H-IIAロケット49号機打上げ経過記者会見

 H-IIAロケット49号機は2024年9月26日に種子島宇宙センターから打ち上げられました。
 同日に竹崎展望台の記者会見室で打上げ経過記者会見が開催されています。
 (※一部敬称を省略させていただきます)

・登壇者
内閣官房 内閣情報調査室 内閣衛星情報センター 所長 納冨 中
三菱重工業株式会社 防衛・宇宙セグメント 宇宙事業部長 五十嵐 巖

・登壇者挨拶(納富)
 本日、ここ種子島宇宙センターからH-IIAロケット49号機が打ち上げられ、搭載しておりました情報収集衛星レーダ8号機を所定の軌道に投入できました。特に今回は打上げに際しまして当初9月11日に予定されていましたところ、気象条件が整わず本日まで延期となっておりましたが、その間を含め地元の皆様をはじめとした関係各機関の変わらぬご支援ご協力に対し深く御礼を申し上げます。本衛星は我々内閣衛星情報センターの情報収集体制を確実なものとし、またより一層強化するためにも極めて重要な衛星と考えております。今後、内閣衛星情報センターといたしましては、レーダ8号機の早期の運用開始に向けた所要の作業をしっかりと進め、我が国の情報収集能力がより強固な物となるよう、全力を尽くしていく所存でございます。

・打上げ結果について(五十嵐)
 三菱重工業株式会社は、本日2024年9月26日14時24分20秒(日本標準時)に、ここ種子島宇宙センターから、情報収集衛星レーダ8号機を搭載いたしましたH-IIA49号機、こちらの打上げを無事執行いたしました。
 今回の打上げでございますけども、厳しい気象条件の中、皆様にはご心配であるとかご不便であるとかをおかけしたと思います。その中で最も大事なこと、打上げの成功、それを本日定刻に達成いたしました。今回の打上げを実施するにあたりまして協力いただきました関係各位、それから地元の皆さん、それから応援をして下さった皆様に対しまして感謝申し上げます。ありがとうございました。

・質疑応答
KYT・来月に控えたH3ロケット4号機、そしてH-IIAロケット50号機も最終機として連続成功に繋げるため、今回は思いの強い打上げだったのではないかと感じたが、どのようにお考えか。
五十嵐・今回の打上げもいつもと同じ打上げではございますけども、確実に着実に打ち上げると。それから次に控えておりますH3の4号機もありますし、それからH-IIAの最終号機もありますし、昨日飛島工場から機体出荷というのもありました。その意味でこのH-IIAの49号機をしっかりと打ち上げるというのが大事なステップになりますので、その意味で確かに気合いの入った打上げであったという風に言っても言い過ぎではないと思います。
(※最終号機の出荷日については後に再度質問があり、9月27日の出荷予定)

南日本新聞・レーダ8号機はH-IIAで打ち上げる事が前々から決まっていた。日本の宇宙開発を考えると、H3低コスト化を早期に進める必要があると思うが、今回H-IIAを使った理由や狙いはあるのか。
五十嵐・H-IIAロケットからH3ロケットに移行していく過渡にあります。そういう意味で49号機については、こちらのCSICEさんの衛星を打ち上げるという事で元から決まっている。その中でH-IIAロケットで今回打ち上げたという事になります。

南日本新聞・費用的には現状ではH-IIAの方が安いのか。
五十嵐・打上げ費用についてはなかなか答えることができなくて大変申し訳ない。今はH3ロケットで価格を下げていくというところの過渡にありまして、今この瞬間どちらがという事は申し上げにくいところかなと思います。いずれにしてもH3ロケットはまだ3号機4号機というフェーズですので、これから醸成していく形になりますし、H-IIAロケットについては最終号機を見据えまして、最も効率の良いやり方で準備をして今回の打上げに臨んでいるという事でございます。

NHK鹿児島・今回2回の延期の末、やっとの思いの打上げだったと思うが、今日のGo判断で、今日明日くらいしか晴れが無いという気象状況で、判断が難しかったところはあったか。
五十嵐・今の質問は次のブリーフィングで詳しく説明できると思います。

NHK・前回に延期になった時、来月のH3の4号機への影響は今後評価していくという回答だったと思うが、今日打ち上げが成功したことで、来月のH3への影響は何かあるか。
五十嵐・いよいよもってして今回H-IIAロケット49号機の打上げ成功となりましたので、ここで日程が固まった訳です。従いまして次のH3ロケットの打上げに向けまして、基本的にはJAXA様とMHIとで相談をいたしまして、適切な日程というのを速やかに決めて、それでご報告したいと思います。

時事通信・情報収集衛星はH-IIAのペイロードとして非常に長い間お付き合いがあったと思うが、その観点から6号機も含めてH-IIAに対する思いや感想をお聞かせ下さい。
納富・情報収集衛星、我々は16基、それ以外にも実証衛星も含めて20基超をH-IIAロケットで打ち上げていただきました。我々としては今回がH-IIAロケットによって我々の衛星を打ち上げていただく最後の機会だという事で、少し寂しい気持ちがあることも事実でございますけども、一方で再来年以降、我々の情報収集衛星についてH3ロケットを使って打上げていただくことになると考えておりますけども、そういう意味でやや寂しい気持ちと、H3ロケットに対する大きな期待が入り交じった気持ちというのが実際のところでございます。

時事通信・H-IIAの6号機まではデュアルローンチをやっていたが、H3でロケットの能力が向上するということもあり、例えばそういった事を検討することはあり得るのか。
納富・ロケットと衛星の関係につきましては、衛星の能力あるいは衛星の大きさ重量、あるいはどの軌道に入れたいかというような事と、それからいわゆるロケットの運搬能力との相互関係になると考えております。将来的に複数の衛星を打ち上げられるような事があれば、条件が整えば、そういう事も検討したいと思っています。現時点においてはその辺まで深く検討しておりませんので、今後状況により検討させていただく問題と考えております。

MBC・北朝鮮やロシアなど諸外国の安全保障に関する問題が緊迫化する中で、あらためて今回のような衛星を打ち上げることの重要性を教えて下さい。
納富・我々の情報収集衛星につきましては、安全保障、それから大規模災害等の危機管理のために情報を収集するという事で我々の運用目的がございます。ご指摘の通り、そもそも我々の情報収集衛星これを保持する決心に至った経緯でございますけども、ご指摘のあった北朝鮮のミサイルという事がひとつの大きな経緯になっておりますし、また一般敵に申せば我が国を取り巻く安全保障環境は年々厳しさを増しておりまして、また残念な事ながら自然災害についても近年
大きな自然災害が発生している状況において、宇宙からの情報収集能力という事は今後も更にニーズが拡大していくものと考えております。従いましてその中で本日レーダ8号機が打ち上げられましたけども、そのように宇宙からの情報収集能力を着実に拡大していく、そういう事が重要だと考えております。

JSTサイエンスポータル・確認ですが先程50号機の出荷の話があったが、現地で取材した際にいただいた資料では27日に飛島工場から出荷で、30日に射場に搬入予定との説明がありました。先程聞き間違えていなければ今日では無く明日という理解でよろしいのか。
五十嵐・その通りです。もしかしたら間違った事を言ったかもしれないです。27日の出荷予定です。

・第2部(ブリーフィング)登壇者
内閣官房 内閣情報調査室 内閣衛星情報センター 管理部付調査官 三野 元靖
三菱重工業株式会社 防衛・宇宙セグメント 宇宙事業部 技師長 H-IIA打上執行責任者 徳永 建

・質疑応答
KTS・レーダ8号機が軌道に投入されたが、このあと試験運用を行った上での実質の運用となると思うが、その期間は大体どれくらいになるか。
三野・おっしゃる通り衛星につきましては打上げ後、一般的には初期機能確認というものがございまして、私共としてはそれに数ヶ月程度を要すると見込んでおります。早期に本格運用に至りまして、レーダ8号機を実際に活用し、我が国の情報収集体制をより一層強固なものにしていきたいと考えています。

NHK鹿児島・今回の打上げの気象条件はなかなか難しいところがあったと思いますし、上(報道関係者の撮影場所)に居て風が強いと感じたが、それで今回打上げGOの判断に至った経緯と、難しかった所があれば教えて下さい。
徳永・前回、打上げ中止の会見の前から、今回の打上げシーズンにおいては、なかなか気象条件が制約を満足することが出来なくて、今回15日くらい当初よりも遅れてしまって、皆さんに大分ご心配をかけてしまったのではないかと思うのですが、日々打てる日を探してまいりました。今回16日の延期以降、そういった形で毎日天候を探してまいったのですけども、26日27日28日くらいが当初良い天候状況が見えてまいりまして、27日くらいが一番晴れのマークがついていたと思うのですが、いろいろ条件を見まして26日でも打上げられるだろうという事で設定し、打上げ日の公表をさせていただいた。実はその後気象条件がまた変わってまいりまして、想定外だったのは秋雨前線の上で低気圧が台風化してしまうという、昨日になってそんな状況になって、そういった打上げに近くなってそういった気象条件が変わるのは非常に苦労いたしました。その結果として、今日記者の方々が体感したのではないかと思うのですが、非常に風の強い中での打上げになったという事で、前回の打上げ中止の要因であった高層の風もさることながら、地上での風の強さにも制約がありましてギリギリのところで、冬のような曇り空だったという事で、雲の制約もある中、最後の最後までギリギリまで見極めて打上げに行けたと、そういう経緯で本日の打上げが達成できています。

読売新聞・今回の49号機が成功して、成功率は何パーセントになるのか。また衛星の切り離しは何分後か。
徳永・打上げ成功率はH-IIA/Bロケットで98.3%という所に至りました。今回のH-IIAロケットだけで見てまいりますと98%で、細かくは97.96%という数字になろうかと思いますけども、大体98%の所にこぎ着けたという所でございます。衛星分離のタイミングは、これはなかなか申し上げることができない。第2段の燃焼が終わった後、分離をしているというタイミングとなります。

産経新聞・H-IIAがあと2機という段階で、それ故に失敗出来ないというプレッシャーがあったと思うが、そういう環境で今回成功を収めた中での率直な気持ちをお聞きしたい。また50号機どのようなフィナーレにしたいか。更にH3にどんな形でバトンを渡したいか。
徳永・49号機を無事に成功させていただいて、まずはひとつひとつの打上げを積み重ねていく中で、どれもプレッシャーを感じながら成功させるという事をやってきましたので、この中のひとつという形ではございますけれども、やはり残り2つしか無い中で、失敗することは必ず避けなければならない、H-IIAロケットとしては有終の美を飾るようにしていきたいという事もありますし、ここは私の気持ちですけども、先程打上げ成功率の質問をいただいて、細かく97.96%と申し上げたのですけども、私の目標といたしましてはH-IIAロケットをなんとか98.00%の数字まで持っていくという形を最後の50号機に向けての目標にしていきたいと思っていまして、そのように臨んでいきたいと思います。そうする事でH3にはH-IIAで培われてきた技術であるとか、打上げに向けてトラブルを起こさずにオンタイムで行くという所のメリットといったところを、H3に向けて確実に繋いでいきたいと思っています。これがH-IIAを最後まで成功で達成していく1つの使命であろうという風に考えています。

朝日新聞・H3の4号機打上げへの影響について、第1部でJAXAとMHIで適切な日を決めて速やかに報告したいとのことだったが、今のところ10月20日からは少し後ろ倒しになる方向で検討していく事になるのか。
徳永・49号機が打ち上がりまして、これで日にちが確定しましたので、ここでその辺の見極めをしっかりつけて、JAXAさんと調整していく中で日にちが決まっていくと思っていますので、どれくらいになるかというのはこれから改めてご報告させていただきたいと考えています。

朝日新聞・可能性として10月20日のままという事はあるか。
徳永・感触としては難しいのではないかと思うが、出来ないかどうかを今見極めを含めてやるということで、日程を確実にしようという動きをしているところです。

読売新聞・H3の打上げ日程はこれからとのことだが、来月中を想定していると言って良いか。
徳永・そこも含めて関係の方と調整をしていく事になっていますので、今どこになるかは言えない状況にあります。

読売新聞・今年中の打ち上げ予定ではあるのか。
徳永・そうです。恐らく堅いと思っています。

読売新聞・H-IIAの50号機の打上げ予定はどの程度まで考えているのか。
徳永・50号機のお客様のJAXA様と調整させていただいて決めていくが、今年度中の目処で調整させていただいているところになります。

読売新聞・今年中ではなく今年度中か。
徳永・今年度中には打ち上げるという事で調整しています。

読売新聞・H3の4号機は今年中か。
徳永・H3の4号機は今年中にいけると思っています。

南日本新聞・レーダ8号機の開発費と打ち上げ費用を伺いたい。
三野・いずれも予算ベースで、衛星の開発費につきましては約311億円、ロケットの打上げ費用につきましては約118億円を見込んでございます。

南日本新聞・全体で16基を打ち上げたとの話があったが、総費用は判るか。
三野・打ち上げ費用と衛星の開発費の総計については今すぐにお答えすることは難しいですけども、私共の衛星センターの準備室時代からの予算を措置された平成10年以降の総額という事であれば約1.8兆円という事になります。これは衛星の開発とロケットの打上げ、更にはランニングコスト、運用費も含んでいる総額と言う形になっています。

南日本新聞・光学とレーダで16基という事か。
三野・データ中継衛星も含んでいると思います。
(※最後に補足説明あり)

NHK・昨日H-IIAの50号機が名古屋(飛島工場)で公開されたが、H-IIAでは最後のロケットになってしまうが、今回の49号機から最終の打上げに向けての課題と、今後H3にどう活かせめかという所はあるか。
徳永・今回の打上げの結果とかデータはこれから確認していくので、課題があったかのか無かったのかを含めてこれから見ていくところになります。簡単(クイック)に見たところでは、打上げのシーケンスや飛行経路といったところに特に異常は無かったので、特に問題は無いと思っていますが、そこはこれから詳細に見るところです。ですので50号機に向けての課題が顕在化しているかというとそういう事はございません。ですので50号機は今まで通り確実に打上げてまいりたいと思っています。

宇宙作家クラブ柴田・先月、観測ロケットS-520-34号機が延期した理由に今回のH-IIAと打上げ設備が重なるためとあったが、何が重なったのか。
徳永・申し訳ありません、私は観測ロケットとH-IIAで共通の機器があることを承知していませんでした。
(※この後にJAXAからロケットからの受信設備との説明がありました)

NVS・今回はウインドウが短く風も強くて厳しい判断だったと思うが、もし打上げを伸ばしたいとなった時に、例えば自動カウントダウンの頭まで戻るので4分以上のウインドウが無いと実質的にアボートになってしまうなど、そういった条件があれば教えて欲しい。海外ではホールドして打上げを待つことがあるが、そういった打上げは可能なのか。
徳永・H-IIAロケットとしまして、ミッション毎の違いは特にありません。H-IIAロケットとしてある秒時までですとそのままホールドが出来ますし、ある秒時を過ぎますともう一回立ち戻ってシーケンスを流し直す必要があるという秒時がございます。

NVS・そのタイミングは判りますか。
徳永・具体的な秒時は自動カウントダウンシーケンスとアナウンスがあると思うが、それの前後で決まってきます。

NVS・H3では条件が違うのか。
徳永・秒時は違いますが考え方は一緒でございまして、そこ以降と以前とで変えるという形になります。

NVS・自動シーケンスが始まった後に変えたい時は、自動シーケンス開始まで巻き戻してもう一回という事か。
徳永・細かくはいろいろありますが、ある所まで立ち戻ってもう一回やり直すという形になりますので、その辺はそれぞれのH-IIAならH-IIAの、H3ならH3の形で決まってきます。

NVS・今回のような1分くらいのウインドウだと厳しいのか。
徳永・おっしゃる通りで、このような1分の時は時刻をやり直すという事ができないので、打上げを中止せざるを得なくなります。

南日本新聞・衛星分離の時間だが、約20分で分離したとの放送があったが、その時間で分離したという理解で良いか。
徳永・そこまでで分離しております。

南日本新聞・20分後に分離したかどうかは判らないのか。
徳永・そこでは分離を確認したという事です。

南日本新聞からの質問への補足
三野・16基とおっしゃられたものにつきましては、恐らく今、光学衛星が8号機まで、今回レーダ衛星が8号機まで打ち上がってございますので、そういう事で16基ということなのかと思いますが、実績を見ますとそれ以外にも、実証衛星というものですとか、先程申し上げたデータ中継衛星というものもございますので、そういった物も合わせれば手元で数えてみたところ20基打ち上げてございます。ただ2基一緒(デュアル)で打ち上げた実績がございますので、H-IIAロケットを20回使ったかというとそうでは無いという事になりますけども、打ち上げた衛星の数という意味で申し上げると20基となります。

・先程の1.8兆円はこの20基のお金という事で良いか。
三野・衛星の開発費と打上げ費用の20基を含んでいますし、それ以外にも衛星の運用経費を含んで1.8兆円という事でございます。

以上です。

いずれも種子島宇宙センター竹崎展望台の屋上(プレススタンド)から撮影。