料が入っていない状態で風が吹くと影響を比較的受けやすいということで、準備作業が進められるようにということで、開発の中でデータをとってまいりまして、風の影響を受けにくくするために、特に燃料が充填されていない時を中心に、機体移動の時には前倣えのように装置が出て来ましてロケットを抱え込みまして機体移動をして燃料を充填する。燃料充填が終わりますと退避させて打ち上げを待つ、こういう操作を出来るように致しました。今回の機体移動のときに一部の方にはご覧いただけると思いますのであらかじめご説明しておきます。

・質疑応答
産経新聞・これまでの1年間、どういう気持ちで過ごされたか。その中で様々な原因究明と対策をとられたことへの手応え。打上に向けての意気込み。
岡田・1年を新津さんと過ごしてきたが、かなり失敗を乗り越えるところが、特に前半が物凄くしんどかった。新津さんとは感覚が違うかもしれないが、私は最初の4ヶ月くらいが出口見えなくてどうしようという思いでおりましたけども、徐々に霧が晴れまして、2号機の打上げに向かえるという気持ちになってからは本当に全体が1号機で失ってしまったものを少しでも挽回したいという思いで、できるだけ早く2号機の打上げを成功させたいという思いが加速して頑張ってきました。激動の1年だったなという思いです。原因究明と対策の手応えはあります。3つのシナリオに絞りまして、そこについては納得がいくまで三菱さんと議論をして、納得のいく対策をとりましたので、私としては手応えはあったと思いますが、こればかりは100%という物ではないので、最後までそこは慎重に進めたいと思っています。意気込みですけども、遂にここまで来たかという思いでおりまして、ここから先は打上げ前日、それから当日の作業になります。ここは三菱さんのプロフェッショナルを信じていまして、自分自身としては神経を研ぎ澄ませて打上げの瞬間を待ちたいと思っています。

産経新聞・期日が未定だが打上げが待ち遠しいか。
岡田・正直、早く成功させてすっきりしたいという思いはあります。
新津・大体岡田さんが語っていただいて、ほぼ同じ気持ちです。やはり1年間の始めの1~2ヶ月はやる事がいろいろあって、この辺りが怪しいなどいろんな事がある。2ヶ月くらい経つと大体一通り一周してきて、考えた事が問題無かった、次をどうしようかというフェーズが5月の連休明けくらいにありまして、そこでもう一回今までやってきた事に見落としが無いか、我々がまだ気付いていないメカニズムが無いかとか、その辺りをJAXAさんや専門家の人も入れながら集中的な議論をやるような事もありまして、そういう所でここらを深掘りしようということでいろんな試験を追加でやらせていただいて、そういう中からやはりこういう事象はあり得るというところを徐々に絞り込んで最終的に原因究明をまとめたという経緯があります。そういった意味でやはり連休明けから8月までに2~3ヶ月が我々としては厳しいフェーズだった。原因究明に関しては、我々としてもできる限りの試験はやりきったと思っていますので、そういう点においては、かなり確度は高まったという意味で自信を持って2号機に臨むことができると考えています。前回の打上げから1年、ずっともやもやした気持ちを抱えてきたので、我々としても早く成功させて、応援してくださる皆さんの声に応えたいと思います。

MBC・試験機1号機の当初の打上げも2月15日に予定されていたが、私はその辺りの巡り合わせを感じているがいかがでしょうか。
岡田・全く同じ気持ちです。天気による延期というのもまたありで、1年前と同じようになるとすれば2月の17日になる訳ですが、そこは判りません。もしそうなれば今度こそ一発で打ち上げたいなと思います。

フリーランス大塚・前回の説明会でタイプ1エンジンとタイプ1Aエンジンは外から見ても違いが判らないとの話だったが、どちら側がタイプ1Aなのか。
岡田・そういう目で見ていなかった。すぐ確認できるのでこの回の中でお答えします。
岡田・VABに近い側のエンジンがタイプ1Aです。(※後の回答より)

フリーランス大塚・今回、機体把持装置がついているとのことだが、把持するときどういう風な動きになるのか。
新津・ではデモンストレーションを行います。(※身振りによる説明のため概要を記述)
  ※人体で例えると手を下げた直立状態が装置の退避状態で、使う時は前方に両腕を上げて、手にあたるハンドと呼ばれる部分が下がってロックする2アクション。

フリーランス大塚・ハンドだけ動いてアームは内側にはいかないのか。
新津・そうです。

フリーランス大塚・今回使わない理由は何か。
岡田・形にはなっているがまだ完成していない。これからシステム試験などを行い、使えるというところまで確認してから実用に持ち込みたい。主にH3の24型に間に合わせるのが大事なポイントです。それとハンドを倒すと説明したが、最後にロケットを掴む時には中に消防車のホースのようなものが中に装着されていて、それを膨らませる事で(実際は固いが)柔らかくロケットを把持するのが最後のアクションです。

フリーランス林・今の気象情報からすると16日に機体移動、17日に打上げの可能性があるということか。その場合、発表はいつのタイミングになるのか。
岡田・天気のことですので、まだ何とも決まっていないとしか申し上げられない。ですので回答はこのようにしたいと思うのですが、これから恐らく毎日天候判断というものをしていきます。おそらくは午前中に天候判断をします。その段階で確度が高い、天への道が開けていれば、ここで打ち上げたいという事で関係機関と調整しまして、出来るだけ決まり次第皆様にはプレスリリースという形でお伝えしたいと考えています。早速、明日には天候判断をしたいと考えています。

朝日新聞・どこの段階をもって打上げの成功と判断するのか。
岡田・毎回申し訳ない答えになってしまうが、成功の線引きが難しい。今回のメインのミッションは軌道投入であると、ここだけははっきり申し上げられます。では軌道投入したときに、どのぐらいの精度で入ればいいのか、そこが思ったより大きくずれたときにどう判断するのか、こういったところは恐らく結果をもって評価ができるかどうかを含めて、場合によってはその時には判断できない事もあると思う。ですのでなかなか説明がクリアでなく申し訳ないが、まずは軌道投入というところをしっかりやり遂げたいと思っていますし、もちろん乗っていただいた小型副衛星もぜひ軌道に届けたいと思っています。あるいはその後に続きます制御再突入の実証を行いたいということもありますけども、一連の計画が全て順調でないと成功と言えないかというと、必ずしもそうでは無いと思っています。

朝日新聞・軌道投入はSECO1(第2段エンジン第1回燃焼停止)だが、そのあと小型副衛星2基の分離があって、そのあとVEP-4の分離があると思うが、仮にSECO1までは正常で、そのあと衛星が分離出来ない場合でも打上げ成功という判断になるのか、それとも状況次第か。
岡田・状況次第ですがなり得ると思います。ただJAXAから成功か失敗かはたぶんお伝えしないのではないかと思います。軌道投入が出来たかどうか、衛星が分離出来たかをしっかりとお伝えしたいと思います。

朝日新聞・軌道投入ができたかどうかもリアルタイムで伝えられるかもしれないし、打ち上げ後の記者会見で説明するかもしれないし、そのタイミングも確認出来次第ということか。
岡田・そうです。すぐに確認できるイベントと、後で確認するイベントというものもありますし、全部がリアルタイムで確認出来るものではないので、確認が出来たものから順次お伝えする事になると思います。

ニッポン放送・打上げ日がずれたことにより、打上げ時間帯はずれていかないのか。
岡田・ずれないです。

ニッポン放送・時間がずれないのはいつも同じなのか。
岡田・いえ、ミッションによって違いがあり、今回に関してはとお考えいただければと思います。

ニッポン放送・日時がずれることを見越してこのような幅を持たせたということか。
岡田・そうではなくて、このミッションに関しては日時がずれても固定で設定できる。ずれていくと太陽との関係などいろいろな事でどうしてもずれてしまうミッションは他にはあると思います。

南日本新聞・今回、H3固有の原因対策を実証するのは初めてだが、それについてどう思うか。H-IIAが残り2機となる中でのH3の2号機打上げとなるが、それを踏まえての思い。
岡田・おっしゃる通りH3固有の原因についての対策は今回フライトでは初めて確認することになるが、地上での確認は出来るところまでやりました。出来るところまでというのは三菱重工さんの工場の中の真空が模擬できる大きな試験装置の中に、第2段機体の肝心な部分を全部入れて、真空状態にして実際に動作させるという事までしまして、今回手を加えたところが少なくとも悪さをしないというような事までは確認が出来ております。やれるだけの事をやって打ち上げに臨むと言う事が言えると思います。それからH-IIAがあと2機というのは、H3を早く日本の宇宙計画に使っていただけなければならないとひしひしと感じていますし、そもそものH3の計画の中で、H-IIAとオーバーラップして開発計画をセットさせていただいたところは本当に感謝しています。H-IIAが無いと大変な事になっていましたので、H-IIAがあって良かったという思い、あと2機でうまくH3にバトンを繋がないといけないという思いでおります。

NHK・天候判断の結果は午前中の何時位か。
岡田・発表はその日の午前中ではなくて、午前中にJAXAの中で判断出来たとしてもそれは午後になると思います。時間は各方面との調整が出来次第で決まります。

読売新聞・VEP-4について、ALOS-3と同等の質量特性とあるが、今回は小型副衛星を2基搭載しているがその重量は切り離した後なので関係しないという事で良いか。
岡田・小型副衛星とVEP-4とトータルでALOS-3とほぼ同等の質量です。
新津・SECOまでの経路を同じものを使いたいという趣旨でしたので、そこまでということでVEP-4と小型副衛星2基がALOS-3と同じになるように調整しています。
岡田・小型衛星を搭載するための搭載構造というものもそれなりの質量がありますので、それらを全部トータルしてという事です。

読売新聞・フェアリングの中を含め全ての重量としてALOS-3と同じということか。
新津・そうです。

共同通信・H3は世界のロケット市場で受注を獲得することが目標のひとつと伺っている。現在のロケット市場をどういう風に分析していて、その中でH3がどう役割を発揮できるか。
岡田・自分の考えを話しますが、H3は10年前に国際競争力を持ったロケットにというコンセプトでスタートして、この10年間で大きく世界の状況が変化しているのは事実です。非常に競争力の高いロケットも既に運用が進んでいますし、またミッションもだいぶ変わってきている。そういう中でも早くH3ロケットを完成させて、大きく変わる市場にフィットさせるような色々な活動を引き続き行っていかなければならないと思っています。そういう中で三菱重工さんが潜在的なカスタマーの皆さんに非常に誠実に、例えば今回の1号機打上げ失敗からの復活の状況などを恐らく誠実に対応されていると思いますので、そういった三菱重工さんがこれまで培われてきたH-IIAロケットの信用度といったものを強みとして、あるいは信頼度という数字的な事で言うと、オンタイム打上げという、狙った日にちゃんと打上げをするといったところを強みにして、これから国際市場の中で戦っていただけるのではないかと思っています。ロケットというのは、ひとつのロケットだけで全ての輸送が出来るという訳ではありませんし、宇宙利用が非常に活性化している中なのでH3ロケットの果たす役割というのは、これから先非常に大きいのではないかと思いますが、そこには努力が必要だと思っています。
新津・今の商業市場ということで、やはりコンステレーションのミッションが非常に増えてきている。潜在的にどちらかというとロケットの供給が不足側という状況で、我々の方にもいろんなお客さんから引き合いをいただいているという状況でございます。この時期にこういうミッションがあるという話をかなりいただいていますので、1日も早く2号機を成功させた上で、そういったお客様に応えられるように進めて行けたらと考えています。

読売新聞・H3の需要だが、海外のロケット事業者、例えばSpaceXのFalcon9と比べても需要が見込まれると考えられるのか。
新津・純粋な価格面という事でいくと我々が常に優位という訳にはいかないところがございます。具体的な数字はお答えしかねるところもあるのですが、ただ価格以外の要素で我々としての独自の提案をさせていただく中でSpaceXも含めて我々を選んでいただける余地があると考えています。

読売新聞・資料11頁の機体価格について、約50億円を目指すと書かれているが、ここで言う機体価格というのは、いわゆる荷主が1回辺りで支払う打上げ価格を指すのか、打上げ事業者がロケット1本を打ち上げる場合に必要になる費用を指すのか。
岡田・どちらかと言われるとでもない気がする。たとえ話で説明しますが、まずこれはH3の30Sという最もシンプルなライトバージョンでの話というのがひとつです。それからこの50億円という
数字は開発当初に目標にしている数字です。この50億円は車で言うと車両本体価格のようなイメージだと思っていただいて、車を購入する時には車両本体価格というものがあって、買いたい人がオプションを付けたり保険をかけたり色々な諸費用があって、かつディーラーさんと値引き交渉をして最後にプライスが決まるイメージだが、それに近いイメージで車両本体価格と思っていただければと思います。では車両本体価格はどういう計り方をするかというと、これはだいぶ前に設定しましたので、ある時点での価格にしないと物価が非常に大きく変動する、あるいは為替レートも大きく変わっていくという中で、常に50億円かというとそれは絶対にあり得ない話だと思う。ある種の指標がありまして、そこにいつも照らし合わせて当時の目標がちゃんと満たせているかというのをいつも計っています。その価格が50億というものです。

NHK・打上げ時にアナウンスをされているが、今回はどの辺りまでされるのか。
岡田・CE-SAT-IE分離までです。

NHK・VEP-4などに関しては記者会見で説明していただけるのか。
岡田・その時の状況で、データがいつ判るかいろいろありそうで、VEP-4分離は6494秒とだいぶ先ですので、記者会見のどこかで情報として入ってくるのではないかと思っています。

NHK・打ち上げ日の天候が悪化するとのことでの延期だが、打上げ時間帯に雷の発生が予想される事が主な理由か。
岡田・ここは何か1点だとぱっと説明ができるが、いくつかの要素があって総合的な判断とご理解いただきたいと思います。いくつかの要素というのを申し上げると、15日に打ち上げようとしますと14日の15時くらいから機体移動を始める訳ですが、(週間予報では)雷のマークがついています。これは射場において発雷すると作業ができなくなる、危険な状態になるということで一つ問題である。それから風が強いです。移動中の高所作業などにも危険を伴う。それから雲が厚いです。ある種の雲がそこにあるとロケットが飛翔中に雷が落ちる可能性がある。こういった事を総合的に実施責任者が判断した結果です。

フリーランス秋山・海外の衛星事業者から引き合いが来ているという話があり、ライドシェアの需要も高まっている点について、小型衛星を放出する機構が必要になるが、プレスキットに専用搭載構造を準備という文言があるので、その準備開発状況はどうなっているか。既に出来つつあるのか。
新津・小型については今回2号機に搭載しますように、PSS(衛星搭載アダプタ)の側面に100kgぐらいまでの衛星を載せられるような搭載構造、これは既に開発が完了しておりますので、お客様がいれば載せる事は可能となっています。それ以外に今の商業市場ではいろんなタイプのライドシェアであったり搭載構造の話があったりしますが、そちらについてはまだ決まったものとか開発中とかそこまで至っていません。今、いろんな可能性のある構造とか載り方について検討を進めている状況です。

フリーランス秋山・今回のCE-SAT-IEとTIRSATのために斜めの部分に搭載・分離機構を取り付けたという理解で良いか。
新津・資料15頁にフェアリング内の図があり、側面に橋渡しをする形で搭載構造をつけて、主衛星と干渉しない限りこういった形での搭載が可能という事になっています。

フリーランス秋山・今までのピギーバックのようなものについては対応可能になっているという理解で良いか。
新津・はい。

時事通信・H3の開発の早い段階からJAXAと三菱重工の二人三脚で進められてきたと思うが、今回の約1年という期間で原因を究明し、対策を打ち、リターントゥフライトに繋げたことに関して、パートナーシップというものがどうところで強みになったか。
岡田・JAXAと三菱重工は違う組織ですし、国の研究開発機関という立場と民間の製造メーカーという立場で違うところがあるが、目指す方向はこれまでも一緒だと思っていました。その中で微妙な違いがあればよく話をして、お互いの違いを理解し合うという事で、価値観の違いはお互い理解し合いながらやってきた。それはそれで非常に良かったと思っています。この1年に関して言うと本当に1日も早く2号機を成功させたいという思い、ここはもうばっちり同じ気持ちで進めてきたと思っています。そうなるといろいろな事がイコールパートナーとして出来る面もありまして、例えばお互い作業を分担して、お互いやれるところをやって、それを持ち寄って、結果を突き合わせてみましょうよという事で、何度もそれを繰り返してきた中で、我々は三菱重工さんの出して下さった結果というのをそのまま受け止められる状況にありましたし、我々の出した結果を三菱重工さんにしっかり評価していただけたという非常にいい関係がこの1年続いた。苦しい中でも続いたなと思ってます。
新津・岡田さんのおっしゃる通りだと思います。平時であれば役割分担のそれぞれの守備範囲があるが、この1年間に関して言えば正にワンチームということで、立場の違いを超えて、例えばJAXAさんの方で試験をやっていただいたりとか、JAXAさんの有識者にも入っていただいて、みんなフラットな形でいろんな議論をして技術的な検討を進めて、それで結論をまとめたという事で、そういう意味でこの1年間は密度の濃い一緒になった活動が出来たと考えています。

時事通信・今回、タイプ1Aエンジンの実証に成功した場合、最終的にはタイプ2に繋げていくと思うが、H3ロケットのバックオーダーというか打上げなければならない衛星があって切り替えのタイミングが難しいと思うが、暫くはタイプ1Aを使い続けることになるのか。
岡田・まだ決まったところは無いです。なので早くタイプ2エンジンを開発完了したいという思いでおります。LE-9エンジンそのものは非常に完成度が高まってきていて、タイプ2はさらに磨きをかけるという取り組み、より高性能にしていく取り組みでありますので変な妥協はしない方がいいと思います。納得のいくエンジンに仕上がったところでタイプ2に切り替えるべきだと私は思っています。ただタイプ1Aとタイプ2で燃費にあたるISPが違うなどがありますので、能力的にタイプ2を必要とするミッションも今後出てくる訳ですので、そういったところは外さずに、納得のいくところでタイプ1Aとタイプ2を切り替えてゆく。難しいのはタイプ1Aを作り続けながらタイプ2に切り替えるのは、タイプ1Aは何機作れば良いか、これは凄く難しい話で、ですから開発している状況と製造している状況とを常に突き合わせながら無駄なくシームレスにタイプ2に繋げていく必要があると思っています。

産経新聞・打ち上げ日について天候次第であるが、天候が整えば早ければ16日に機体移動、17日打上げを目指すという理解で良いか。
岡田・難しい質問だが、毎日天候判断をするので、15日機体移動をしますかと聞かれると天気を見ると微妙ですねとなりますので、毎日天候判断をしながら本当にここを狙うべきだという合意が出来たところを狙いたいと思います。その決定はJAXAの中の実施責任者が最終判断をして、JAXAの中で決めが入って速やかに関係機関などと調整して皆様にご案内するという段取りですので、日々お待ちいただけないかと思います。

産経新聞・打上げ時間は資料ではウインドウになっているが、ターゲットは9時22分55秒であって、そこからはうまくいかなければ次を狙うということで、ターゲットは9時22分55秒という理解で良いか。
岡田・これまでも打上げの時間帯というのは都度最初に狙う時間とその幅は併せて案内していたと思います。もちろんピンポイントで打上げなけれはならないミッションもありますけども、幅をもったミッションもあります。今回に関して言いますと、小型副衛星と主衛星がVEP-4で打上げウインドウがあまり影響が無い組み合わせという事もあり比較的大きな幅で1日狙えることになっています。確定ではないが何時何分の打上げをしますという案内を出した上で、予備時間というか1日の中でこの時間帯の中で打ち上げる可能性がありますという案内を最後にして打上げに臨むことになりますので、狙いは9時22分55秒に限った訳ではないのですが、最後にご案内する時にはそこをお話します。

産経新聞・それは直前になるのか。
岡田・そうです。

産経新聞・現時点で9時22分55秒に打上げられるという書き方はしてはいけないのか。
岡田・そうですね。
企画主任・打上げ時刻につきましては2日前にプレスリリースとしてあらためて最初に狙う時間を公表することにしております。

JSTサイエンスポータル・打上げ時に(竹崎展望台)で聞こえるアナウンスは、今回はCE-SAT-IEの分離までなのか。
岡田・その通り。JAXAからの放送はCS-SAT-IE分離までの予定です。

JSTサイエンスポータル・これまでは衛星分離までアナウンスが行われているが、それでいくとVEP-4分離まで聞こえても良さそうと思うが、それをしない理由は何か。
岡田・リアルタイムで伝えられる範囲を超えているのが一つの理由です。地球周回後のシーケンスに関しては飛行実証の一環で軌道再突入やVEP-4の分離もその後にミッションがあるものではありませんし、これはデータとしてJAXAが得られた情報を後ほどどこかのタイミングでお伝えすると考えています。

JSTサイエンスポータル・TIRSATやVEP-4に関してはJAXAで情報を整えた上で打上げ経過記者会見で結果が公表される、そこには間に合うだろうというということか。
岡田・そうです。オペレーションがいろいろあります。得られたデータを処理するなどいろいろな時間を含めて時間読みをしておりますが、判明したところで出来るだけ(会見で)説明できればと思っています。まずはCE-SAT-IEの分離までを注目していだたければと思います。

以上です。