第50回宇宙開発利用部会 調査・安全小委員会後のフォローアップブリーフィング

 2023年8月23日に開催された第50回宇宙開発利用部会 調査・安全小委員会の後に行われた報道向けフォローアップブリーフィング(質疑応答)です。尚、議題は「H3ロケット試験機1号機打上げ失敗原因調査状況」です。
(※一部敬称を省略させていただきます。また回線等の関係で一部聞き取れない部分があり、省略させていただきました)

・質疑応答
JSTサイエンスポータル・今日の議事で、シナリオを3つまでに絞ったが、これ以上深追いするのは得策では無いというコメントがあった。現実的にこれ以上原因を絞るのではなく、全て対策を講じて前に進むことが合理的という考えと思うが、そこのところの見解を整理してお聞かせ願いたい。
岡田・大体ご理解の通りです。ロケットの原因究明、これまで私も何度か参加してきましたけども、やはりフライトデータを頼りにして進めてきているところがあります。H-IIロケット8号機のように現物を目の当たりにする場合もあるのですが、あとは手元にあるデータを全てひっくり返してそれらを結びつけて再現させてということを繰り返します。その中でどうしても頭の先から尻尾まで材料が調わないことがあり得ます。こういう場合にどうするかと言うと、そこに網をかけて、それが合理的に詰められた網であって、それを出来るだけ小さくした中に必ず魚がいるという状態に追い込むことが重要だと思っています。そこに魚が居ると確信できたので、今日臨ませていただきました。

時事通信・これで原因究明という作業は完了したと言って良いか、ほぼ完了と言う方がいいのか。今後の実証試験で対策の有効性を確認して、早期の打上げ再開を目指す方針なのか。
岡田・こういった原因究明の体系だった活動というか、そういう流れの中では、一旦ここでまとめに入らせていただきたいと思います。これを起点として対策を講じ、そして背後要因を分析して水平展開を講じて、次の打上げに臨ませていただくという流れの中で、本当に何が起こったかというのをもう少し絞り込んでいく作業というのは可能な限り続けたいと思っています。ただそれを全てはっきりするまで物事を進めないというのは得策ではないし合理的でも無いと思いますので、ここはそういう進め方をするという判断をJAXAとしてして今日、委員会にご報告した次第です。

時事通信・今後、第2段の実機を可能な限り模擬した対策の有効性を調べる試験をされると思うが、スケジュール感としてはどれくらいの時期を考えているか。
岡田・まだ仕立てを具体的にどうするか。例えば大きな話として、どの真空チャンパを使うか、今候補が3つ程あるがどれを使うか、また使うチャンパによって出来る事が変わってくるので、そこのトレードオフの比較検討をします。今はその結論が出る前の段階なので、時期もそれによって左右されると思っています。すぐ先という事ではなくてこれから準備に入る、真空チャンパを選んだ上で準備に入るのが大体の流れです。

時事通信・原因として可能性のある3つのシナリオの中で、H3固有のPSC2内部の過電流で、ここで定電圧ダイオードが悪さをしているのではないかということで取り除くということだが、そもそもこの定電圧ダイオードの役割としては、想定外の高電圧がPSC2内に入り、下流の機器を壊してしまうことを防ぐために置いていたが、今回の事象に関してはA系からB系に伝搬する原因となってしまったので取り去るという理解で良いか。
岡田・大体ご理解の通りです。定電圧ダイオードの役割は安全弁のような役割で、下流に大電圧が入らないようにする。この仕組みそのものはPSC2の中に定電圧ダイオードがありますけども、PSC2の中には過電圧の遮断機能があります。ですから過電圧の遮断機能があった上で冗長構成するような形で定電圧ダイオードが別途あるということです。今回の関係で言いますと、その下流で守るべきニューマティックパッケージやエキサイタは、かなり高い電圧でも持つという事が判ったので、それよりも先に壊れてしまう定電圧ダイオードは、極めて大電圧がかかることまで想定すると不要なものであると判断した次第です。

時事通信・先に壊れて足を引っ張ってしまうということか。
岡田・そうです。別のB系に至るような道筋が出来てしまうため、その道筋を断ち切るためにこの定電圧ダイオードを削除することにしました。

産経新聞・JAXAによる原因究明作業は「完了した」のか「ほぼ完了した」のどちらを使えば良いか。
岡田・完了という言葉に結びつけるとなかなか難しい。このまとめに書いてある通り、対策を講じる事ができるまで追い込めているところが一番大事な事だと思う。これ以上原因究明作業を全くやらないという事ではなくて、可能なものであれば特定したい思いがあります。始まる前にも考えたが完了という言葉と結びつけるのが難しく、何もしないという言い方にならないようにしたいと思う。一区切りつけたという思いでしょうか。明確に区切りがついたのは事実です。それは次のステップに進めると考えているという意味では、非常に大きな区切りついていると思います。大きな句点は打てた。

産経新聞・一区切りの段階で今後の小委員会はどういう風に動いていくのか。
竹上・資料2ページの、シナリオの最終評価をやり、原因究明結果による対策の決定したというのが今回ところかなと思います。小委員会につきましては次回は9月に開催を予定しています。そこでは背後要因分析、あるいは水平展開等についてJAXAから報告を受けて議論をしていただくという形で、そこで1度で議論ができるとか、もう少しかかるとか、いずれにしても今回対策のところまで確認いただいたので、報告書としてまとめる所までは近づいてきているかなという印象を持っております。

産経新聞・最終報告を行ったという事で良いか。
竹上・シナリオの評価の最終報告です。

共同通信・確認だがシナリオが3つとあるが、前々回辺りでH-IIAと共通とH3固有で9つとあったが、7つに絞り込んで、更にそれをグルーピングすると3つという理解で良いか。
岡田・その通りです。

共同通信・(資料の)まとめのページにH3ロケットの信頼性を向上させるための設計変更について検討を進めるとあるが、ここで言う設計変更はダイオード削除するとか絶縁対策を施すといったことを指すのか、あるいはそれも含めて全体をいちど考え直そうというニュアンスなのか。
岡田・どちらかと言うと後者に近いです。前者は資料43ページの「エキサイタおよびPSC2に対して対策を行うこと」です。後者は根本的にどう直すかも最終的に視野に入るかもしれないが、まずは背後要因分析を鋭意進めていますので、そこから導かれた、やはりこういったところというのはH3ロケットの全体に対してもう少し横並びで見た方がいいというものが仮に出てくれば、そこに対して手を打っていく。その手の打ち方も、大急ぎでやった方がいいものと、長い目で見た時にやった方がいいものと分かれて来ると思う。それらの全体を通して(資料の)最後の行で説明したつもりです。

共同通信同・そうなると時間がかかる取り組みと思うが、2号機は今年度後半と記憶しているが、延期も含めて検討する必要が出てくるのか。
岡田・今段階でそういうものが目の前にあるという意識は無いです。信頼性向上というのは相対的なものですので、絶対クリアしないといけない部分と、もっと高めるべきものとの仕分けをしながら、次の号機までにどうしても手を打った方がいいものが出てくればそれは打った上で準備を進めていくという事になると思います。

共同通信・2号機については現状のスケジュール感を維持するという理解で良いか。
岡田・まだスケジュールとして無い。まずは原因究明、シナリオとしての最終評価を終えて、それに応じた対策を講じられましたので、まずはそこをやります。それと並行して信頼性向上に寄与するようなものを識別しながら段階的にでもそこに対応していくという考えになると思います。もちろんその間にシステム検証も含まれてきますので、そういった事の全体を組み立てられるような状況に今日なったという風に考えています。

フリーランス秋山・資料26ページ辺りで、検査強化のところの詳細についての質問です。共通シナリオの15ですが、X線CT検査を追加して、「コイルとフィルタケースの接触がないことを確認する」といった対策の説明をしていただいたが、5月公開の資料ですと、コイルとフィルタケースの隙間が0.26mmというオーダーかと思うが、こういう対策を追加するにあたって大幅な検査機器の新たな投入や、検査が可能な人や施設の手当てとか、そういった大きな事が必要になるのか、あるいはこれまでの検査の基準の見直しといったものなのか、その辺りの検査強化というのはどういった事になるのかを詳しく教えて欲しい。
岡田・検査強化の代表的な例は(資料)32ページにあるようなX線CTの検査です。これに対して新しい機器を導入するかというとそれはNOでして、現在我々のロケットを製造する工場や周辺にある検査装置を使って出来るかどうか検討して出来るという答えが得られた。装置が有る無いという話と、検出する精度が要求に見合ったような精度で検出できるかといったところを総合的に検討した結果として、既に結論としては検査強化というのが有効であるというものに対して5月に一連をお示し致しました。この考えは今でも変わっておらず、各シナリオそれぞれに対して検査なり工程の中で絶縁対策をしていくというものです。

フリーランス秋山・大きな体制の強化が必要になって、H3やH-IIAの製造の時間が長くなる懸念はあるか。
岡田・そこまでのインパクトはありません。ただやはり効率的に製造していくというのは、私はH3の担当なのでH3で申し上げると、やはり流れにのって年間の機数を作っていくという事は重要なので、検査工程あるいは絶縁強化の工程が、うまくそこにはまっていくようにする必要があると思います。そういうチューニングをしながらやっていきたいと思っています。

NHK・H3固有シナリオの中で、A系が故障した際にB系に伝播するというのは、どういうメカニズムなのか。
岡田・試験で判った事が資料37ページにありまして、試験でA系の定電圧ダイオードを無理矢理短絡させると、A系からB系にリターンラインというA系とB系が通じるところがありますので、そこに大きな電流が流れるという現象が確認できました。この流れができるとリターンライン(RTN)が揺れる。これが揺れることによってオペアンプという増幅装置の出力自体が変動する結果になります。このオペアンプの出力というのが降圧回路の動作のためのデータになります。その結果としてB系の降圧回路の動作が不安定になって、そのために事象に至るという事です。

NHK・今年度後半の打上げを目指している2号機の予定は変わらないということか。
岡田・今年度後半を目指すという話はありましたか。私は最近皆さんと話をする機会が無く、あまり承知していないのですが。
佐藤・今日、対策のところを固めることが出来ましたので、我々としては早期のリターン・トゥ・フライトを目指していくことになります。実際の打上げスケジュールはこれから色々関係機関を含めて調整とかいろいろ入ってきますので、今はなるべく早くという所かなと考えています。

読売新聞・次回の会合ではJAXAからどんな報告をされる予定なのか。次回の会合では今日示された対策が妥当であるかを議論してもらうのか。
岡田・資料43ページに今後の進め方とあります。次回に関しての主題は、原因究明結果から背後要因分析に進みつつあるが、その結果を方針的に示したいと思います。こういった水平展開を行う予定ですという事を報告させていたたく予定でおります。今、そこに向けて鋭意活動しています。あわせて信頼性向上のための設計変更もこの中で見出されればそれについてもあわせて報告したいと思っています。プラスアルファとしてこのタイミングなのでということで、何か進捗があって話をするかどうか、ここはまだ考えが及んでいませんが、主題はあくまで(資料の)最後の2行かなと思っています。
竹上・事務局から補足しますと、対策の妥当性という話がありました。もちろんシステムレベルの検証試験によって最終的な対策の妥当性をこれから確認していくが、そうしたことをやる前提に置いた上で、今日JAXAから提示された対策について妥当性が委員会の方で認められたということです。

宇宙作家クラブ松浦・H3ロケットの信頼性を向上させるための設計変更について検討を進めるとあるが、H-IIAの時も十数号機まではかなりいろんな所を手直ししていたと記憶しているが、そういう流れと同じと考えて良いか。
岡田・同じ部分と違う部分はあると思います。おっしゃられる通りH-IIロケット、H-IIAロケット信頼性向上プログラム的に進めてきて、特に最初の方の号機というのは打上げで新たに判ったことについて手直しをするであるとか、例えば地上においてデータを追加で取得して技術データをためていくとか、フライトに関しても追加で技術テレメトリデータをとるような活動をしながらロケットの熟成を図ってきたというのが今おっしゃられたのがそういう事だと思います。今回に関して言いますと、H3ロケットの1号機が失敗してしまいその原因究明の、共通する部分も勿論あるが、それに加えて原因究明の中から見えてきた事というのを中心に、そういう意味で書かせてもらっています。

宇宙作家クラブ松浦・今回の事故からのレッスンズ・ラーンドを受けての設計変更という意味か。
岡田・主にはですが、あとは1号機のフライトの結果であるとか、フライトをさせるまでの過程であるとか、そういったところも併せてではあると思いますが、主には1号機の分析を起点にしています。

宇宙作家クラブ松浦・今回は2段が原因での失敗で、その2段の設計というのがH3特有で新しく作った部分と、H-IIAのものを持ってきた部分と、ある意味接合の部分で起きた印象が強いが、これは岡田さんの個人的な感触でお聞きしたいのですが、初期検討の段階では2段も全部作り直す案があった。もし全部作り直していた場合と、H-IIAのものと接合して作った場合とで何か違いはあったか。
岡田・個人的というよりは事実に基づいて話をします。今回の3つのシナリオの整理からしますと、我々も最初の組み合わせのところで何か起きた可能性があるのではないかとかなり深掘りしていったが、結果からはそこは見えてこないです。仮に2段のエンジンもブランニューで同時に開発していたらと考えましても、結果はあまり変わらないというか、だから結果がどう変わるというイメージは無いです。ただエンジンを2基開発するというのは、これは大変なことだったなと、振り返って思う。LE-5B-3を選んで良かったと個人的に思っています。

NVS・回路図でリターンという言葉が出たが、一般的にグランドというかマイナスの接地という意味で、宇宙機では地面には接していないのでリターンという言い方をしているのか、それとも1段とかグランドにする機体があるものにはリターンとグランドがあるのか。
岡田・リターンはグランドというか、乾電池で言うとプラスとマイナスのマイナスの事です。グランドとは意味が違うかな。グランドはある所を接地させる事で、リターンというのはそうではなくてマイナス側のことを言います。

NVS・1段だとグランドという概念はあるのか。
岡田・はい。同じくグランドというのは機体の中に概念はあります。

NVS・追加の検査をする話の中で、今後製造するH3の全てが部品のX線検査をしてから採用する形になるのか、それともある程度品質が担保出来るようになったらその検査は省略するなどの方向はあるのか。
岡田・先の先まで見通している訳ではないので何とも言えない部分もあるが、当面は少なくとも原因として可能性のあるとした部分(短絡・地絡に至ったエキサイタ内部の電気部品)については、H3として対応をとっていく必要があると思います。

南日本新聞・資料39ページについて、A系のダイオードの短絡故障を起点として~対策を考えていくということですが、ダイオードが故障する前の降圧回路の一部の部品に故障が起きる事を前提に対策を考えていくという理解で良いか。
岡田・そうです。まず話の本当の出発点は降圧回路の一部の部品の故障、3つに部品を絞っていますが、そこが起点にはなると思います。ただこういった原因究明の中で本当の起点が複数有るという中で途中から話をまとめていくというのは手法としてはありまして、その起点としてA系の定電圧ダイオードの短絡故障を我々としてはあらためての起点とした。ここから先に生ずる結論に関しては同じなので、いちばん最初のところがどうあろうとも防げるものは防げるという整理をしています。

南日本新聞・資料33ページで「地上点検時、SEIG(エキサイタ電源ON)時に、エキサイタ内部の電気的発振動作」とあるが、電気的発振動作というのはどういったものか。
岡田・私も電気の専門家ではないが、トランスの1次側から2次側にエネルギーをどんどん渡していく。2次側のエネルギーをたっぷり貯めたところで、スパーク側の方に電流を流す事でスパークする訳です。1次側から2次側にエネルギーを貯めて、ここで電圧もどんどん上がっていくのですが、その時にポンプのように電流を流したり止めたり、電圧をかけたり止めたりをしながら、繰り返しをしながら1次側から2次側にエネルギーを伝えていきます。その繰り返す動作の事を電気的発振と呼んでいます。
 尚、地上とおっしゃられたが、地上だけではなく飛んでいる時も含めてエキサイタがスパークをさせるための動作として通常電気的発振というものをしながらスパークをしていくというものです。

南日本新聞・PSC2の説明はエンジンを制御する電気系という言い方で良いか。
岡田・エンジンも含めて推進系を制御するコントローラです。用語集にありますが、V-CON2がPSC2の頭に居て、V-CON2からの指示でPSC2が制御する対象が、エンジン制御もこの中に入っているが、タンクの圧力であるとか、姿勢制御のガスジェット装置のON/OFFの制御も併せていたします。ですから「エンジンなど」と言っていただのがいいかもしれません。

時事通信・資料33ページの確認ですが、これは地上点検等でもエキサイタを動かす時には、毎回最大定格以上の電圧が印加されるような事になってしまっていて、もしかしたらたまたま運悪くどこかの時点で降伏するようになってしまって、それがフライトの時だったというのがこのシナリオか。
岡田・その通りです。ですので地上点検、それとSEIGはフライト時で、そういった事も含めて常にエキサイタの中では電気的発振が起きながらスパークしているという事です。

時事通信・最大定格以上の電圧が印加されるように部品を使ってしまっていたのは、気付かなかったのか、それとも他の事も考えて理由があったのか。
岡田・どちらかと言うと前者だと思います。ずっと使い続けている設計でありシステムです。最初の設計の時にこういったものが計測出来る計測装置があったのかという事も含めて、そういう高周波の計測が出来ないような状態でも設計できていた、それを信頼性を枯れさせながら使い続けているのが実態だと思います。

時事通信・実態として再現しようとしてもなかなか壊れない丈夫な物であったから表面化しなかったという事か。
岡田・そうですね。枯れさせるというのは重要な事でありまして、ロケットではなかなか打上げの機数が自動車とは桁違いに少ない中で、こういった技術を大事に使い続けていく、しかも品質を確保しながらやっていくのは大事な事で、これまで結果として何も起きていなかったので、あらためてこれを例えばリバースエンジニアリングしてここがどうなっているのか、そういう事まではやっていなかったということだと思います。

時事通信・資料43ページの背後要因分析だが、具体例としてはどんな物をイメージすれば良いか。例えば定電圧ダイオードのように良かれと思ってつけたものが逆に悪さをしたが、それはどうして判断してスルーしてしまったのか、といったものを見たりするのか。具体的にイメージとしてあるか。
岡田・例とするとそちらに意識が行ってしまうので挙げにくいが、アプローチとしては(資料)43ページの1~3の大きな3つの柱が有る。柱ごとにそれぞれ事情が違うので労力は3倍かかってしまうが、それぞれについて同じように分析し始めています。おっしゃられた話は3の中の話なので、一部そういう話になってくるかもしれません。ただまだプロジェクトのやり方でかなり客観性を持った答えを導かないといけないと思うので、我々の主観があまり入りすぎるとねじ曲がってしまう部分もあるので、色々な目で見てもらう事になると思います。その中でどうなっていくかはまだ推測できないところもあります。

時事通信・背後要因の概念としては、こういうシステムを考えたのは何故かとか、こういった物を見つける事が出来なかったのは何故かとか、そういったものを分析するという事でいいのか。
岡田・イプシロンの6号機で背後要因分析があったと思います。恐らくはああいうスタイルで進めていく事になると思います。勿論事情が違うので違う答えになっていくと思います。あのようなイメージを我々も考えてはいます。

鹿児島テレビ・定電圧ダイオードでA系でトラブルが発生したときに、それを回避するプログラムという捉え方をしているが、それで良いのか。定電圧ダイオードという部品があったために回避するためのプログラムのB系にそれが伝搬してしまったという捉え方で良いか。
岡田・少なくともPCS2の中のA系B系は同時に動いている。A系で異常が生じると、A系自身が自分で動きを止めるという考え方です。そういう中でA系はその中で終わってしまえばいいものを、今回のシナリオに関してはA系で起きた事象がある経路を辿って、レアなケースだがB系に伝わるような現象が確認できたということです。そのためB系の動作まで影響を及ぼすというのがこのシナリオです。

鹿児島テレビ・もし定電圧ダイオードが無ければB系が生きて正常に作動したかもしれないのか。
岡田・そうですね。このシナリオ上で言いますと、この定電圧ダイオードが短絡したことによってB系にどっと電流が流れるのは防げたと考えています。

以上です。