先進レーダ衛星「だいち4号」(ALOS-4)/H3ロケット3号機打上げ経過記者会見

 H3ロケット3号機は2024年7月1日打ち上げられ、搭載していた先進レーダ衛星「だいち4号」(ALOS-4)を正常に分離しました。
この打上げ後に種子島宇宙センターの竹崎展望台で記者会見が開催されています。
(※一部敬称を省略させていただきます。また聞き取れなかったところなどを省略しています。事情により掲載が遅れました)

・登壇者(第1部)
 文部科学省 研究開発局審議官 永井 雅規
 内閣府 宇宙開発戦略推進事務局審議官 渡邉 淳
 三菱電機株式会社 鎌倉製作所 副所長 荒木 慎介
 三菱重工業株式会社 防衛・宇宙セグメント 宇宙事業部長 五十嵐 巖
 JAXA理事長 山川 宏

・打上げ結果の報告(山川)
 先進レーダ衛星「だいち4号」及びH3ロケット3号機の打上げ結果についてご報告致します。本日12時6分42秒に「だいち4号」を搭載したH3ロケット3号機を打ち上げました。ロケットは計画通りに飛行し、打上げから約16分34秒後に「だいち4号」を分離したことを確認いたしました。「だいち4号」におきましては、現在太陽電池パドルの展開、太陽捕捉制御が行われ、衛星状態が正常であることが確認できております。また軌道上デブリ低減のため衛星分離後に実施しましたロケット第2段機体の制御再突入についても計画通り実施できたと報告を受けています。
 まず始めに、今回の打上げに際しましては「だいち4号」及びH3ロケット3号機の両プロジェクトに携わる三菱電機株式会社様、三菱重工株式会社様を始めとする多くの企業、機関の皆様のご尽力をいただくと共に、内閣府様、文部科学省様など政府関係機関、そして種子島を始め地元地域の皆様や国民の皆様より多大なるご協力とご支援をいただきました。両プロジェクトチームを代表いたしまして、皆様より賜りましたご尽力に敬意を表しますとともに、深く御礼を申し上げます。
 今回のペイロードであります「だいち4号」は、本日仕事場となります宇宙空間に投入されミッションをスタートいたしました。これまでの「だいち」シリーズ衛星による合成開口レーダミッションを引き継ぎ、日本が長年培ってきた合成開口レーダの強みを活かして、自然災害等での迅速な対応はもとより、地殻や地盤変動、火山活動等などの異変の早期発見に繋げ、また地球規模の課題であります森林資源や農作物資源の把握などに貢献をしてまいります。そして「だいち」シリーズによる観測・解析の継続性・連続性を確保し、成果の早期創出、新たな利用開拓を目指すためにも、ユーザーの皆様に出来る限り早く観測データを配付できるようJAXA及び運用関係者が一丸となりあらためて気を引き締めて、今後の運用においても着実に取り組んでまいります。またH3ロケットにおきましても、日本の基幹ロケット、宇宙輸送システムとして自立性の維持、国際競争力の確保という目標の実現に向けて、引き続き堅実な開発を果たしてまいります。
 「だいち4号」及びH3ロケット3号機の飛行状況の詳細につきましては、この後の記者会見の第2部におきまして、それぞれのプロジェクトマネージャよりご報告を致します。本日こうしてH3ロケット3号機の打上げ結果と、「だいち4号」のミッションスタートについてご報告をできましたことを私としても大変安堵しているところでございます。
 最後になりますがあらためまして皆様より賜りましたご尽力に感謝を申し上げます。
 以上でございます。ありがとうございました。

・登壇者挨拶(永井)
 打上げが成功致しまして現在全て順調に進んでいるという事で文部科学省としても大変嬉しく思っているところでございます。私からは盛山文部科学大臣からの談話を預かってございますので読み上げさせていただきます。
 『本日、H3ロケット3号機の打上げに成功し、搭載していた先進レーダ衛星ALOSー4、通称「だいち4号」が所定の軌道に投入されたことを確認いたしました。
 本年2月の試験機2号機に続いてのH3ロケットの打上げ成功であり、着実に打上げ実績を積み重ねていることを喜ばしく思っております。
 今回打ち上げた「だいち4号」は、「だいち2号」の後継機として、超広域・高頻度での高精度な地殻・地盤変動観測等を実現するものです。今後、「だいち4号」が、災害発生時の状況把握や、地殻変動に関する異変の早期発見等に貢献することを期待しております。
 文部科学省としては、H3ロケットの継続的な運用に向け、技術の蓄積・成熟を図り、実績を着実に積み重ねることで、我が国の宇宙活動の自立性を確保するとともに、国際競争力の強化や様々な宇宙開発利用に貢献できるよう、引き続き、関係機関とともに尽力してまいります。(令和6年7月1日 文部科学大臣 盛山 正仁)』
 本日は誠にありがとうございました。

・登壇者挨拶(渡邉)
 宇宙の自立性の確保という意味では輸送手段は重要だと考えておりまして、基幹ロケットのH3ロケットの成功は非常に意義深いと思っております。またリモートセンシング衛星も防災、地球規模課題の解決に非常に重要でございまして、今回ALOS-2、様々な成果を上げていますが、それに続いてALOS-4の軌道投入に成功したということは非常に重要だと思っておりますし、私といたしましてはこの打ち上げ成功と軌道投入に成功したことに非常に安堵しているという状況でございます。いま、盛山文部科学大臣からの談話について紹介がありましたけども、高市宇宙政策担当大臣も談話を発表しておりますので、その内容について紹介をさせていただきます。
 『本日、H3ロケット3号機により、先進レーダ衛星「だいち4号」(ALOS-4)が打ち上げられました。
 H3ロケットは、我が国の宇宙活動の自立性確保と国際競争力強化のために極めて重要な、新たな基幹ロケットです。
 本年2月の試験機2号機の打上げに続く、今回の連続成功により、民間企業を含めた国内外の打上げ需要も取り込んだH3ロケットの活用が促進され、我が国の宇宙産業の一層の発展につながることを期待しております。
 御関係の皆様のご尽力に敬意を表し、感謝申し上げます。
 先進レーダ衛星「だいち4号」(ALOS-4)は、だいち2号の性能と機能を強化した後継機に当たります。先進レーダ衛星を含めた地球観測衛星の体制整備によって、災害対応や幅広い産業の振興に貢献することを期待します。
 内閣府特命担当大臣(宇宙政策)として、今後とも、我が国の宇宙開発利用を精力的に進めてまいります。 令和6年7月1日 内閣府特命担当大臣(宇宙政策) 高市早苗』
 以上でございます。

・登壇者挨拶(荒木)
 まず最初にH3ロケット3号機に携わりましたJAXA様、それから三菱重工様をはじめとする関係者の方々、打上げ成功おめでとうございます。あと、我々の衛星ALOS-4を所定の軌道に投入していただきましてありがとうございます。我々衛星としてはこれからが本番だと考えてございます。データを待ち望まれている方々に確実にお届けできるように気を引き締めて運用作業等を従事してまいりたいと思います。本日はどうもありがとうございました。

・登壇者挨拶(五十嵐)
 今日、ALOS-4を無事に所定の軌道に、所定の時刻に、打ち上げ成功と相成りました。この成功に至るまでにはJAXAさんは勿論のこと、いろいろな関係の機関の方々、それからロケットを作り上げるに至るに必要なパートナー企業の方々、尽力がございました。それから設備ですね。設備というのは射場の設備もありますし、いろんな製造の設備もあります。そういった所に携わっておられる企業の方々、それからその運用をやっておられる方々、ならびに地元の方々の応援、こういったところがあってこの成功があるんだなという風に思っております。大変感謝いたしております。この衛星ですね、クリティカルフェーズも今順調に進んでいると判っております。第2部の方かなと思いますが、だと伺っております。三菱重工も今回携わりましたロケットの打上げについては、所定の軌道に人工衛星を届けるという所までなんですが、これからが「だいち4号」の本番になってくるかなと思います。いろんな観測データを、いろんな所にお届けして、それから地球規模のいろんな課題を解決できることに我々三菱重工としても貢献できるというところに誇りを持ってございます。本日、どうもありがとうございます。

・質疑応答
KYT・今回の打上げ成功で2機連続となります。今回の成功により着実に信頼性が高まってきたと思うが、あらためて今後の目標など政策的な部分を伺いたい。
山川・今の質問はH3に関するものだと思っておりますけども、H3ロケットの目的は冒頭で申し上げた通り、日本の宇宙へのアクセスに関する自立性の維持確保、それから同時に国際競争力を確保していく、この2点にある訳ですけど、それに向かって非常に大きなステップだった、大きな一歩だったという風に考えております。2機連続成功という事で、国内外からより信頼感を持って見られるのではないかと期待しているところではありますけども、JAXAとしては引き続き今回のデータも予断を持って見ることなく、開発のスタートの時から蓄積してきた様々な知見と経験に基づいてあらためてデータをちゃんと見直した上で次号機以降に反映していく、そういったことを着実にやっていきたいと思っております。ですので今回の打上げというのは、私個人としては非常に安堵とております。ただ着実に将来に繋げていくためには、改めて初心に戻って取り組んで行く必要があるのかなと、そういう風に思っています。

KYT・まだ気が抜けないということか。
山川・もちろん、その通りです。

NHK・今回は初めての実用衛星を搭載しての成功だったが、世界を見るとライバルが多く競争が激化している点を踏まえて、今回の成功の意義、位置付けを教えて欲しい。
山川・諸外国におきましても非常に宇宙輸送、つまり宇宙にアクセスするという一番宇宙活動にとって基本的なところ、そこをそれぞれの国が自立的にそういった能力を得るということ、あるいはビジネス化するという観点で非常に厳しい競争が続いている。一方で様々な国が今年に入ってもいわゆる初号機のロケットを打ち上げるというフェーズに入っていまして、ですので非常に良いタイミングでH3ロケットとしても2号機の成功に続いて3号機を成功裏に打ち上げる事が出来たという事で、そういった国々に対して競争力を確保する良いポジションにいるのではないかと私は思っております。ただ先程の質問にもありました通り、とにかく初心に戻ってしっかり進めていく事をやった上で、その先に展開されていくのかなと、そういう風に思っています。

NHK・今回、連続成功ということで、商業化に向けて、1、2号機に比べて今回どれだけステップアップできたのか。技術面、コスト面でスロットリングや機体移動を早めたりいろいろな努力をされているが、どれくらいステップアップできて、目標までどれくらいのところに来ているのか。
五十嵐・どれくらいの所かという事だが、商業化に向けてという事ですが、まずH3ロケットというのは日本の基幹ロケットとして安定してきちんと大事な衛星を打上げていかなければならないというのはございます。一方で商業的な所で見ますと、結局お客様というのはどれだけ成功しているのか、どれだけフライトプルーブなのかという所に着目される訳でございます。その意味で1機の成功だったのが2機の成功になったというのは大きな進歩・進展でございまして、これから更に引き合いであるとか注目というのは出てくると思いますので、まずそこを頑張っていきたいと思います。それからコストでありますとか、それからどれだけスムーズに生産ができるのかといったところ、更にはいろんな技術的な所の確認というのがまだまだ続いてございます。これらというのはまだ3機というフェーズでありますので、いろんな新しい事も判りながら進めているという所です。コスト的な所というのはなかなか判らないのですけども、このH3の3号機というのはH3のリターン・トゥ・フライトと同時に作っていたというような所もありますし、それからH-IIAとまだ混在しているというような所もあって、整流化というところにまだまだ課題があると思っていますけども、やっていく中ではそれなりにこれはいけているのではないかと、いろんな所で手応えというものを感じておりますので、是非これを続けていきたいという風に思っております。とにかく打上げ成功を積み重ねてお客様の信頼を得るという事を一つ一つやっていきたいという風に思っています。

南日本新聞・宇宙輸送が国際的に競争が激しくなっている中で、ライバルも多いと思うが、その中でH3は世界をリードする目標を掲げていると思うが、その中でもまだ実現できていない取り組みもあると思うが、今後の開発スケジュールとか、どういう風に進めていくかを伺いたい。
山川・まずは現在の形態で着実に成功を積み重ねていくというフェーズになると思っています。同時に例えばですが当初から申し上げている第1段のエンジンを今日は2基で打ち上げたが、これを3基にする形態ですとか、様々なオプションというものをこれから実用化に向けては実証していかなければならないといった事がありまして、正直申し上げると今回の打上げをもって更に検討を進めていくというフェーズですので、いつどうしていくというのは現段階でははっきりと決まっていない段階ではあるのですけども、今年で言いますとH-IIAを着実に打上げつつ、H3も同時に成功を積み重ね、その上でH3ロケットの新たな形態、エンジンの数ですとか、そういったものをいつ実証していけばいいのかというのを走りながら検討する、検討しながら走る、そういったフェーズかと思います。はっきりしたお答えができなくて申し訳ありません。

南日本新聞・今回の成功は一歩踏み出すきっかけというか自信になったか。
山川・非常に大きな一歩だと私としては思っておりまして、そういった将来の開発を見通す意味でも非常に大きな一歩ですし、民間に移管していく、三菱重工さんにH3ロケットを移管していく、そういったものを同時に検討していく必要があるという風に思っています。その上で日本として宇宙へのアクセス、そういった能力の維持をしていく、そういった事に繋がっていくと思っています。

日刊自動車新聞・重工さん、三菱電機さんは勿論多くのメーカー、部品企業さんなどが参画されている中で、日本の開発の特徴である民間との競争・協力の意味で、今回の成功の意義を伺いたい。
山川・質問の意図を正確に把握しているといいのですが、H3ロケットに関して言いますと、当初からプライムコントラクターとして三菱重工様と一緒に走ってきたという事でございまして、事業が立ち上がる段階から将来民間に移管していくという事も踏まえ、もう少し具体的に言うと、世界の市場を確保しに行くためには何が必要かという事で、例えばお客様つまり衛星オペレータから見て使い勝手の良いロケットは何かという観点で設計、それから実際の製作あるいは打上げを進めて来ておりますので、そういった所が今回のH3ロケットの非常に大きな特徴のひとつと考えております。改めて同じ事になってしまうかもしれませんが、そういった方向に向かって非常に大きな大きなステップだったと私としては考えておりまして、今回の2機連続成功をもってそういった方向の見通しがかなり良くなりつつあるという風に理解しています。

日経ビジネス・2機連続成功で国際的な信頼性がより高まった。また今の円安という状況は商業的な打上げの獲得にとって追い風になると思います。営業や国際競争の上で今の円安状況がどれくらいのアドバンテージになるか。
五十嵐・為替の影響という事でございますけども、当然今この為替ですからアドバンテージはあると思います。ただ一方で実際にサービスを提供する時期はもう少し後になりますのでリスクを伴っています。その辺りをよく勘案しながらいろんな交渉をしていくという事になるかと思います。

・打上げ経過記者会見・第2部

・登壇者(第2部)
 JAXA 先進レーダ衛星プロジェクトチーム プロジェクトマネージャ 有川 善久
 三菱電機株式会社 鎌倉製作所 副所長 荒木 慎介
 JAXA H3 プロジェクトチーム プロジェクトマネージャ 有田 誠
 三菱重工業株式会社 防衛・宇宙セグメント 宇宙事業部 H3 プロジェクトマネージャ 志村 康治

・打上げ結果について(有田)
 本日、H3の3号機を予定通り打上げまして、「だいち4号」を所定の軌道に無事打上げることができました。大まかには理事長が申し上げた通りですが、その後地球を1周回後、制御再突入の方にも成功致しまして、ロケットと致しましてはほぼ完璧な成功という形で目的を達成出来たという風に考えています。今日の成功を支えていただいた地元種子島の皆さんはもちろんのこと、鹿児島県その他の関係の皆様、そしてこの打上げをご覧になるためにはるばる種子島にお集まりいただいた皆さん、そしてインターネット等を通じまして応援をしてくださった皆さん、皆さんの応援が私達の力に間違いなくなっています。皆さんに感謝申し上げたいと思います。

・衛星の状態について(有川)
 今、有田プロマネからありました通りH3ロケット、ほぼ完璧な打上げだったと私も思っております。打上げの瞬間に限らずALOS-4、だいち4号が種子島に来てから使用させていただいた設備の面、それからロケットと一体になって行ったジョイントオペレーションの面、本日ローンチウインドウのオープンでオンタイムに打上げていただいた観点、そして軌道投入の観点、大変ユーザーフレンドリーな、衛星の観点から見て素晴らしい打上げだったと考えております。ロケットの関係の皆様に本当に心からお礼申し上げます。また打上げの際に三菱電機さんのエンジニアの方々が種子島にて衛星の最後のセットアップを行っていただきました。私としましては本当に一点の心配も無く安心して打上げの瞬間を迎えることができました。H3から打ち上げられ、バトンを渡していただいて、だいち4号、宇宙空間に投入された訳ですけども、その後の衛星の状態は非常に正常です。まず最初のオーストラリアの局、ミンゲニュー局で両翼の太陽電池パドルがしっかりと展開しているという事が確認できました。またその後のチリのサンチアゴ局でこの衛星が然るべき太陽の方向をしっかり向いていると、そして今現在太陽電池パドルの発生電力が設計を上回る値でしっかりと発電していると、これは我々JAXAも三菱電機さんもほっと一安心という事で、我が子の産声をようやく聞いてひと安堵しているというような状況でございます。衛星に搭載したカメラで太陽電池パドルを搭載(展開?)した画像も取得できています。後ほどサテライトナビゲータの方で公表したいと思いますが、今印刷した紙でご紹介したいと思います。

 このような形で真っ直ぐと、衛星の根元から撮った画像が太陽電池パドルがしっかりと先端まで伸びているという事が確認できております。
 今回あらためましてH3ロケットの皆様と一体となって本当に素晴らしい打上げだったと考えております。最後になりますが、「だいち4号」、これからです。生まれたばかりですので、長い衛星の運用寿命をしっかりと運用できるよう、最初の3日間のクリティカル運用を、JAXAと三菱電機さんが一体となって取り組んでまいりたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

・質疑応答
産経新聞・大役を果たされて、現在の率直なお気持ちを聞かせてほしい。
有田・昨年、試験機1号機の打上げに失敗してしまいまして、大切な「だいち3号」を失う結果になりました。その日の夕方に「だいち3号」の関係の方々に大変申し訳ないという気持ちを伝えると共に、必ずH3を建て直しますとお誓い申し上げていました。その約束が今日果たせたかなと思っていまして、その意味で大変ほっとしているという所です。
志村・私も重要なミッションを無事成功させる事が出来て本当に心からほっとしています。この成功は今日の場でも何度か話がありました通り、関係された皆さんがご自分の仕事をご自分の立場でひとつひとつ積み重ねていただいた結果だという風に考えておりますので、とても感謝しておりますし、喜びを衛星の皆さん、ロケットの皆さんと共に分かち合いたいと感じています。

産経新聞・今回の打上げを100点満点で採点して何点か。
有田・もう正に100点満点の打上げでした。

朝日新聞・28日の会見でH3というのは最終的に目指す姿に向けてはまだまだ磨きをかけないといけないとおっしゃっていた。今回の打上げ成功で目指すべき姿にどのくらい近づいたのか。また今後特に優先して磨きをかけたい部分というのはどういうところか。
有田・3日前にも連続成功あるのみと申し上げましたけども、その第一歩が踏み出せたという事で大変安堵しております。皆さんとの約束が果たせたかなというところでほっとしております。ただこれからこれを続けていかないと意味が無いというところですので、理事長も申しておりましたけれども油断すること無く、一つ一つ1機1機のロケットを着実に打ち上げていくということが必要と思っております。また最初の会見の時に申し上げましたけれども、まだまだエンジン3基形態ですとか、タイプ2の恒久対策エンジンの開発といった、H3をさらに磨いていくための努力、こういったものが必要だと考えておりますので、こちらにも引き続き努力してまいりたいと考えております。

KYT・「だいち3号」を失ったり、コロナ等の事もあったり、どれ程の困難があったのか。エンジニアの方々も大変な苦労をされて来たと話を伺っていますが、今回成功したことにより皆さん更に意欲が湧いてきたのではないかと考えていますが、いかかでしょうか。
有川・今おっしゃっていただいた通り「だいち3号」を失ってから、「だいち4号」のプロジェクトチームも実は隣の執務室で働いていますので、最初に前を向いてがんばろうと声をかけたのを今でも覚えています。またその時にJAXAメンバーに声をかけた時にには、やはり同じ「だいち3号」を三菱電機さんが担当されていましたので、三菱電機さんの担当の事を思うとやはりかける言葉が無いですと言っていました。今度は三菱電機さんのエンジニアの方に声をかけると、長年やってこられたJAXAのプロジェクトメンバーの方が辛いと思いますと、お互いを思いやっているような声をもらいました。「だいち4号」は両方のプロジェクトに携わっているメンバーも多くおります。今回の打上げ成功、そして「だいち4号」で初めて軌道上、宇宙空間で初めて実証するような技術、心待ちにしているメンバーも、JAXAも三菱電機さんも大勢おりますので、まずそれを成功に導きたいと考えています。
荒木・「だいち4号」は今お話にありましたようにコロナ、あるいはALOS-3の件もございまして、開発期間も7年強と長い期間であったということで、技術的にもブリーフィングの時に有川様からご説明があった通り高いレベルのものを目指していたという事から、長い間、設計・製造・試験といったフェーズに関わってきた当社のエンジニア並びにご協力いただきました企業の皆様の努力には敬意を払いたいと思っております。あと今回軌道上に投入いただけたという事で、先程も述べさせていただいたのですが、衛星としてはこれからという事で、これまでの設計とかの結果が正に証明されていくフェーズと考えていますので、そちらに向けて前を向いて行きたいと思っております。

JSTサイエンスポータル・JAXAチャンネルの中継を見ていましたが、2段エンジンの燃焼開始後割と間もなく、打上げ6分後くらいのところで、機体速度の表示が下がっていく時間帯が一時期ありました。結果的に打上げに成功し、有田さんも100点満点とおっしゃっていたので大丈夫だった事だと思うが、画面上では数字が落ち込んでいたので、中継を見ていた一般の方もヒヤリとしたかもしれません。これがどういう事象であったのか解説をお願いしたい。
有田・私の方では計画外という事象は把握しておりませんので、調べてさせていただきます。
志村・私も見ていないので判らないのですが、もしかしますと高度と速度を描くグラフをよく載せるのでその事かもしれませんけども、ロケットを打上げる時は軌道の力学、力を使います。ですので途中の段階で高度が上がるが速度が落ちるフェーズもありますので、そういった事をそう見られたのかなという気がします。直接見ていないので判らないのですが、いずれにしても確認はいたします。

時事通信・計画では第1段の燃焼終了20秒前に66%のスロットリングを行うとのことだったが、これは計画通り行われたか。また衛星への負荷を軽減する効果があると思うが、H3の30形態を実現するために必要な技術だと思うが、その辺の実証が出来たことについて一言お伺いしたい。
有田・今回の飛行の目的だったのがスロットリングの実証という事でしたが、計画通り1段燃焼中の最後の20秒、ちょうどうまくスロットリングをすることが出来ました。前回ちゃんと答えられなかったのですが、どれくらいの時間をかけて推力を下げるのかというご質問がありましたが、調べましたところ5秒間かけて100%から66%に絞って、その後20秒間フラットにキープするという形で、正に計画通りの飛行をいたしました。ご質問の通り30形態には必須の技術で、30形態はエンジンが3つ付いておりますので、それだけ力が大きくなる、加速度が大きくなるという事がございますので、このスロットリングが必須だと考えていますので、それに向けても大きなステップになったかなと考えています。

フリーランス秋山・軌道投入精度について一言、また軌道投入精度が高い事がALOS-4にとってどのような意味を持つか。
有田・軌道投入精度は一言で言いますと非常に良い精度だったと現時点で評価しています。ただこれはロケットの自己採点みたいなところがございますので、最終的には衛星の軌道決定の結果を用いて客観的な評価が必要ですけども、現時点で非常に良い精度で投入できたと考えております。
有川・衛星の軌道投入精度の良さについて、「だいち4号」は「だいち2号」と同じ軌道面に投入したいという希望がございます。その観点でローンチウィンドウのオープンで打ち上げていただいた、なおかつ大変高い投入精度で軌道に入れていただいたという事は、「だいち2号」と「だいち4号」を同じ軌道に入れて連携して観測をするという観点では非常にメリットが高いと思っています。勿論「だいち4号」がその後自分で軌道制御をして位相調整をしていくのですけども、その際にも事前に予定通りの軌道に投入いただいた方が、後のクリティカルフェーズを経て最後に「だいち2号」との軌道を揃えに行くことも計画が立てやすいという観点でメリットがございます。

フリーランス秋山・軌道投入精度が高いことが連携しやすくなるとのことだが、干渉SARのような軌道の精密さを要求されるような今後の運用について、何か良い点があれば補足願いたい。
有川・干渉SARにつきましては、同じ軌道高度で衛星自身の軌道決定精度が高い、どの位置をどの高度で飛んでいるか、これを精度良く計る事が大変メリットになってきます。「だいち2号」と「だいち4号」の関係性でいきますと、緊急観測、災害が起こった場所で「だいち2号」と「だいち4号」が絶え間なく観測できるようにするために「だいち2号」と「だいち4号」で位相差、ある時間差をつけて飛ばすのですけども、その計画を立てる時に軌道の保持精度が重要になってまいります。

東京新聞・1段目エンジンをタイプ2にする事が30形態に向けた必須条件か。タイプ2にしなくても30形態にする事はあるか。30形態はH-IIAの半額に打ち上げ費用を抑えるために目指す姿という理解で良いか。スロットリングはうまくいったのか。スロットリングは衛星に優しいという実感はあったか。
有田・30形態にとってタイプ2が必要かとの質問ですが、答えはノーです。タイプ1Aでも推力という意味ではタイプ2と同じだけの真空中150トンという推力を出す事ができます。私達が30形態の一番のチャレンジだと思っているのは、リフトオフのいちばん力をロケットが出さなくちゃいけない瞬間、この瞬間に3基のエンジンが同時に協調してきちんと推力を出せるかという事が大きなポイントになります。その観点ではタイプ2もタイプ1Aも同じで、両方共150トンの推力を出せますので、タイプ1Aでも30形態を打ち上げる事が出来ると今考えています。スロットリングに関してはうまくいきまして、30形態の打上げには必須の技術というのは先程お答えした通りです。
有川・衛星にとってスロットリングは環境として良いのかという質問をいただきました。現時点でまだロケットを打上げた後の解析結果を目にしていないので、それを踏まえてから回答したいと思います。そのため、この場での回答は差し控えたいと思います。
有田・H3の30形態がH-IIAの半額を目指している形態というご理解で間違いございません。

ニッポン放送・スロットリングが計画通りとのことだが、計画通りという確認のエビデンスは何か。また機体速度が下がるのは私もJAXAチャンネルで見ていたが、これはスロットリングと関連があるのか。
有田・スロットリングがちゃんと作動したかどうかにつきましては、私共はテレメータというロケットから電波で送ってくるデータをリアルタイムで確認しておりまして、そこで確認をしていたというのが本日の段階です。詳細には解析を十分にやってそのデータをよく吟味するという事が必要だと思いますけども、今日の段階はクイックに目で見たデータで判断しております。
 それから先程もありました速度が低下しているように見える事ですが、これは確認したところ、今回打上げました太陽同期軌道に特有の飛ばし方で、先程志村さんからあったように高度や速度の関係でそういう事が実際にあり得る、これは計画通りで異常が無いという事を確認いたしました。

ニッポン放送・テレメータのデータは推力の数字か。
有田・実際にモニターしておりますのは燃焼圧の数字でございます。ロケットは基本的に燃焼圧と推力は比例の関係にありますので、燃焼圧をモニターしていれば推力が確認出来ると考えております。

産経新聞・今回成功されたが、成功が確信できた瞬間に管制室ではそれぞれどういう状況だったか。
有田・今回は一つ一つのイベントに沿って声が上がるといった感じでした。最初はやはり、リフトオフの瞬間は、よし行ったというところから始まって、先程のスロットリングですね、実際に推力が丁度私がこの秒時ですと言った所から下がり始めて、このまま下がっていってしまうと台無しになりますので、ちゃんと66%で止まって66%をキープして、その後立ち下がる、これでまず一安心、その後当然イベントがあって、1・2段分離、そして1号機の時に辛酸をなめた2段の着火、ここでもよしという声が出ましたし、燃焼終了は当たり前という感じですけども、やはりその後衛星が分離しないと仕事になりませんので、衛星分離というのを確認したところで拍手が起きて岡田と抱き合いました。
志村・ほぼ同じなのであれですが、有田さん達と一緒に一つ一つのイベントを確認して、最後の衛星分離に辿り着いたというとこですけども、その後いつも通りロケットの方々と握手なりハグをしたんですけども、今回はなんと言っても「だいち4号」の有川さん、三菱電機の皆さんと握手ができたということは非常に嬉しかったですね。有川さん達も喜んでいただけたので、個人的には嬉しかったです。

産経新聞・岡田さんはどんな言葉をかけてくれたか。
有田・有田さん、今日は記者会見大変だよと言っていましたね。きっと質問一杯出るよと脅かされました(笑)。

読売新聞・H3については宇宙基本計画の工程表では今年度はまだ打上げ予定が控えている。まだ3号機が打ち上がったばかりだが、4号機あるいは5号機の打上に向けてどういったスケジュールを考えているのか。また今回はスロットリングを実証したが、年度内に打上げを実現するにあたって、例えば射場での作業をよりスピードアップする必要があるとか、4号機以降に向けた課題が直近であったら伺いたい。
有田・4号機につきましては防衛省さんのXバンド通信衛星「きらめき3号」を打ち上げる予定になっています。時期については調整中ということで、スケジュールについてはお答えできない状況ですけども、これに向けての大きな要素は、H3ロケットとしては初めて静止トランスファ軌道への打上げになるという所が私達としては初めてという事になります。これに向けて今準備を始めているというところです。

共同通信・スロットリングや機体移動の時間の短縮といったチャレンジをして成功されて、それを踏まえて世界と競争していく上でのH3の強みは何か。
有田・H3ロケットはやはり国際競争力を持つことを開発の当初から目標に掲げて三菱重工さんと共に開発を行って来ました。大きなところはH-IIA/Bから引き継ぐオンタイムの打上げ、それから信頼性の高さ、これを是非ともH3でも引き継いでいきたいと思っていますし、その点で試験機2号機そして今回の3号機、正にジャストオンタイムの打上げが実現できたということで、H-IIAの後継者としての認知度をこれからも高めていきたいなと思います。スロットリング等の新しい機能を使って衛星に優しい、ユーザーフレンドリーなロケットという評判をどんどん上げて、この先お客様に愛されて使っていただけるロケットにしていきたいと考えています。

ライター林・ユーザーフレンドリーという言葉があったが、スロットリングの他に何かユーザーフレンドリーを意識してというのがあったか。予定通りというのもそのひとつだと思うが他にあったか。
それからサブプロジェクトマネージャからプロマネになって初めて見えてきた景色はあったか。
有田・ユーザーフレンドリーという観点に関してスロットリング以外という事ですと、例えばH3とアリアンとの違いというと、主衛星はひとつという打上げに特化したラインナップを考えています。どうしても相乗り衛星、打上げ能力を有効に使うためという事ではあるものの、相乗り衛星の都合に合わせるというのはお互いに不幸になる事も結構あって、そういった意味でカスタムメイドのロケットを顧客に提供するという事そのものがユーザーフレンドリーの第一歩かなと思っています。その他にもいろいろ環境条件とか、それから注文を受けてから打ち上げるまでの期間を短縮するとか、いろんな事をチャレンジしていきたいと三菱さんと一緒に考えているところです。
 それから、この景色が初めてと言えばそうですね。2号機まではサブマネとして、打上げ隊の中ではロケット主任という立場でした。これはロケットとこれを支える地上設備、これの整備に責任を持つという立場で、ロケットを打ち上げるまでの管制を司るLCCという所があるのですけども、そこのとりまとめの役割という事で打上げに参加してきました。今回はそのすぐ隣にあるRCCという所で、実施責任者の隣で打上げ執行責任者という形で、ある意味打上げの現場から離れてその人達の動向を見守りつつ、ロケットの打上げそのものに責任を持つという立場に変わったという事で、そうですね、ロケット主任の時よりも眠りが浅い日が多くて、やはり今までよりも大きなプレッシャーを感じていたのかなと思います。前のプレスブリーフィングでありました通り、プロマネという名前がつくと皆さんの反応がちょっと違うところもあって、お約束通り宇宙科学技術館に岡田と一緒に行って皆さんと触れ合う場を持たせていただいたりしたのですが、「有田プロマネですか」と言われるシーンもあったりして、「お会いしたかったです」に、え、本当ですかという気持ちも無くは無いのですが、大変心温まる応援をいただいて、そういう経験が出来たというのも、岡田のアドバイスもあってという所もありますけど、そういう体験が出来たのも、そして皆さんからいろんな力をいただけたというのも新しい経験で、とても良かったと思っています。

コニカミノルタ・科学技術館でサプライズのサイン会を岡田前プロマネとやられたという事で、私と同じ宿に泊まられていたお子さんも非常に喜んでいたと聞きました。日本には種子島に来たくても来られないというお子さんが一杯いて、H3の打上げと「だいち4号」の成功を喜ばれて応援している方がいると思うのですけども、そういった方達に何かメッセージをいただけたらと思います。
有田・皆さんから本当に熱烈な応援をいただいて、何度も来られている方もいらっしゃいましたし、今回ツアーを企画していただいた方も居て、そういった方々と一緒に団体で来られてる方もいらっしゃったという事で、非常に私達としてもありがたく感じています。本当に種子島はなかなか本土から離れているというところもありますので、実際に来るのは、皆さんも経験されていると思いますけどもなかなか骨の折れるところもありますけれども、そこまでして来ていただける方々には本当に感謝しております。また来れない方々も沢山いらっしゃると思います。皆さんがインターネットを通じて今回は7万人と伺っておりますけども、そういった方々に視聴いただいて応援いただいているという事にありがたく思っていて、私達がこのような仕事に就けてこういう仕事が出来ている事を幸せに思って、皆さんに少しでも恩返しが出来るように毎日頑張っていかないといけないと、あらためて思ったところです。本当に皆さんの応援が我々の力になっておりますので、引き続き応援していただけるとありがたいと思っています。

日経新聞・今後の打上げで技術面で磨きをかけるとなった場合、実証しなければならないのはどういった点になるのか。次の4号機、5号機に向けての意気込み。
志村・これから磨きをかけなければいけないのは、先程も出ていますがGTOという静止軌道に上げる打上げがありますので、そちらの方向は少なくともやらなくてはならない事が残っています。また30(形態)が残っていますので、その辺のところを進めていくところでございます。あとメーカーとしては物作りの話がありますので、これといって新しい訳では無いのですが、物作りを一歩一歩洗練させていく、そういった工程がやはり必要になりますので、少しでも作りやすいような作り方にして信頼性を上げて皆様に安心して使っていただけるロケットにしていくことが、メーカーとしての努めのひとつかなと考えています。
有田・私としてもこれから磨きをかけていくという意味で30形態と、それからタイプ2エンジンを挙げさせていただいてますけども、いずれも新しい要素があります。これらに対しての試験を端折らないというのが全ての基本だと思います。リスクだと思う事に対してきちんと試験をしてTest as You Flyという原則を忘れずに、実際に遭遇する環境での試験、これをしっかりやって検証を積み重ねるという事で、それから判らない事に接した時に、そのメカニズムをきちんと解明するまでは安易に打上げに行かないという事も大事なことだと思っていますので、こういった我々が今までの開発の中で培ってきたフィロソフィーというか、こういったものを大事にして、これからも開発に臨んでいきたいと思っています。

以上です。