宇宙開発利用部会_調査・安全小委員会(第49回)のフォローアップブリーフィングより

 2023年7月31日に宇宙開発利用部会_調査・安全小委員会(第49回)が開催されました。
 議題はH3ロケット試験機1号機打上げ失敗原因調査状況と、イプシロンSロケット2段モータ地上燃焼試験調査状況についてです。
 その後に記者向けのフォローアップブリーフィングが行われ、その部分を記載しました。
 尚、調査状況や略語については文部科学省の会議資料を参照してください。質疑内の写真はJAXA提供です。
(※一部敬称を省略させていただきます。また回線等の関係で一部聞き取れない部分があり、省略させていただきました。表紙のH3ロケットは2023年2月16日の機体移動で、宇宙作家クラブ柴田の撮影です)

※以下の質疑応答は記者向けフォローアップブリーフィングより。

・質疑応答:H3ロケット試験機1号機打上げ失敗原因調査状況について

読売新聞・今後も9つある原因シナリオの絞り込みを続けるとのことだが、あとどれくらいの小委員会での検討で絞り込みを進めた上で、具体策を決定していく流れになる予定か。前回には今回までにシナリオを絞り込んだ上で具体策に落とし込むという話だったが、進捗が遅れているのか。
竹上・小委員会の見通しに関しては、あと何回とは予断を持っては言えないが、JAXAの進捗状況を踏まえてできるだけ速やかに考えていきたいと思います。
佐藤・前回、今回の調査小委員会までになんとかという話をさせていただいたが、各シナリオの検証を進めてきておりまして、その中で今回判ったことも含めて話をさせていただいた。それを元にもう少し検討が必要だろうということで、まとめをしながら、なんとか早めに進めていきたいという風に考えております。対策の方も並行していろいろ検討を進めておりますので、なんとか早く出したいと思っています。

読売新聞・シナリオは理想的にいくつまで絞りたいとかはあるか。絞りきれず9つのまま進めて、具体策も9つ想定した上で落とし込んでいくことも考えられるのか。
佐藤・いくつまでとはなかなか言い切れないと思っています。シナリオの中に更に細かい説明出来る詳細なシナリオが出てくると思います。その辺をしっかり次回以降に示した上で、もし9個が残るようであればそれの全てに対策を施していくという形で進めたいと思っています。

ニッポン放送・時系列についての話で、エキサイタのスイッチが入ったときと過電流が発生した時の間にずれがあり、6~10ミリ秒の間に電流が増加した可能性がある。範囲が絞られている訳だが、この絞られた事で原因究明の意義というか、それがどういった事であるのか教えて欲しい。
佐藤・資料35頁は模式的に書いているので判りにくいかもしれませんが、電流値正常範囲内と書いているところから10ミリの間、この辺で過去の地上試験でとったデータと突き合わせをするとこの間に電流が上がってくると絞られるのではないかと推察致しました。これを元にシナリオの詳細な絞り込みと整合するかどうかという形で考察を加えて検討していきたいと思っています。今日の時点でこれをベースにどれかのシナリオが絞り込まれたということには至っていないところです。

NHK・時系列の話が出て、それによってどのようにシナリオが絞られていくかは今後との事だが、資料38頁のツェナーダイオードの大電流の現象は、時間差を説明するものとしてあり得るのか、それともまだ検討中なのか。
佐藤・ツェナーダイオードは固有シナリオの2番の方で、これも仮に過電圧になった場合にこれが中で壊れるかどうかで、もし過電圧が発生した場合は壊れることが判ったところになります。そういう意味でタイミングの話とは違うものになります。

NHK・9つのシナリオのうち今回時系列など新しく判った事を踏まえると、H-IIAとの共通要因なのか、H3固有の要因なのか、今はどちらの蓋然性が高くなってきているか。
佐藤・そこの優劣は今回まだ語っておりません。時系列の話は共通シナリオの8~17で何か潰れるものはないかというのをやっていく事になると思います。共通の18番、それとH3固有の2つのそれぞれに対していろいろな検証を進めてきたところで、今回の報告でどれが有力かというところはまだ言えていないところです。

NHK・イプシロンSとは材料というか素材で共通しているという説明だったが、今のところ影響は無いとのことだが、もう少し具体的に教えて欲しい。
佐藤・イプシロンの資料の14ページにモータの比較を書いているが、質問の通り推進薬の材料が同じような時期にシナジー的に開発をしたということで2段モータとSRB-3が同じ。あるいはインシュレーションの材料も同じというのが再分析としては判っています。ただモータそのものが大きく設計全体が違うということもあるということと、15~16ページに示した通り今回の2段モータの最初の燃焼試験ということで、開発が終了していた訳ではない。今回の燃焼試験でこの辺の特性全てを把握するのが目的でやったという所ですが、SRB-AとSRB-3とも既に地上燃焼試験の認定まで終わってフライトも実績がある。そういった点から基本的には影響は無いという書き方を今回しています。

時事通信・説明の中でA系からB系に伝搬するルートが見つかったようなことをおっしゃっていたが、何か新しいものが見つかったのか。
佐藤・今はまだ伝搬するメカニズムが完全には判っていないので、そこを追及している状態です。

時事通信・特に候補になりそうなものが見えているというレベルの話でもないのか。
佐藤・はい。そこがまだよく判っていないというところです。

時事通信・今後、実機を模擬したような試験を行うようなものは何かあるか。
佐藤・今頭に入っていないので後ほど回答致します。

・イプシロンSロケット2段モータ地上燃焼試験調査状況について

JSTサイエンスポータル・FTA分析では見立てとして、爆発の原因について圧力ではなく熱負荷が大きかったのではないかとのことだが、資料9ページに圧力や推力で拝見しましたが、熱のデータは無い。熱のデータはどの程度計測できているのか。次回に拝見できるのか。またそのデータから熱が原因と疑いを強めるような所見は得られているか。
佐藤・熱に関してはモーターケースの温度を計測しているのが代表的にはありまして、聞いている範囲では若干の温度上昇があったというのはありますが、モーターケースの外側に計測のセンサが貼り付けられているものもありまして、大きな変動は無いと聞いています。次回以降にそれも含めて必用であればまとめていきたいと思っています。

JSTサイエンスポータル・2段モータについては、強化型と比べるとサイズと推薬量のアップで、メカニズムの新規性は無いと認識している。今回の事象が起こる前の設計段階で、熱に関してどんな認識だったのか。熱に対する懸念からこういう強化をしようとか、議論なり認識して対応するような事はあったか。
佐藤・今のところ特殊なことがあったとは私は聞いておりません。3段も6月に燃焼試験を実施しましたが、同じような設計手法がされてきておりますので、大きくその議論があったとは聞いてございません。

JSTサイエンスポータル・ニュアンス的な確認だが、原因分析として圧力ではなく熱であろうということでも、圧力が二次的に関与することはあり得るという理解で良いか。熱で部材なり構造なりが劣化して、それによって耐性が脆くなってということはあり得るというのは正しいか。
佐藤・おっしゃった通りです。当然、圧力が立っていないと破壊しないので、熱の影響でモーターケースの強度が落ちて、中の圧力に耐えられなくなって破壊するといった事は十分考えられると思っています。

時事通信・モーターケースが想定以上の熱で炙られたことによって強度が維持出来ず壊れてしまったのが今のシナリオだと思うが、その原因が推進薬の異常燃焼、もしくはインシュレーションの不良ということだが、その上でインシュレーションは断熱材という表現をして良いか。推進薬とモーターケースの間に挟んであるものだと思うが、断熱という役割で言って良いか。
佐藤・まさしくその機能を持ったゴム製の隔壁というか、そういった部材になっています。

時事通信・インシュレーションは強化型で新しいものにしたと思うが、その強化型と同じ部材で変更が無いということか。
佐藤・インシュレーションは基本的に強化型と同じ物を使っています。

時事通信・モーターケースの耐熱温度。想定している温度の基準というものはあるか。それに対してどうこうと今は言えるか。
佐藤・モーターケースそのものはフィラメントワインディングという形で作るプラスチック製の部品ですので、だいたい100度Cくらいと思っていただければいいかなと思っています。その温度に中の燃焼温度の何千度Cを断熱してその温度にしないようにするのがインシュレーションという役割になっています。

時事通信・モーターケースは100度Cの基準を超えるような温度が計測されているのか。
佐藤・今日は温度の詳細を示していないので、その値については次回以降にさせていただければと思います。若干当初よりも上がったというのは聞いています。

時事通信・明確に熱的な過大な負荷がこれだけかかったという定量的なものがある訳ではないが、現象から考えると熱的な負荷がかかったであろうし、それによって破断したと考えられるということか。
佐藤・まだFTAでそういう推測を立てている段階です。またモータの外側の温度の計測は中側とまた違ったりするとか、そういうものもいろいろ見ながら追い込んでいかないといけないかなと思っています。

時事通信・今後の見通しで、イプシロンSの試験機が2024年度下半期と表現されているが、2024年度下半期というのは前から指定されていたのか。2024年度中という言い方だったような気がする。
佐藤・前回の強化型の原因究明を終えて、イプシロンSの設計を進めてきているところだったが、最近の開発進捗をいろいろ車内で審査するという形で確認をしてまいりました。その中で6号機の打ち上げ失敗のタンクの話はそれなりに進んだが、やはり背後要因を踏まえて、より信頼性向上をしていかなければならない、そういったような詳細検討をいろいろしていることを勘案して、スケジュール見直しを少ししていました。その中で開発状況からすると下半期になるだろうということで、つい最近確認をしたという状況です。

時事通信・資料的には今日が初出か。
佐藤・はい。

時事通信・モーターケースの素材をプラスチックという表現をされたが、これはCFRPか。
佐藤・そうです、CFRPです。

読売新聞・モーターケースの断面図(資料10頁)で、推進薬とモーターケースの間の緑色に塗られたものがインシュレーションを表現したもので、その外側の平たい部分と湾曲した部分で水色に塗られたものがモーターケースという理解で良いか。
佐藤・はい。ピンク色が推進薬で、その外側にインシュレーションを貼っていますので、ピンク色に沿って緑色の薄い膜みたいなものがインシュレーションになっていまして、その外側に完全に外側のモーターケースとして水色の部分がありまして、直線が少し突き出した絵になっていると思いますが、モーターケースと機体の構造体を繋ぐためにこういう直線部分も含めて成形しているのがケースの全体になります。

読売新聞・インシュレーションの素材は何か。
佐藤・断熱ゴムになります。

読売新聞・イグナイタで点火した上で推進薬が燃焼し、内部で高温高圧のガスが発生して、そのガスがノズルを介して外に出て行き、それでもって推力が生まれるという理解で良いと思うが、ノズルから出たガスに対する耐熱というのはモーターケースの部材でクリアされているのか。FTAでは外部入熱の過大は「×」になっていて、モーターケースの外側を計測していて問題無いということではあったが、その点を確認させてほしい。
佐藤・ノズルからの流れは後方に噴射されるという形になります。そこから輻射という形でケースの方に温度が伝わる訳だが、その辺の熱等は確認をしていて、問題無いレベルに押さえ込めるということで設計しています。

読売新聞・燃焼異常をもう少し噛み砕いて表現するとどういった事が想定されるのか。
佐藤・完全に例として捉えていただければと思いますが、推進薬に少し亀裂が入ると燃焼面積が増えることになります。燃焼面積が増えると熱も圧力も上がることはあり得ます。そういったような何かしら面積が増えるようなものがあると、一部分の温度が上がっていくのはあり得るのではないかと考えています。

宇宙作家クラブ松浦・固体ロケットモータの燃焼異常は大体の原因は推進剤の成形不良、気泡だとか亀裂、キャスティングの不良、インシュレーション部分の剥離と記憶しています。この検査が大変な問題で、H-IIの開発時にかなり大規模なX線検査装置を入れてます。リポジトリを読むとイプシロンでは低コスト化のために運用機では検査を超音波に限っているという記述がありました。今回は開発用のモータですが具体的にどこまでどんな検査をしていたのか。
佐藤・すぐ応えられないので後ほど回答します。

宇宙作家クラブ松浦・温度が上がっているとの話だが、熱赤外線カメラで撮っていなかったのか。
佐藤・それがあったと私は聞いていないが、間違っていれば後ほど訂正します。

NHK・モーターケースという言葉を使うときには、インシュレーションを含むか含まないか。
佐藤・基本含まないです。

NHK・資料10頁の「モータケースに熱的に過大な負荷がかかり」というのは、インシュレーションではなく外側にあるモーターケースに熱的な過大な負荷がかかったという風に、インシュレーションが破れてその先に熱が伝わったとイメージすれば良いのか。
佐藤・当然中からと外からの両面あると思っています。ただ中の方がモータそのものの燃焼温度ということで数千度ですので、中からの温度がインシュレーションが薄くなってそこから伝わるというのがひとつ考えられるかなと思っています。

NHK・その場合はインシュレーションも耐熱の許容温度が決まって、それを超えるような温度があると薄くなるという事が起きるのか。
佐藤・インシュレーションもずっと保っている訳ではなくて、燃焼ガスに晒されると徐々にアブレーションして削れていくというものになります。それが何ミリ削れても燃焼時間に耐えられるという設計をして厚み等を決めていく訳ですけども、その形を保っているものではなくて削れていくものになっています。

NHK・モーターケースの役割自体としては、圧力を閉じ込める圧力容器というとモーターケースのことを指すのか。
佐藤・はい、圧力容器になります。

NHK・推進薬は固体燃料を指しているという理解で良いか。
佐藤・そうです、固体燃料のことを指しています。

NHK・今後、再実験をやっていきたいという話だったが、場所としては能代で新しい建屋を建てて行う方針で今後検討を進めていくのか。
佐藤・まだどういう事が出来るかの検討が始まったばかりですので今後の検討になるが、能代は真空のスタンドを使ってああいう状態になってしまったということで、そこを復旧するのが第一位ではあるが、隣に大気燃焼が出来るものがもう一つありまして、バックアップ的にそちらを使う事、あるいは種子島にSRB-3を試験したスタンドもあります。こういった所をスケジュールと勘案しながらどうやっていくのかをこれから検討していこうかと思っています。

共同通信・再試験の建屋だか、真空設備を使う場合は、改修するよりは再建が必用なのか。
佐藤・完全に撤去して再構築していかないといけない、そういう状況になっています。

共同通信・再構築には何ヶ月とか年単位と考えた方がいいか。
佐藤・まだなんとも言えないが、そう簡単に造れるものでございませんので、時間は相当かかると考えています。

共同通信・2024年度下半期の話だが、これは6号機の失敗の総括が終わったあとに下半期にしようという話が出たということで、燃焼試験の失敗を受けて下半期という事ではないということか。
佐藤・そうです。一応、燃焼試験が無い状態で開発全体の確認をしたところで、下半期を設定していこうという話をしていた所で今回の失敗が入ったというところです。ですので今後再地燃を含めた計画がそこにどうミートしていくかはこれから検討していくことになる状態です。

共同通信・整理をすると、6号機の失敗の総括を受けて2024年度の下半期にずらしたが、今回の燃焼試験失敗を受けて時期の再検討を考えている、という整理で良いか。
佐藤・そうですね。なるべくキープしたいと思いますけども、どういう影響があるかというのをこれから検討していきたいと思っています。

読売新聞・資料8頁の真空槽内の写真で下段の真ん中のラッパみたいな写真ですが、これにはモーターケースやインシュレータやノズルといった部材は写っているのか。
佐藤・上が試験前の写真でして、下の真ん中の円錐のものが右側の推力を伝える棒にくっついていて、この写真では見えにくいが円錐の先にモータがくっついている。そういう設置の状態になっています。今回爆発後の確認として、このモータの部分は全てバラバラになって四散している状況ですので、ここには繊維等が少し散らばっているという感じでしか残っていなかったという状態です。

読売新聞・下段真ん中の写真は、モーターが取り付けてあった設備の一部ということか。
佐藤・そうです。我々は試験用の治工具と呼んでいる試験用のものです。

読売新聞・資料の写真は提供していただけるか。
佐藤・別途、広報からという事にさせてください。

写真:真空槽内(爆発後)FWDアダプタ

写真:真空槽内(爆発後)主推力受け治具

写真:真空槽(爆発後)

写真:真空槽内(燃焼前)

読売新聞・インシュレータだが役割としてはモーターケースを熱から守るための断熱材ということか。
佐藤・そうです。

読売新聞・H3との共通点だが、H3の補助ロケットにはイプシロンSの燃料であるとかインシュレータの材料に共通部分があるということか。
佐藤・H3のSRB-3という補助ブースターがイプシロンの1段と共通になっています。イプシロンではコアステージとして使う関係もあって、SRB-3のノズルを振って制御が出来るような改修をしてますが、モータそのものは一緒です。今回のモータとは組成で材料が同じところがあります。

読売新聞・H3もイプシロンの強化型もイプシロンSも共通した課題として、昔からある古いシステムを持ってきて新しいシステムと融合させている所に問題が共通しているかなと思うが、H3もイプシロンSも機材に関係無く共通した課題を解決するために何か考えているか。
佐藤・イプシロン6号機の背後要因として、フライト実績品を持ってきたこと、その環境条件の違いとか、中の設計を十分理解していないということも背後要因としてあるのではないかとして出しました。今、そういう点をイプシロンSあるいはH3等においても問題が無いかというのを水平展開として確認をしているところです。宇宙機の開発の中で、新規に開発したもの以外、当然部品も含めていろいろ使っていくものはございますので、他から持ってきたものが駄目ということは無いが、仕組みを含めて設計の内容をよく理解した上で使っていくというところは必用だと思っています。今後水平展開の中で信頼性向上としてその辺をしっかり把握する活動を今進めているところでございます。

フリーランス秋山・強化型イプシロンに遡って過去の経緯のことを伺いたいが、過去の資料の中にイプシロン2号機で強化型になって、2段のM-35モータになって、それによって推進薬の形状が内孔貫通型に変わったという資料を拝見しまして、内孔は星形と言って良いかわからないが細長い穴だと思うが、そういった形で2段の推進薬が成型されているのが、イプシロンの2号機から5号機まででフライト実績が4回に留まる比較的新しいものなのか、それとも別のところで実績を積んだものなのかという点を伺いたい。
佐藤・資料10頁では機微情報ということでぼやかしています。モータの推力特性等をロケットのシステムに合わせて最適化するが、その中で最適な形状、燃焼面積をコントロールする形状を決めます。そこで少し形が決まってくる訳ですが、それはモーター毎に当然形が変わりまして、基本的な固体の設計としては同じというところですので、その辺に技術的に飛躍は無いと思っています。

フリーランス秋山・強化型で内孔貫通型が採用されて、それがイプシロンで言うと2、3、4、5号機までがフライト実績のある例だという理解で良いか。
佐藤・確かH-IIのSRBも内孔貫通型で、固体モータとしてはそれなりに実績あると思っています。SRB-Aもそうです。

フリーランス秋山・強化型イプシロンの2段でその形状が採用されたということか。
佐藤・はい。

ニッポン放送・スケジュール関連だが、能代の建屋はそう簡単に再建できないという事ではありましたが、バックアップの場所を使う事で、ある程度のラグを吸収することは出来るということか。
佐藤・設備の方の検討を始めたばかりですのではっきりした事は言えないですが、2段モータそのものもこれから原因を調査して、設計の見直しがあればした上で製造して燃焼試験と、それなりに時間がかかりますので、その範囲内で他のスタンドで少し設備を付加すれば出来るという結果が出ればそちらの方を使っていくという事になるかなと思っています。

ニッポン放送・2段モータの再試験はどちらで行うか。
佐藤・その辺はまだ決めておりません。

ニッポン放送・能代か種子島でしか出来ないということか。
佐藤・国内ではそこの2つくらいしか使えるところが無いかなと考えています。

共同通信・(今回の)モーターケースそのものは耐熱性も含めて瑕疵(異常)が無いことが確認できているという理解で良いか。
佐藤・その辺の製造検査データの細かいところを見ていますので、今日そこを断定した言い方は避けたいと思っています。

共同通信・資料12頁(FTA)で、設計不良と製造不良と組立不良に×がついているが、もうちょっと見たいということか。
佐藤・基本は×をつけているので問題無いと思っているが、最終的には全体を見た上で回答したいと思います。

共同通信・今の言い方だとそうなってしまう。
佐藤・言い方が悪かったです。モーターケースそのものはここで×にしておりますので、製造検査での基本的な問題は無いと今は判断しております。

共同通信・燃料か断熱材に異常があったときに、燃料に異常があったとすると断熱材が耐えられる数千度よりもっと高い温度になっていた可能性があるということか。
佐藤・燃焼温度そのものは変わらないが、局所的に長時間炙られたりとか、そうすると局所的にインシュレーションが減ってしまうのはひとつ考えられるかなと思います。

共同通信・断熱材に異常があった場合は、数千度に至る前に局所的に断熱できないところがあって数百度くらいでモーターケースに熱を伝えてしまい爆発に至る事もあり得るのか。
佐藤・考えにくいが、基本的にインシュレーションが火炎に晒されると削れていく、そこのスピードと伝わる熱の関係で決まるのかなと思っています。

フリーランス大塚・打ち上げてからの失敗の場合は現物が無くて原因究明が大変だが、今回は物があるので何か回収できるものがあればだいぶ違うという気がする。モーターケースの破片とかノズルが吹っ飛んだようだが、その辺の回収はどれくらいの量が出ているか。
佐藤・具体的な量は言えないが、建屋外に散ったモーターケースの素材等は回収できるものは回収して、それがどこのパーツかという辺りを工場の方で確認している状況です。ノズルは海中に沈んでいると思われまして、もし今後の調査でそこがどうしても必用となれば回収も考えなければならないかなと思います。今は地上に散った部分の確認をしているという状況です。

フリーランス大塚・もし必用なら今後ということはノズルとかは無くても解析には問題無いということか。
佐藤・そこは捨てたわけでは無いが、今具体的にそこの回収計画を立てているという状態ではございません。ノズルの脱落のところはFTAでも設計の不良が若干△として残していることもあって、ノズルそのものという所はあまり無いかなと考えているところです。

フリーランス大塚・インシュレータはアブレータとして減っていくとのことだが、正確でなくてもかまわないので数センチレベルのものか十数センチなのか、イメージ的な厚さは何か伝えてもらえることは出来るか。
佐藤・数字を言えるかどうか即答できないので、もし次回言えるようであれば示したいと思います。

読売新聞・燃焼試験の前に取り組んでいた耐圧試験などについて、圧力を計測してモータが耐えられることを確認したとのことだが、この際の耐圧試験は燃焼は伴わないという理解で良いか。つまりインシュレータ等の性能が確かなのかを実機に近い形で燃焼させて確認したのは今回の能代が2段モータとしては初めての試験という理解で間違いないか。
佐藤・まず水で耐圧を確認して、ケース等の健全性を確認するというのをやった圧力が8MPaだったり10MPaです。今回初めてその耐えられるというモータで燃焼試験をしたというものでございます。

南日本新聞・イプシロンSの打ち上げ時期だか、これは原因調査の状況によって2024年度の下半期から爆発の影響で更に遅れる可能性があるという理解で良いか。
佐藤・今そこを影響あるかどうかを並行して検討を進めているところになります。

南日本新聞・影響があれば設計を見直すとか再度の燃焼試験とかの関係でさらに延びるのか。
佐藤・そういうケースもありえるということです。

JSTサイエンスポータル・原因のことではなく知識として、試験の概要で供試体:短ノズル型(大気圧下で試験を行うため、ノズル内部流れの剥離防止として短ノズルを使用)とあるが、この意味を噛み砕いて教えて欲しい。
佐藤・資料4頁に本来のモータの姿がございます。ノズルが大きく広がっています。2段モータは上空の真空中で作動するということで、ノズルから出たガスの圧力をノズルの出口面で真空に近い所まで持っていくことで最大の性能を出すようになっています。これが1段エンジンですと大気中のところで使いますので、それに合わせたノズル出口、1気圧ある所で最適になるようにノズルま形状を設計しているというものになります。今回2段モータの燃焼試験を大気中で行っておりますので、真空中で設計したノズルで燃焼試験をしますと、ノズルが広がっていくことで膨張して圧力を下げて真空まで持っていくが、その途中で1気圧を超えてしまうと、ノズルに沿った形で広がらなくて真っ直ぐ出るようなイメージになります。そこが、流れが剥離するという意味で剥離という言葉を使っています。剥離をしないポイントにノズルを切って大気中でも燃焼試験するようにしたのが今回の短ノズルでして、資料5頁のような非常に短いノズルでの試験をする形態になっています。

JSTサイエンスポータル・出てくるガスがノズルから剥がれる感じか。
佐藤・中で流れが沿わないで剥がれてしまう。

JSTサイエンスポータル・真空燃焼試験棟は築何年とか何年に出来たとか今判るか。結構古い物なのか。
佐藤・相当古く、40年ものと聞いていますが、具体的に何年とは今記憶に無いです。

朝日新聞・真空燃焼試験棟に関して、2段モータは真空中(での作動)なので、真空燃焼試験棟だしそのまま真空の環境でやった方がいいのではないかと思うが、何故大気圧で行うのか。
佐藤・間違っていたら訂正しますが、もう少し小型のモータ用に作られていた試験設備だと思っていまして、今回の2段の大きさはそのまま真空槽に入れてやるのはなかなか出来ないということで、建屋とか計測装置とかは使わせてもらって、噴射面は大気中にしたということになります。

読売新聞・今回の圧力推力データだが、燃焼圧力については爆発の直前で徐々に下がって直前で大きく変動している。基本的に降下しているということだが、推力の方は校正範囲を超過して上がっている。このような現象は何故起こりうるのか。このデータの動き方に言える事はあるものか。
佐藤・この辺をまさしくいろいろ考察をしているところですが、モーターケースの一部の強度が下がってそこから燃焼ガスが漏れ出すような形になると圧力が下がるが、推力はノズルがちょっと大きくなったイメージになるので推力が上がるというのは考えられると、メカニズムとしてはひとつ考えています。

・後ほど回答とした分について
佐藤・モータの検査について何をやっていたかの質問について、今ここをいろいろメーカを含めて確認をしていますので、その辺のまとめは次回以降にさせていただきます。
佐藤・H3で今後何かの試験を計画しているかとの質問は、1・2段分離のような大規模な試験は無いが、例えばシナリオで言うと18番のエキサイタのトランジスタのシナリオといったところ、これに付随した電気的負荷をかけるような試験、こういうことは少しやっていく予定です。あと固有の2番について、片系に伝搬するメカニズムといったところの検証は少し計画している。その他まだオンゴーイングですので必要に応じて、細かい試験も含めて追加をしていく予定になっています。

・H3ロケットとイプシロンSロケットの両方での再質疑応答。
宇宙作家クラブ柴田・H3でエキサイタの電源ONから火花が飛んで定格に達するまでの時間はどれくらいか。
佐藤・定格というものとはずれているかもしれないが、電源ONをしてから大体4~10msで最初のスパークが発生する設計になっています。その後真空状態でスパークが飛びますので、その後水素酸素を流し込んで着火に至りますので、そこのバルブに大体50msくらい時間がかかる。そこで着火する。(今回は)着火はしていない。

宇宙作家クラブ柴田・保護回路はあるのか、それの故障によって過電流は検出されないか。
佐藤・あまり保護回路のとこは聞いていないが、エキサイタの中には積極的な保護回路は無いという設計になっているようです。

写真:JAXA能代ロケット実験場 真空燃焼試験棟(燃焼前)

写真:真空燃焼試験棟(爆発後)

以上です。