SLIM搭載ローバLEV-1通信機

2023年8月19~20日に東京ビッグサイトで開催中の「ハムフェア2023」のJAMSATブースにて、小型月着陸実証機SLIM搭載小型プローブ・LEV-1の通信機の地上試験モデルが展示中です。

LEV-1搭載通信機の地上試験モデル
LEV-1搭載通信機の地上試験モデル

LEV-1は地上との通信にUHF帯(送受信)とS帯(送信のみ)を用います。衛星との通信は業務無線が一般的で一陸技の資格が必要ですが、LEV-1の通信機とその前身とも呼べるOMOTENASHI搭載通信機では、アウトリーチも兼ねてUHFはアマチュア無線の430MHzが採用され、その為のアマチュア無線クラブがJAXA内に立ち上げられ、通信には第一級アマチュア無線技師の資格を持った方が携わります。

通信機はUHF(430MHz)帯送信、UHF(430MHz)帯受信機、およびS(2200MHz)帯送信の3枚のボード、および容積を抑える為にADC以降の処理を行う共通ボードで構成され、通信は送受信を切り替えて行われます。またLEV-1は変形型月面ロボットLEV-2(SORA-Q)の地上との中継器も兼ねていて、LEV-2との通信にはBluetoothが用いられます。

1/5スケールのLEV-1と通信機(左側)
1/5スケールのLEV-1(中央)と通信機(左側)

LEV-1 の通信機能は地上でも確認済みですが、(SLIMの健全性確認後)地球から月へ向かう途中に行われる通信で初めて総務省から無線局として正式に認められます。

SLIMから分離後のLEV-1の活動時間は30分程度と見られ、この制限は主に太陽光による機体温度上昇によるものです。その間にLEV-1はアクチュエータで巻き上げたバネによるホッピング移動、ホイールによる姿勢変更を行いながら地球との通信を確立します。

LEV-1は月到着後に月面移動、独立した通信系による地球との直接通信、着陸中や着陸後のSLIMの状況観測など野心的な試みが盛り沢山ですが、月へ向かう途中や月周回中、UHF帯を用いてモールス符号で送られるデータのアマチュアによる受信報告も非常に楽しみです。